ここ数年、ゼンデイヤがレッドカーペットで披露してきたすべてのルックに魅了されたという人なら、それらを手がけた天才スタイリスト、ロー・ローチの名前をよく知っているはず。

ハリウッドで活躍してきた“伝説的”なスタイリストは、ファッション業界では誰もがその名を知る人のひとり。顧客にはハンター・シェイファーやアニャ・テイラー=ジョイ、アリアナ・グランデ、セリーヌ・ディオンといったセレブたちの名前が並び、2021年のMETガラでは10人のセレブの衣装を担当し、世間を驚かせました。

そんな彼が突然引退を表明したことは、まさに“衝撃的”でした。ローは自身のInstagramに、次のように投稿しています。

「カップが空っぽになりました……私と、私のキャリアを長年にわたって支えてくれた皆さんに、感謝します」
「この仕事がただ服に関わるだけのものであれば、私は死ぬまで、この仕事を続けるでしょう。ですが、残念ながらそうではありません! 政治、ウソ、そして作り話に、とうとう参ってしまいました。あなたの勝ちです…私はやめます❤️❤️❤️」

デザイナーやモデルたち、ファッション業界のトップにいるローの仲間たちは、この決意表明に即座に反応。驚きと落胆のコメントを投稿しています。

ナオミ・キャンベルは、思いとどまるよう訴えるメッセージを送り、「ヴァレンティノ」のデザイナー、ピエールパオロ・ピッチョーリは一言、「あり得ない」と投稿。

当然ながら、ローの「政治とウソ、作り話」という言葉は、唐突に思える決断の背景に何があるのかについて、憶測を広めています。

理由となった可能性があることについて、最近の「ルイ・ヴィトン」のショーで2列目の席が用意されたことや、ゼンデイヤが“パリのブランド”と契約したことなどを挙げる人たちも。

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ローは以前、業界での人種差別の経験について語っていました。また、ファッション業界に関わることの精神的な負担を指摘する声も。

<エル イギリス版>に寄稿するファッション・コンサルタントのアジャ・バーバーはファッション業界に関連する情報を暴露する『ダイエット・プラダ』に、ローについて次のように投稿しています。

「この業界に身を置く黒人として、私自身も“燃え尽き”を感じています。顧みられないことも多く、2020年6月の出来事(世界に広がった『ブラック・ライブズ・マター運動』のきっかけになった事件)も、実際には何も変わらないことを示したのではないかと感じます。これらすべてに関わる政治に、とにかく疲れます」
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最近のインタビューでローは、ファッション業界の政治について、こう話していました。

「ある種の敬意が払われることを求めます。それが与えられないなら、私たちの間には問題が生まれます」
「私はこの業界を恐れていません。黒人で、貧困地区の出身だからです。いつでも戻ることができます。お金はいつでも稼ぐことができます。いつでも成功できるのです」

ローが引退を決断した理由について説明することがあるのかどうか、いまのところは明らかになっていません。

From ELLE UK