ホンダ N-BOXとは

2代目ホンダ N-BOX(左) N-BOXカスタム(右)

ホンダ初の軽自動車は、1967年に誕生したN360。単なる機械ではなく「人が中心」の「人が乗るためのもの」として開発されたN360から、約50年の歳月を経て「N」の名前を受け継ぐスーパーハイトワゴンとして復活したのが大人気軽自動車ホンダ N-BOXです。

2011年12月に発売された初代N-BOXは、軽自動車ならではの取り回しの良さを備えつつ、ホンダ独自のセンタータンクレイアウトと底床設計による広い室内空間とユーティリティの高さが特徴。すっきりとしたエクステリアに加え、ターボエンジンモデルと必要十分な出力を備える自然吸気エンジンモデルが用意されました。

2017年9月に登場した2代目N-BOXも、初代の優れた点はそのままに、ライバルに先んじて軽自動車初となる先進運転支援システムを標準装備。「N」を意味する「乗り物」としてあらゆる部分での高い完成度が評価されるホンダ N-BOXは、現在も爆発的なヒットを継続中です。

売れに売れるホンダN-BOX

初代ホンダ N-BOX

初代ホンダ N-BOXは、登場するやいなや初年度売上No.1を獲得。さらに初代フィットの記録を上回る、発売5年で累計販売台数100万台を達成しました。

2代目へモデルチェンジしてもその人気は衰えることを知らず、2021年5月末で派生モデルを含めた初代からの通算で累計販売台数200万台を達成し、2022年現在は7年連続で年間販売台数1位を獲得している人気ぶりです。

■高くても指名買い! 日本でもっとも売れてる車

N-BOXで目立つのが購入時の「指名買い」の多さ。利便性の高さに加えて走行性能も高く「セカンドカーとして購入したのにN-BOXしか乗らなくなった」という声や「普通車よりもN-BOXを選ぶ」との声も聞かれます。

軽自動車で200万円を超える新車価格は、額面だけ見れば高価ですが、軽自動車であるため維持費は安価です。さらに人気車だけあってリセールバリューも高く「買って損をしない車」とも評されます。

N-BOXの人気は、いまやコンパクトカーよりも高くなっており、直近となる2022年度上半期の販売台数ではトヨタ ヤリスを僅差で抜いて、現在日本でもっとも売れている車となっています。しかし当のホンダは、このN-BOXの快挙に喜んでばかりもいられない理由が。

軽自動車は利益率が悪い

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軽自動車は車両価格の安さが特徴です。しかし、そのぶん利益率も低くなります。さらに近年は厳格化する環境基準や安全基準に対応させるために製造コストも上げざるを得なく、軽自動車1台あたりのメーカー利益は、わずか数万円ともいわれています。

軽自動車市場はたくさん売らなければ利益が上がらない仕組みであり、しかも国内のみで販売しなくてはならない制約があります。

もちろん、これはN-BOXも該当します。N-BOXの高い新車価格は、性能アップのためのコストアップであり、これだけ売れに売れても利益はそれほど多くありません。また、維持費が安価な軽自動車ということもあって、販売店側でも車検やメンテナンスで上げられる利益は少ないとのことです。

しかも2020年度の段階において、ホンダの国内販売における軽自動車比率が50%を超えており、この傾向は続くとみられています。

メーカー内の別セグメントユーザーも取ってしまう

4代目 ホンダ フィット

N-BOXがたくさん売れることで別の問題も発生します。利益率が低い軽自動車N-BOXが売れてしまうと、利益率が高いホンダの他車種と競合してしまいます。

とくに割を食っているのは、ホンダの主力コンパクトカーであるフィットです。現行4代目フィットは2020年に登場したものの、歴代フィットに比べて販売は低迷中。そのすべての原因がN-BOXにあるわけではありませんが、いくらかのユーザーはフィットからN-BOXへ流れているとみるのは妥当でしょう。

当然ながら、ホンダとしてはN-BOXを100万台売るより、フィットを100万台売った方が高い利益になります。初代フィットの記録を超える大快挙を成し遂げ、さらにそれを現在も更新中であるN-BOXは間違いなくホンダの傑作と呼べる車です。しかし、ホンダには両手を挙げては喜べない状況といえるのではないでしょうか。