マイアミからの帰国便は長胴タイプの「JA869J」が使われましたね。

革新的ゆえ製造に苦労も

 JAL(日本航空)の主力機のひとつであり、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)日本選手団の帰国便として、2023年3月23日に成田空港に降り立った「ボーイング787」。JALでは、同社の格納庫見学を軸とする「JAL工場見学〜SKY MUSEUM〜」での特別見学プランのひとつとして、787のパイロット、そしてこの機の一部分の製造に携わっている川崎重工とのトークイベントを目玉とする企画を展開しています。


JALと川崎重工が実施した「787就航10周年イベント」の様子(乗りものニュース編集部撮影)。

 787は、従来機に比べて大きな進化を遂げた旅客機ということができます。機体の素材に、炭素繊維などの複合材(いわゆるカーボン素材)を多く採用。従来のようにアルミニウム系の金属をメイン素材としていないことから、JALのパイロットによると「機体が軽く、強い」そうです。

 また、この素材を多く用いたことにより、従来機より機体の湿度を上げることができたほか、機内の気圧を人為的に高くし地上の環境に近づける「与圧」も、高く(地上環境に近づける)ことができます。ただ、それゆえに製造の方法は従来機とは異なるものだったそうです。

「(787開発前に川崎重工が製造を担当したボーイング機である)777などは金属の継ぎ目をリベットで止めますが、787は継ぎ目がなく一体で作ります。また、複合材はシートを積み重ね、加熱・加圧してできるものですが、積み重ねる角度などを設定するのが設計上複雑でした」(川崎重工の担当者)

パイロットから見た787はどんな飛行機?

 また、787シリーズは標準型の787-8のほか、JALも採用する胴体延長タイプの787-9、そしてそこからさらに胴体を伸ばした787-10が存在します。川崎重工の担当者は「胴体延長タイプが出ると、(製造企業側にとっては)影響は大きいんです。私達の担当部位も、それをつくるために、新たな設備の導入や改修が必要になりました。また、内部の部品の長さや胴体の厚さも変わってきますね」と話します。


JALと川崎重工が実施した「787就航10周年イベント」の様子(乗りものニュース編集部撮影)。

 一方で他機種での乗務経験を持つJALのパイロットは787について「機体が軽いので、一気に高い高度まで飛べます。揺れが少ない高度も先に取れるのです」と話す一方で、「国内線にも就航しているほか、国際線では、天津線、グアム線、コナ線以外は全部行く飛行機なので、(経験が少ない空港へも発着を求められることから)、毎回フライトに向けた勉強が結構大変です」と人気機種を担当するパイロットならではの苦労も語っています。

 なお、このイベントでは上記のトークイベントのほか、JALの格納庫見学、滑走路を臨むラウンジでの機内食体験などが盛り込まれています。なお、この企画はJMB(JALマイレージバンク)会員限定で展開され、参加には1人あたり4000マイルが必要でした。