アメリカ「F-35戦闘機の半数が動きません」その原因は? 日本も他人事と言えないワケ
2023年3月30日、アメリカ空軍が保有するステルス戦闘機であるF-35「ライトニングII」のうち、半分近くの機体の戦闘準備が整っておらず、稼働していないことが明らかになりました。この問題、日本にも影響があるかもしれません。
6割以下の稼働率! 特に大きな問題はエンジン
経済・金融系メディアであるブルームバーグは現地時間の2023年3月30日、アメリカ空軍が保有するステルス戦闘機であるF-35「ライトニングII」のうち、半分近くの機体の戦闘準備が整っておらず、稼働していない状態と報じました。
F-35「ライトニングII」(画像:アメリカ空軍)。
情報は空軍のマイケル・シュミット中将のコメントによるもので、現在アメリカ空軍が保有している540機のF-35のうち、2023年2月時点で戦闘準備が整っているのは286機、53.1%とのことです。
なお、アメリカ国防総省では、F-35の戦闘準備率を65%と規定していることから、「これは受け入れがたいこと」だとシュミット中将は述べたそう。なお、彼は12か月以内にあと10%、すぐに飛ばせる機数を増やすとしています。
この稼働率の低さに関しては、故障の多さが指摘されている模様です。特にエンジンの故障率が高く、そのためスペアパーツが不足し、満足な修理を行えない機体が存在してしまう状態に陥っています。
そもそも、同機のエンジントラブルに関しては、2022年4月からタービンブレードの劣化による故障の頻発が指摘されていました。この段階で空軍の同機稼働率は2021年1月の70%から61%に落ち込んでおり、このままエンジン問題を継続した場合、2030 年に飛行停止になる F-35の割合は43%になるという予想も立てられたほどだとか。アメリカ空軍は、この問題を解決するために予算捻出を政府に求めましたが、まだ問題は続いているようです。
さらにエンジン以外にも、2022年7月には、パイロットが脱出するための射出座席に一部不具合が報告され、緊急時にパイロットが安全に脱出できず、危険にさらす可能性があるとして、アメリカ空軍がF-35の飛行停止を命じたこともあります。
日本も対岸の火事とは言い切れない?
この件に関しては、アメリカ空軍同様、F-35戦闘機を導入している日本の航空自衛隊にも影響がないとは言い切れません。
航空自衛隊で運用されているF-35(画像:航空自衛隊)。
そもそも同機はF-15Jなど、航空自衛隊が以前から使っている戦闘機と比較すると運用コストが最低でも倍はかかると言われており、機体寿命などを考えると4倍になるという話もあるほどです。故障率が高いとなると、さらにコストはかさむ可能性があるでしょう。
一方、日本周辺の海域は、ロシア、中国、北朝鮮などの不審船や不審機がひっきりなしに現れる場所とも言えます。領空侵犯スレスレの行為を行う航空機の数も多く、航空自衛隊ではそれらへの対応も含め、頻繁に戦闘機のスクランブル発進を行っています。
そのため、主にスクランブル発進で使用されているF-15Jは常にかなり高い稼働率を維持し続ければなりません。政府はすでに2018年の段階で、今後の国際情勢に鑑みて、F-15Jの後継はF-35が適当という判断になっており、制空任務に関しても徐々にF-35に更新していく予定です。そのため、F-35の故障の多さからくる稼働率の低下は、そのまま日本の安全保障問題につながりかねないと言えるでしょう。