コロナ禍前、帰省客らで混雑する東京駅の東海道新幹線ホーム(写真:時事通信フォト)

「全国旅行支援」が10月11日より開始され、にわかに旅に出かける機運が高まっている。旅行予約サイトは繋がりにくくなり、早々に予算上限に達し受付を終了したところもあった。

また、格安の「鉄道開業150年記念 JR東日本パス」も10月14〜27日が利用期間だったこともあり、東北地方の宿が軒並み満室ともなった。

今回に限らず、ゴールデンウィーク、お盆、年末年始など、旅行には繁忙期が存在する。列車の指定券が確保できないことも多い。旅慣れている人は、慣れているがゆえに日頃ギリギリまで旅程を立てることもしないため、皮肉にも出遅れることも多い。実は私も、寝台特急サンライズなどを予約するときは気合が入るものの、それ以外のときは気がついたらすでに満席だった、という事態によく遭遇する。

けれども、そんな中でもうまく着席するコツはあるので、いくつか紹介してみよう。

単純だがコツがある「自由席で座る方法」

正直、コツといっても至って当然のことであり、目新しいものではないが、意外と見落とされているかもしれない。全く単純明快で、

「乗る駅が始発の列車を狙う」

この1つである。なんだそんなことか、と思われるだろう。

しかし、新大阪から新幹線に乗って帰京する際など、一番早くやってくる列車の自由席待機列に並ぶ人々が意外に多い。繁忙期の新大阪駅、博多からやってくる列車と新大阪駅始発の列車の自由席では、前者が混んでいることは明らかだ。「のぞみ」に自由席は16両中3両しかない。

私はJ2リーグのジェフユナイテッド市原・千葉を応援しており、アウェーゲームにもしばしば出かける。繁忙期にも当然試合はあるので、現地に行かなければならない。

今年のゴールデンウィーク、徳島ヴォルティス戦の翌日、鳴門から高速バスで淡路島の海景色を眺めながら大阪に出て、新幹線で帰京した。指定席は取っていない。5月5日、連休最終日で新大阪駅のコンコースはお土産を抱えた人々でごった返していた。時刻は13時半を過ぎた頃である。

27番線、14時15分新大阪始発の「のぞみ380号」の自由席待機列に発車25分前に並んだ。新大阪始発は多数あるので、繁忙期でも20分前後の待ち時間で大丈夫だ。

私が目指す新幹線の前に、広島始発の新大阪13時57分発「のぞみ148号」がやってきた。座れそうであれば乗ってもよいなと車内を外から眺めたが、やはり満席であった。新大阪で下車する人も多いとはいえ、座れたのは数人であろう。

結局、予定通りの新大阪始発に乗り込んだ。連休最終日にもかかわらず空席も多いまま発車。若い女性の2人組が知ってか知らずか「なんだ、混むと思っていたけど余裕だね」と会話するのが聞こえた。結局京都でも座席は埋まらず、名古屋でようやく満席となった。


「のぞみ」の自由席は16両中3両のみだ(撮影:尾形文繁)

このように、東海道・山陽新幹線の上りでいえば、博多始発は当然として、広島始発や岡山始発の列車があるので、帰る場所によって使い分けるといい。また、「ひかり」や「こだま」であれば自由席も多く、始発駅でなくとも座れる可能性は高い。

「のぞみ」始発駅を見分ける方法

注意点だが、この際に直前に来た広島始発の「のぞみ」は日によって、博多発、広島発、新大阪発と始発駅が変わる(2022年5月時点)。この日、とあるスマホアプリでは「新大阪始発」と誤った表示になっていた。紙の時刻表を持ち歩く人は少ないと思うので、複数のアプリで確かめたほうがいい。

また、「のぞみ○○号」の番号の付け方には規則があり、これで始発駅の判断がつく。東京―新大阪間のみを走る列車は200〜400番台と覚えておくといい。先の新大阪13時57分発の列車は、博多・広島発の場合148号、新大阪発は228号となる。番号付与の規則は東海道新幹線に限らずあるので、興味がある方は調べてみると面白い。

下りの場合は、東京と新大阪始発が大半であり(早朝に品川発や名古屋発がある)、普段は新横浜利用の人でも指定券が取れず自由席を利用するときは、乗車券や特急券代が余計にかかるが、いったん東京や品川まで行って乗るのも一案だ。実際、繁忙期では品川を過ぎた時点で自由席は満席となる光景をよく目にする。


東京駅の東海道新幹線発車案内(撮影:尾形文繁)

JR東日本の新幹線は全車指定席が多い。こればかりは仕方がないので、東北新幹線であれば、自由席のある「やまびこ」を使う。「はやぶさ」に比べ時間はかかるが、意外と速く、東海道新幹線の「こだま」ほどのんびりしていない。上りは盛岡始発、仙台始発があるのでこれを狙う。私はこの方法で繁忙期でも着席できなかったことはない。北陸新幹線も同様に自由席のある「はくたか」を狙う。


北陸新幹線E7系の普通車内。「はくたか」には自由席がある(撮影:尾形文繁)

また、参考だが全車指定席の新幹線でも「特定特急券」という座席指定なしの料金券で乗車できる区間がある。

はやぶさ・はやて:盛岡―新函館北斗間
つばさ:福島―新庄間
こまち:盛岡―秋田間

この料金券の場合は空いている席に座っていい。東北新幹線は、東京―仙台・盛岡間より北側は乗客が減ることが多いので、完全に満席のときを除けば指定券を取らなくてもこの特急券で着席できる可能性は高い。私は乗車の前にJR東日本のインターネット予約サービス「えきねっと」で指定券の販売状況を参照し、空いている席をあらかじめ見つけたうえで座っている。

応用例として、季節販売の普通列車専用のお得な切符「北海道&東日本パス」を利用する際が挙げられる。新青森―新函館北斗間に限り別途特定特急券(指定席は不可)で乗車できるが、まさにこの方法が役立つ。

在来線はどうする?

在来線の場合も同様に始発駅を狙う。いくつかコツを挙げてみよう。

早めにホームまたは改札口で待機する

地方などダイヤに余裕ある駅では、発車時刻の約30分前に列車が入線することがある。座席の確保だけでなく、眺めのいい席を確保したい場合などは早めにホームで待つといい。ただし、自動改札の無いような駅では、駅員による乗車案内があるまでマナーの面からもホームには出ずに改札口に並ぶ。


始発列車の多い東北本線白石駅(筆者撮影)

接続する列車の到着前に待機する

始発列車でも、手前の区間からやってくる列車からの乗り継ぎがいい場合が多々ある。この場合、あらかじめその列車が到着する前に待機しておく。意外と空いているな、と思っても、発車間際になると到着した列車からの乗り継ぎ客でいっぱいになることはよくある。

乗り換えの際に1段列車を遅らせる

例えば東海道本線の場合、東京方面から15両編成の列車で熱海に到着すると、静岡方面への乗り継ぎ列車は5両ないし6両編成となり、座席争奪戦が起きる。東海道本線のようにある程度本数のある路線ならば、いっそ熱海で降りて、駅前の古くからの商店街や足湯などを楽しみ、余裕を持って静岡方面の列車に乗り込む。短時間での乗り継ぎは気持ちも疲れるので、休憩にもなる。


熱海駅前の商店街(筆者撮影)

始発駅近くに宿泊する

上越線は、高崎から水上までは本数も多いが、その先、群馬・新潟県境を越えて越後湯沢まで向かう列車は極端に少ない。水上駅でわれ先へと乗り継ぐ客が多く、「水上ダッシュ」という言葉があるくらいだ。慣れた人は、水上駅が近づくと跨線橋に近い先頭方向に移動し、停車するやいなや、隣のホームへと階段を急ぐ。

この方法で座席は確保できるが、水上駅近くに泊まるのも一案だ。水上は湯の町である。のんびりと温泉宿で過ごし、翌朝、高崎からの列車が到着する前に越後湯沢方面、長岡行きに乗車する。やがて列車がやってきて、水上ダッシュの乗客がどっと車内に入ってくる光景を眺めるのは、意地が悪いようだが愉快である。

繁忙期は諦めるしかない?

廃線が決定、または濃厚な線区は諦めることも必要だ。

函館本線の「山線」と呼ばれる長万部―小樽間は、沿線自治体の合意もあり、2030年度に北海道新幹線が延伸(予定)した際、廃線・バス転換となる。この区間は1日4往復しかないこともあり、鉄道ファンに人気の路線となっている。ときおり臨時に設定される特急ニセコ号は発売と同時に売り切れる。


函館本線「山線」の始発駅、長万部駅(筆者撮影)

2020年3月以降、同区間はH100形という最新の車両に置き換わったが、それ以前のキハ150形の座席数が49席だったのに比べ36席に減った。また1両で運行することも多く、繁忙期は混雑が激しい。長万部駅からラッシュ時並みの乗客を満載して発車していく姿を何度も見かけた。

JR西日本の芸備線も先行きが怪しく、繁忙期は混雑する。こうなるともはや乗車は諦め、地元の方々に譲ったほうがいい。どうしても乗りたいのであれば、閑散期の平日に訪れるしかないように思う。

以上、基本的な考え方を示した。各地で応用してみると新たな発見があるかもしれない。いずれにせよ旅程には余裕を持ちたい。そして譲り合いの気持ちを忘れず、ほかの人に迷惑をかけないことが第一であることは頭に置いておこう。


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(八田 裕之 : 週末旅行家)