西武新宿駅に向かい合う位置に、「東急歌舞伎町タワー」が開業し、併設のバスターミナルから羽田・成田両空港への直行バスが運行を開始しました。東急のバスにとっては初となる“新宿進出”。ここを拠点に運行を拡大していく構えです。

東急歌舞伎町タワー&空港連絡バス開業

「え、ここから空港行くの?」
 
 新宿歌舞伎町、西武新宿駅前通りを歩く人から、驚きの声が聞かれました。2023年4月14日(金)、この場所に「東急歌舞伎町タワー」が開業し、併設のバスターミナルから、羽田・成田両空港への直行バスが運行を開始したのです。東急バス・東急トランセが運行開始の記念式典も開催しました。


東急歌舞伎町タワーのバスターミナルにて。空港連絡バスが運行を開始した(乗りものニュース編集部撮影)。

 羽田線・成田線いずれも東急トランセと東京空港交通の共同運行で、羽田線は11.5往復(空港行き12本、歌舞伎町行き11本)、成田線は6往復の設定。バスターミナルには、「新宿 歌舞伎町」の行先表示を掲げたバスが入っていました。ここから途中停留所なしで、羽田空港までは最短35分、成田空港までは最短1時間30分で直結します。

「歌舞伎町周辺には(外国人旅行者が宿泊する)ホテルが多く、もともと直結の空港アクセスニーズが多く寄せられており、地元商店会から要望書もいただいていました。日本で最も有名なエンターテインメントシティである新宿歌舞伎町に、日本の玄関口である空港から多くのお客様を運びます」(東急トランセ 古川 卓社長)

 歌舞伎町周辺はこの日も、キャリーバックを転がした外国人旅行客の姿がちらほら。以前、成田空港の関係者が「成田に降り立った旅客の第一のディスティネーション(目的地)で最も多いのは新宿」と言っていたのを思い出しました。

 空港と都内各地を結ぶリムジンバスを運行する東京空港交通の内波謙一社長も、「新宿は当社のバスにとって最大の拠点であり、インバウンドでさらに需要が高まりました。コロナの影響を受けるなかでも、新宿の路線は比較的ご利用が多い」と話します。

西武新宿線ももちろんターゲット!

 インバウンド需要だけでなく、東急トランセの古川社長は「西武新宿線から(空港への)アクセス性も格段に向上します」と話し、もっと多く本数を増やせるようPRしていくと力を込めました。

 このバスターミナルは、西武新宿駅の目の前。駅構内の案内放送が漏れ聴こえるほど近くに位置しています。

 西武新宿線は他線との直通運転もなく、「バスタ新宿」へ行くにも乗り換えが必要です。高速バスを利用する際の心理的距離は、周辺の他路線に比べて大きいものがあります。新宿駅からも離れた西武新宿駅の目の前に位置する今回のバスターミナルは、インバウンド需要と西武新宿線沿線の需要が2本柱といえそうです。

野望は大きいぞ! 「歌舞伎町発の高速バス」続々なるか

 実は東急バス・東急トランセは「バスタ新宿」への乗り入れ路線がありません。今回のバスターミナルで初めて新宿へ進出する形になります。

 古川社長は「ちょっとフライングですが」としたうえで、3月から渋谷周辺で運行している屋根なし2階建てバスによる定期観光バス「SHIBUYA STREET RIDE」を、5月から歌舞伎町タワーまで運行し、渋谷と新宿を結ぶバスとして運行する計画を明かしました。


運行開始式典にて。中央が東急トランセ古川社長(乗りものニュース編集部撮影)。

 同社は今回の空港連絡バスを足がかりに、ここを東急のバスの拠点として、運行を拡大していく構えです。

 現在、東急の高速バスは主に渋谷駅へ発着していますが、東急バスはこれらを延長し、歌舞伎町発着で渋谷などを経由していくことも検討したいといいます。たとえば渋谷・二子玉川〜上高地線(季節運行)など、外国人旅行者に人気のスポットにも歌舞伎町から直結できるというわけです。これは同時に「西武新宿駅から各地へ直結」という意味でもあります。

 東急歌舞伎町タワーの場所はもともと、東急レクリエーションが運営する映画館で、さらに古くはアイススケートリンクなどのレジャー施設があった場所です。それが再開発により、交通の拠点が併設された高層の複合施設に生まれ変わりました。東急が果たした“バスの新宿進出”。西武新宿線沿線の人も、今後に注目したいところではないでしょうか。