「大人は理解ってくれない! 子供も理解ってくれない!」 (『カモン カモン (C’MON C’MON) 』2022/4/22公開予定)
毎回共通のリードを120〜150文字くらいでああああああああああああああああああああああああ。今回の作品は4月22日から公開の『カモン カモン (C’MON C’MON) 』です。
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「未来に希望を持っている?」「スーパーパワーを持てるとしたら?」「もし両親があなたの子供になったら、何を伝える?」「死んだら、どうなるか考えたことある?」……。ホアキン・フェニックス演じる主人公ジョニーはラジオジャーナリスト。全米の子供若者たちにインタビューをするのが仕事だ。映画の中でのインタビューは、実際に台本無しで行われたという。だから、この映画に出てくる子供たちの言葉は、リアルなアメリカの子供たちが発した言葉だ。
子供たちの言葉は、いかにも子供らしい屈託ないものもあれば、達観した死生観や大人よりも大人びた発言で、観ている大人(のつもりでいる僕のような)の胸をエグる。映画の本筋ではないシーンなのだけれども、このインタビューだけでも一本の映画として観てみたいと思えるものだ。
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NYでシングルライフを送っているジョニーは、LAに住む妹に頼まれ、9歳になる甥のジェシーの面倒を見ることになる。ジョニーは、一度も子育てをしたことがない(と思われる)。しかし、子供への姿勢は真摯で一生懸命だ。それでも、大人の理解を超える行動に、ときに大いに取り乱す。ダスティン・ホフマンの『クレイマー・クレイマー』的な展開になっていくのかと思いきや。観客は、ジョニーの視線と感情、ジェシーの視線と感情とでいったりきたりする、不思議な感覚に陥る。子供の気持ちがわかる! ということではなく、子供のときの自分が思っていたことが、感情となってまざまざと蘇ってくる。子供時代を過ごし、いま大人として右往左往する自分がいるからこそ楽しめる、そんな映画だと思える。
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劇中、「No more screen time !」とジェシーが言うシーンがある。大人は子供にスマートフォンばかり見ていると怒る、けれども大人だって! みんな、小さな頃、幼稚園の先生、保育士さん、親戚のおばさんたちに、人間という世界の中で人として正しく生きるための大切なことを教えられてきたと思う。「全部をもらおうとしない(誰かのために残す)」「弱い人には優しくしなさい(譲る)」「最期まで面倒見なさい(育てる)」……。大人が子供に教える言葉、昔からの人たちが伝え続けてきた言葉は潔くて正しい。ここで、少し宣伝を。Hanakoの6月発売号では、SDGs特集を予定している。「ゆずる」「残しておく」「育てる」……。【美しい言葉と、未来の暮らし】テーマだ。SDGsの精神は、日本語を紡いできた、さまざまな人々の言葉の中にすでにあった、というもの。今作のように、子供たちの言葉を媒介して、あらためて向き合ってみると、そこにはとても大切な精神が宿っていることがわかる。子供たちの言葉にきちんと耳を傾けてみようと思う。
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ここに小見出しほしいですこれくらいの長さで!
『カモン カモン』の監督は、マイク・ミルズ。『人生はビギナーズ(Beginners)』(10年公開)では、内向的で真面目、愛情という存在に少し臆病な主人公オリヴァー(ユアン・マクレガー)が、75歳となる父に突然ゲイであることを告白され、驚きながら、死期が近づく父が人生を謳歌する姿を見て自分を修復していく。これは、マイク・ミルズが父から影響を受けて作った作品だ。『20センチュリーウーマン(20th Century Woman)』(16年公開)は、15歳の男子ジェイミーとシングルマザー・ドロシー、そして2人の異なる世代・バックボーンの女性との物語。中学生男子が憧れるちょっと年上の女の子だって、お母さんだって、みんな悩める一人の人間である、そこから逃れることはできない。大人になってみると、親が親として演じてくれていたことを、リスペクトすることが、みんなあるはずだ。これも、マイク・ミルズの青春時代と亡き母親との思い出をもとに描かれたという。そして、今作の『カモン カモン』は、彼の実子との日々の中から始まった物語。個人的には、マイク・ミルズ三部作といえると思うので、今作を観た人は、ぜひ、この2作も観てほしい。そして、マイク・ミルズのパートナーのミランダ・ジュライの作品も体験してほしい。映画『君とボクの虹色の世界』、書籍『あなたを選んでくれるもの』……。作品の方向性はまったく違うのに、通底する”なにか”が同じ。素晴らしいパートナーシップだと思う。
毎回のお約束で「こんなひとにオススメ的な」〆にしてもいいかと!
こんなひとにおすすめ的な内容でもいいですし、何か観に行く理由になるような編集長のひと言をください!
文・杉江宣洋
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