東京都中野区で進められている西武新宿線の地下化工事は、着手から9年目を迎えます。どこまで進んだのでしょうか。

西武新宿線の連続立体交差事業"第1弾"

 東京都中野区で進められている西武新宿線の地下化工事。新井薬師前・沼袋の2駅とその前後が地下線になり、7か所の踏切が除却されて道路渋滞の解消が図られます。

 2011年に都市計画決定し、2014年に着工したこの工事、完成予定は現時点で2027年3月末です。作業はどこまで進んでいるのでしょうか。


工事が進む沼袋駅(乗りものニュース編集部撮影)。

 住宅街を縫うように走る西武新宿線内では、念願の連続立体交差事業の「第1弾」としてスタートした工区です。駅部と潜る部分以外はシールドトンネルで掘り進められます。

 新井薬師前駅周辺は丘陵上にあり、東側の中井駅から妙正寺川を越え当駅まで長い上り坂になっています。将来は、この妙正寺川を越えた先でさらに地下深くへ潜ります。妙正寺川とは新井薬師前〜沼袋間でも交差するのですが、地下化後は、この2回目の妙正寺川交差部で川を“くぐる”ようになるからです。その後、野方駅の手前で再び地上に顔を出します。

 沼袋駅は現在、本線の間に「1本の通過線」が抜ける構造ですが、地下化後は「2面4線」として、上下線で優等列車と各駅停車の「通過待ち」「乗り換え」が可能な構造に。ただし現状、沼袋は各駅停車のみの駅です。なお新井薬師前駅は、現在の相対式ホーム2面2線から、島式ホーム1面2線になります。

 地下駅の作り方は2駅で異なります。沼袋駅は「駅の真下に巨大な空間を作り、そこに地下駅構造物を構築する」のに対し、新井薬師前駅は、「駅の北側の土地を開削し、地下駅構造物を構築する」というものです。沼袋駅は2面4線で広くなるため、横に別線を通すのが難しいという背景もあります。

地上はどうなる? 工事はどこまで進んだのか

 西武が3月末に発表している進捗状況では、まず駅部と地下へ潜る部分を先行して進めていて、駅間のシールドトンネルはまだ未着手の状況。西武は「着手に向けた準備を進めています」としたうえで、「進捗があり次第、適宜お伝えします」とのことです。もっともシールド工事は外から見えないので、周辺住民以外の新宿線利用者にとっては「いつの間にか始まって終わっていた」となりそうです。

 沼袋・新井薬師前駅の駅部工事も、車窓や仮囲いのすき間から「何か作業をやっている」くらいにしか分からない状況。しかし進捗写真では、地下に広い空間が出現しています。それでもその空間はまだほんの一部で、新井薬師前駅では地下1階コンコースの床上くらいまでの深さができた段階。掘削面積の大きい沼袋駅ではまだ地下1階コンコースの天井にも達していません。

 ちなみに、地下化で生まれる真っさらな地上空間はどうなるのでしょうか。2017年の「沿線まちづくり推進プラン」によると、新井薬師前駅の地上は交通ロータリーとなり、西側の狭い南北道路上でバスの乗降していた状況が改善されます。このロータリーは南北道路直結ではなく、南側の東西道路「五中つつじ通り」からアプローチする形になります。

 沼袋駅では、今の駅構内の真下に地下駅を作るため、生まれる地上空間はそこまで大きくありません。そこで上述のプランでは、地下化開業までに南側へ交通広場を整備し、西側の南北道路を拡幅して新青梅街道へのアクセスを向上させるとしています(現状で車両は新青梅街道から南行き一方通行)。さらに駅北側の区画も再開発を行い、「新たな顔となる駅前の拠点空間」を整備するとしています。どちらもまだ現場での動きはありません。

 車内放送でも「ただいま改良工事を行っています。ご注意ください」とアナウンスされて久しいこの2駅。劇的な変化はまだ確認できませんが、その裏で着実に工事は進行しています。