2023年4月中旬にヨルダン国王家族が来日しました。ただ、乗ってきたのはバーレーン王室航空のチャーター機。さかのぼって調べると、彼の国はUAEの旅客機をチャーター使用したこともありましたが、その時はもっと機体の見た目が謎な仕様でした。

ヨルダン国王家族、バーレーン王室の飛行機で来日

 バーレーン王室航空のボーイング747-400(登録記号A9C-HAK)が2023年4月12日、羽田空港から飛び立ちました。数が少なくなりつつある「ジャンボジェット」、しかも新型の「-8(ダッシュエイト)」ではなく、ほとんど見られなくなっている747-400の旅客型を見られる数少ないチャンスとあって、この日は平日にもかかわらず羽田空港のデッキは大いに賑わっていました。

 機体を観察すると、尾翼に大きくバーレーン国旗が描かれ、機体側面には「KINGDOM OF BAHRAIN」の文字、そして前方ドアの上部にバーレーンの国章が配置されており、どこからどう見てもバーレーンの政府専用機のように見えます。何も知らなければ、バーレーンの王族が乗ってきたかのように思うでしょう。しかし今回、羽田空港に飛来した同機に乗ってきたのは、ヨルダン国王夫妻らだったのです。


ヨルダン国王家族を乗せ、羽田空港に飛来したバーレーン王室航空のボーイング747-400(深水千翔撮影)。

 ヨルダンのアブドラ国王とラーニア王妃、そして長男のフセイン皇太子は4月7日から12日の日程で来日していました。期間中には天皇皇后両陛下との会見や、岸田文雄総理大臣との首脳会談などを行っています。さらにアブドラ国王は、そのまま帰国するのではなく、イギリス王立陸軍士官学校(サンドハースト)の第200回ソヴリンズ・パレードに出席するため、東京からロンドンへ向かっており、こうしたスケジュールをこなすため長距離の飛行が可能なバーレーン王室航空の747を使用した模様です。

 なぜ、ヨルダン国王らは自国の飛行機で来なかったのでしょうか。それは同国が独自運航可能な大型機を持っていないからです。以前は要人専用機としてエアバスA340-200を運用していましたが、これが2009年に退役。それ以降、外国訪問の際は様々なチャーター機を使うようになっています。

他国機チャーターだから来日のたび機種バラバラ

 ヨルダンのアブドラ国王は、大の親日家としても知られています。ゆえに、たびたび日本を訪れており、1999年の即位後だけでも11回を数えるほどだそう。2018年11月には千葉県の習志野演習場で陸上自衛隊特殊作戦群の訓練展示を視察したほか、2022年9月には安倍晋三元首相の国葬にも参列しました。

 たとえば2014年にはバーレーン王室航空のボーイング767-400(登録記号A9C-HMH)に搭乗していますが、2018年と2022年の来日ではアラブ首長国連邦(UAE)を拠点とするプレジデンシャル・フライトのボーイング777-200ER(機体記号A6-ALN)を使いました。首脳が外遊に出かける際、自国空軍が運用する機体や、フラッグシップキャリアの機体、もしくは民間のビジネスジェットをチャーターするという例は多いですが、このように他国の特別機を使用するというのは珍しいのではないでしょうか。


ヨルダン国王家族を乗せ、羽田空港に飛来したバーレーン王室航空のボーイング747-400(深水千翔撮影)。

 ちなみに今回飛来したバーレーン王室航空の場合、アブドラ国王が使用する際も機体の塗装に変更はありませんでしたが、2018年と2022年の来日で使用したプレジデンシャル・フライトの場合はUAEの王族とそれ以外で明確な違いがありました。

 見比べると一目瞭然なのですが、アブドラ国王が搭乗したときの機体は、尾翼にUAEの国旗が描かれていません。一方、2019年の「即位の礼」のときにUAEアブダビ執行評議会のハッザーア・ビン・ザーイド副議長を乗せて来日した際は、国名と国旗の表記が確認できます。

 アブドラ国王らを乗せて今回来日したボーイング747-400は、前述のとおりバーレーン王国航空の機体でしたが、中東にはボーイング747だけでなくエアバス380や同340など4発エンジンの大型機を運用する国々がまだあります。

 各国の特別機が、ボーイング777を始めとした双発機へと交代していくなか、現役の4発機でひょっとしたら再びヨルダン国王家族が来日するかもしれません。次はどこの国の機体で羽田空港に降り立ってくれるのか、今から楽しみです。