今年2月22日、アラブ首長国連邦のドバイ中心部にオープンした、世界初の未来に関する博物館「ミュージアム・オブ・ザ・フューチャー」。開業してから常にチケットは完売状態だという。世界中の旅人を魅了する博物館を体験してきた。

緑の丘は地球、本館は人類を表している

○すでにその外観はドバイのシンボルに!

地上77m、アラビア語のカリグラフィが描かれた円盤のような不思議な建物……開業した後すぐに訪れたドバイで、車に乗っていてもメトロに乗っていても、昼も夜も、まずは真っ先に目に入ってくる感動的なフォルム! 何度写真を撮っても、また撮りたくなる不思議な魅力を持つ建物だ。

街の新しいシンボルに

ガラスの丘の上に建つミュージアム・オブ・ザ・フューチャー。建物全体は人類をイメージしており、楕円形の空洞は未来を意味する。近未来都市的なドバイの街の風景に、この博物館が加わったことで、未来感が倍増した印象だ。外観のみならず、中に入ってみると驚きの連続だった。

アラビア語でできたデザインに見入ってしまう

建物全体は、持続可能性を最も重視している。外壁は1,024枚のステンレスとガラスを組み合わせた複合パネルで構成されており、4,000メガワットの太陽エネルギーで内部の電力は賄われているという。アラビア文字の窓は日中は内部に光を放ち、夜はエネルギーを節約し、LEDライトで照らされる。建設はロボットによって行われたそうだ。

内部のらせん階段で登るときもこのデザインに始終釘付けだ

○「ミュージアム・オブ・ザ・フューチャー」がつくられた目的は?

この博物館の目的は2つ。未来を予測し、次世代にインスピレーションを与える世界的なセンターとしての使命、そして、世界中の専門家たちを結びつけ、地球の未来のさまざまな問題を解決するために革新的な実験の場を提供すること。作品を展示するだけの従来の博物館と違い、未来へ貢献する「生きた博物館」でもある。

未来館のライブラリー

建築家は南アフリカ出身のシャン・ケラ氏。建物外部を彩るカリグラフィをデザインしたのは、UAE出身のマタール・ビン・ラヘッジ氏。内部は3万m2の面積をもち、柱1つ使わない内装は、まるでコンテンポラリーアートの世界。館内の展示は、宇宙旅行と暮らし、地球上の生命、健康などの未来を、バーチャルリアリティ(AV)、拡張現実(AR)、人口知能(AI)、データ分析など、今まで見たことのない超最新テクノロジーを使って2071年の世界が表現されている。

最新テクノロジーはもちろん、こんなに美しい建物ができたのかと驚かされる

外観のカリグラフィにはドバイの現首長 シェイク・ムハンマド・ビン・ラーシッド・アール・マクトゥーム氏の3つの名言が記されている。

1つ目の名言: 私たち人間は何百年も先は生きられない。しかし自分たちの想像力が育んだものは、遺産としてずっと残り続ける。

2つ目の名言: 想像して設計する、そしてそれを実行できる人にこそ未来はやってくる。未来は待つのものではなく、創造するものである。

3つ目の名言: 企業再生、文明革命の秘訣は実にシンプル。それは、イノベーション(革新)。

写真は外の看板

○タイムマシーンのようなエレベーターで出発

まずは館内のエレベーターへ乗り込むが、その前に、エントランスホールのデザインの美しさに目を奪われる。世界にはさまざまな美術館、博物館があるが、こんなにワクワクさせてくれるエントランスホールは生まれて初めて、と思う人も多いはず。

エントランスホールのらせん階段のフォルムが美しい

「Let’s go to the future! (さあ、未来へ向けて出発しましょう)」。エレベーターに乗り込むと、スタッフの声掛けと共に、しばしタイムマシーンの旅へ。そんな気持ちにさせる演出で、ゲストは皆、エレベーターの壁面に映し出される宇宙の映像に釘付けとなる。無事着陸して、ドアが開いたら2071年の世界へと歩き出す。

エレベーター内部

次の階へ行くとき、エレベーターから降りる直前は、床全体に映像が映し出され宇宙からドバイへ降りていくスペースシャトルに乗っているかのような印象を受ける。

エレベーターの床

○見たことのない不思議空間、5つのコーナー

ミュージアム・オブ・ザ・フューチャーは、大きく分けて5つのコーナーに分けられる。

新しい世界の発見 DISCOVER NEW WORLDS

自然の驚異を目の当たりに WITNESS THE WONDERS OF NATURE

生命のライブラリーを探索 EXPLORE A LIBRARY OF LIFE

感覚を蘇らせるヒーリング空間 REVIVE YOUR SENSES

新しい目で自分自身と世界を見る SEE YOURSELF AND THE WORLD WITH NEW EYES



まず1の「新しい世界の発見」。エレベーターから降りた後の1のフロアは、月が見えるスペースシャトル内、という印象だ。

まさに、宇宙旅行の疑似体験!

最初の部屋の大きなマシーンはレーザービーム。月の地面に置かれたレーザービームで太陽光を集めて、地球へエネルギーを送るシステムという設定。

レーザービームマシーン

地球にエネルギーを送るのかがわかる平面ボード

ゲストがモニターで好みの宇宙服を選ぶと、大画面に映し出される。

いろいろな仕掛けがあるのでトライしてみよう

このバーチャルリアリティ映像は1から2へ行く途中の通路の窓から覗くように映し出される2071年のドバイの街。

そう遠くない未来、そんな気持ちになる

「ハイパーループ」という乗り物で、ドバイ〜アブダビ間を30分〜45分くらいで結ぶ。現在はバスで2時間〜2時間半かかる。

窓枠にしているところも楽しい演出

2「自然の驚異を目の当たりに」の部屋。アマゾンの熱帯雨林を再現し、絶滅の危機に瀕している生態系の昼夜の動きを描写している。

森の木の根のエコシステムがプロジェクション・マッピングで理解できる

3「生命のライブラリーを探索」の部屋。未来館4階「ヒール研究所」のザ・ライブラリーには、2,400種の生物が展示されている。

クラゲのサンプル

これらは森のDNAサンプルを収集する際に役立つもの。DNAデータから、どれかを選んでスマートフォンで持ち帰ることもできる。

館内の展示方法も斬新

こちらの部屋は、生態系シュミレーター。その種子が生態系にどのように影響を与えるか、デジタルで予測している。

生態系シュミレーターのひとつ

もっともフォトジェニックで、一つひとつ、見ていると時間がかかるので、ゆっくりと時間を取れるようにすることをおすすめしたい。

カラーがどんどん変化していくのも綺麗

4「感覚を蘇らせるヒーリング空間」。ここでは、さまざまなヒーリングを実際に体験できる。

ヒーリング空間への入口

ここからそれぞれのヒーリングの部屋に入っていく

ハンドマッサージテラピー

ハンドマッサージテラピーはひとりずつの部屋に分かれる

ユニバーサルハーモニーでは、アルファー脳波を活性化させる

ザ・センサーは、水と光と振動を通じて瞑想する空間

キッズルームのフューチャーハウス(Future Heroes)。未来の技術を集めた子ども向けのファンタジーの部屋。

子どもたちの情操教育に役立ちそう

「トゥモーロー&トゥデイ(Tomorrow&Today)」のフロアは、企画ごとに展示内容が更新され、また全館で各分野の専門家が未来のさまざまな側面について議論するレクチャー、ディベート、セッションなども行われている。

お土産コーナーもある。購入したのは美術館外観を模したキーホルダー。オシャレでつい手に取ってしまった

年末年始、もしくは来年の春以降、ドバイの旅を予定されている方は、ぜひとも世界初の未来の博物館、そしてナショナル・ジオグラフィック誌で「世界で最も美しい博物館」のひとつに選ばれた建物へぜひとも訪れてみてほしい。

チケット購入は公式ホームページから予約が必要。2022年10月現在、翌月の予約が可能。詳細は関連サイトのホームページを参照のこと。

何度も訪れたいミュージアム・オブ・ザ・フューチャー

●ミュージアム・オブ・ザ・フューチャー(Museum of the future)

住所: Sheikh Zayed Road, Trade Centre, Trade Centre 2, Dubai, UAE

開館時間: 10:00〜18:00

入場料: AED145(UAEディルハム、3歳未満は無料)

旅行ジャーナリスト&編集ディレクター : 鈴木幸子(らきカンパニー) すずきさちこ 出版社勤務や地球の歩き方編集を経て2001年に独立し、有限会社らきカンパニー設立。世界60か国以上を頻繁に取材し、一期一会の旅リポートを発信中。著書に『もち歩きイラスト会話集タイ』(池田書店)ほか。JTBるるぶ『アンコールワットとカンボジア』初版制作を担当。 この著者の記事一覧はこちら