「まずは概略ルートだけでも決めて」高い壁は山脈だけでなく…

今は何が進んでいる?


国道1号の京都・大津市境の逢坂の峠越え区間(画像:国土交通省)。

 国土交通省 近畿地方整備局は2023年度の道路予算や調査計画を発表。その中で、京都市山科区と滋賀県大津市をむすぶ新たな道路について、「交通円滑化や幹線道路の機能強化等に係る調査を実施します」としています。

 これは、20年近くにわたって地元を中心に要望が続けられている、国道1号のバイパス道路です。山科と大津の間には急峻な山地が立ちはだかっており、国道1号も京阪京津線も急勾配で逢坂山の峠を越えていきます。

 山地のせいで両エリアにはまともな幹線道路が国道1号くらいしかなく、南は15km以上離れた国道307号まで完全分断状態。広域移動では名神高速と京滋バイパスがありますが、京都市中心部へのアクセスでは下道の国道1号にも交通が集中し、いまだに2車線の当区間は有数のボトルネックとなっています。

 さらに峠付近は、豪雨など異常気象時に通行止めになる指定区間にもなっているほか、大雪・凍結時も通行止めが発生しています。

 長年「水面下での要望」どまりだった国道1号のバイパス構想、話が動いたのは2018年です。3月に国道1号が「重要物流道路」に指定された背景もあり、明くる4月の国の新年度計画で先述の「〜調査を実施します」の文言が現れたのです。同時に両府県をはじめとして「滋賀・京都間の新しい国道1号バイパス建設促進期成同盟会」が設立。以降、要望活動が毎年続けられています。

 滋賀県の広域計画では、大津・草津市内を中心に国道1号バイパスとして機能している「山手幹線」をさらに西へ延伸し、まっすぐ山を貫いて、新十条通へつながるようなイメージとなっています。この山手幹線は西側の湖南市方面へ延伸工事が進行中。栗東水口バイパスと接続していよいよ滋賀県南部の動脈になろうとしています。そのまま京都市内へ最短距離・カーブ無し・勾配無しで直結することが、滋賀県としての夢と言えます。

 国の「調査します」宣言は今年で6年目。最初の出発点の「計画段階評価のための、概略ルートや構造の調査検討」の段階にすら上げられていない状況です。

 初年度である2018年度に基礎調査が行われ、「国道1号で峠を越える交通は、約9割が京都市・大津市を発着する交通」と判明。これは既存の高速道路がバイパス代わりになっていないという事実でもあります。

 滋賀県内で同じく新規ネットワークとして、滋賀・三重を縦軸で直結する「名神名阪連絡道路」の構想があり、こちらは重要物流道路への指定とともに、今年すでに概略ルート検討の段階まで至っています。あらゆる点で結びつきの強い京都・滋賀ですが、道路での結びつきに関してはまだ「優先順位が低い」とみなされている現状です。