「ゆずり車線」って何だ? 登坂車線と違うの? どう使えばいいかNEXCOに聞いた
上り坂区間の左側でよく見かけるのが「登坂車線」ですが、近年、同様に左側に「ゆずり車線」なるものも増えてきました。登坂車線と何が違い、どう走ればよいのでしょうか。
坂じゃなければ「ゆずり車線」?
一般的に「登坂車線」といえば、長い上り坂区間の左側にありますが、高速道路では近年、同様の車線で「ゆずり車線」というものも、比較的よく見かけるようになりました。
関越道の「ゆずり車線」(ドラレコ画像)。
たとえば渋滞対策の一環として付加車線の整備が進められてきた関越道の埼玉県内区間。片側3車線を4車線にするものですが、増えた車線の多くが「ゆずり車線」とされています。
「ゆずり車線」と「登坂車線」、何が違うのでしょうか。NEXCO東日本に聞きました。
――「ゆずり車線」と「登坂車線」は、どのような違いがあるのでしょうか?
想定している走行車両の違いがあります。「ゆずり車線」は、交通集中時の際の渋滞緩和を目的として、渋滞ポイントにおいて速度が低下しやすいクルマ、あるいは低速で走行したい車両が、後方車両の交通流を乱さないように通行をゆずることが可能なように設置された車線です。
「登坂車線」は、上り勾配が急な箇所において、速度が著しく低下する車両を他の車両から分離して通行させることを目的とする車線です。
車両性能上は高速走行に問題はないものの、後続に通行を譲る場合を想定したものが「ゆずり車線」、車重などの関係で上り勾配で速度が上がらない場合を想定したものが「登坂車線」になります。
――「ゆずり車線」を走行する際、他の車線とのルールの違いはあるのでしょうか。
これは登坂車線も同様ですが、ゆずり車線を使った追越し行為は、道路交通法第28条の違反に問われることもあります。
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道路交通法の第28条は、追越しの際に追い越すクルマの「右側を通行しなければならない」ことを定めたもの。登坂車線を活用した“左からの追越し”行為は違反なだけでなく危険とされていますが、ゆずり車線でも同様のようです。
渋滞対策としての「ゆずり車線」 その真の目的
クルマの性能が上がった現在、各地の登坂車線はあまり活用されていない印象も受けます。だからこそ、空いている登坂車線を使った左からの追越し行為が横行しているともいえます。
一方のゆずり車線は、もともと走行性能を考慮したものではありません。速度が出せないからではなく、自発的に第一走行車線をゆっくり走りたい人も、ゆずり車線へ移るべきなのでしょうか。
「後続車への交通の影響を低減する渋滞緩和を目的として設置していることから、ゆっくりと走行したい車両はゆずり車線のご利用をお願いします」
「当社では、ゆずり車線の長さを示す標識を数枚設置するなどし、渋滞時のゆずり車線の利用を促進しているほか、渋滞の予防・緩和のため、ゆずり車線の設置箇所で速度が低下した場合には、ゆずり車線をご利用いただくようご案内もしており、道路交通法をはじめとする各種交通法規に従って、お客さまがゆずり車線をご利用いただくことを推奨しています」(NEXCO東日本)
「登坂車線」がよく見られる中央道。長い上り坂に設置されている(ドラレコ画像)。
関越道のゆずり車線の多くは、緩い下り坂から緩い上り坂へ変化する地点から始まります。こうした区間では気づかないうちに速度が低下するとともに、混雑しだすと「少しでも早く走りたい」と考える人が右車線(追越車線)側に集中し、不用意な車線変更やブレーキの連鎖が発生、大きな渋滞につながります。
ここで、速度が低下したクルマがゆずり車線へ移ることで、走行車線の混雑を軽減し、追越車線への偏りも減少することで、全体の流れがスムーズになり渋滞緩和が期待できるとのこと。言い換えれば、渋滞の要因になる追越車線側への集中を、左側から抑え込もうという発想でしょう。
混みだして速度が低下してきたな、と思ったらゆずり車線へ――これで少しでも渋滞緩和に貢献できるのかもしれません。