オリックス・中嶋聡監督【写真:荒川祐史】

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2敗から怒涛の4連勝でオリックスが26年ぶりの日本一

■オリックス 5ー4 ヤクルト(日本シリーズ・30日・神宮)

「SMBC日本シリーズ2022」は30日、神宮球場で第7戦が行われ、オリックスが5-4でヤクルトに勝利し、26年ぶりの日本一を達成した。連勝スタートのヤクルト、怒涛の4連勝で一気に頂点に立ったオリックス。両チームの差はどこにあったのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、DeNAでプレーした野球解説者の野口寿浩氏は「動いた中嶋監督、動けなかった高津監督」と振り返った。

 王手をかけたオリックスは中4日の宮城が5回無失点の好投を見せると、打線も初回に1番に抜擢された太田がシリーズ初となる初球先頭打者本塁打で流れを掴んだ。

 エース・山本の離脱は痛かったが、左腕・山崎福ら先発陣が踏ん張り“由伸不在”の穴を埋めた。元々、強力だったリリーフ陣も160キロに迫る剛速球が武器の宇田川、山崎颯が勝ちパターンとして確立され、レギュラーシーズンでわずか5セーブだったワゲスパックが守護神として機能した。

 シーズン同様にクライマックスシリーズ、日本シリーズと短期決戦でも見せつけた自由自在な“中嶋采配”に野口氏は「山本の不在でよりチームが一つになった。若い選手が多いからこそ、臨機応変に調子の良い選手を積極的に起用できたのだと思います。投手、野手といつも通りの野球ができたのがオリックスだった」と指摘する。

ヤクルトは「実績、実力のある選手が多く、高津監督も動かせない状況」

 一方で、ヤクルトは第1戦で投手4冠の最強エース・山本から勝利を手にし、第2戦は9回に代打・内山壮が同点3ラン。第3戦も7-1で勝利するなど圧倒的有利な状況だったが、まさかの4連敗を喫した。

 3冠王の村上、オスナ、塩見ら「打はヤクルト」との戦前の予想通りの展開になっていたが、徐々に状態は下がり、全7試合中、6試合で3番を務めた山田は打率.083と極度の打撃不振に陥った。守護神のマクガフも第5戦でサヨナラ2ランを浴びると、第6戦も自らの悪送球が絡み失点を重ねた。

 最高のスタートを切ったが、ジワジワと重圧をかけられたヤクルト。野口氏は「オリックスに比べるとヤクルトの戦い方はレギュラーシーズンとほぼ変わらない。村上、山田ら実績と実力のある選手が多く、高津監督も動かせない状況。打順もそうですし、守護神のマクガフについても。いきなり戦い方の“形”を変えるのは厳しかったと思います」と、勝敗を分けたポイントを口にする。

 ヤクルトは全7試合で3番に入った打者(山田・6試合)、(塩見・1試合)は23打数無安打。シリーズ前から4番・村上の前後が重要視されており、5番のオスナは好調だったが、3番の不振は大きく響いた形となった。

「短期決戦は選手の状態が上がるのを待っていられない」

 固定概念に捉われず、短期決戦でもレギュラーシーズン通りの戦い方が通用したオリックス。抜群の実績を誇る選手たちの状態が上がるのを待ったヤクルト。

 全7試合を振り返った野口氏は「動いた中嶋監督と動けなかった高津監督と言えるのではないでしょうか。短期決戦は『選手の状態が上がるのを待っていられない』とよく言いますが、まさにそのようなシリーズだったと思います」と、総括した。

 2年連続で同じ顔合わせとなった今年の日本シリーズ。昨年に引き続き両チームは、球史に残る接戦を演じファンを楽しませた。2023年はオリックス、ヤクルトを脅かすチームは現れるのか。来シーズンも12球団が繰り広げる熱い戦いを期待したい。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)