不調は自分で気づけない場合もあります。周囲に「疲れてない?」と指摘されたり、どことなく不具合を感じたりしたら、迷わず相談を。もしかしたら、更年期症状ということも? 医師の高尾美穂先生に、更年期治療について教えてもらいました。

更年期症状の仕組み、そして治療法

更年期に心身の不調を感じる人は、全体の約6割。そのうち半数の人が、治療を受けなければならないほど日常生活がつらい「更年期障害」を体験します。

治療は、漢方薬とホルモン補充療法があり、卵巣機能や生理の状態によりどちらかを選択、あるいは併用します。

●ホルモン補充療法に向いている人は?

更年期に伴う不快な症状を早くよくしたい、更年期障害が重い人に。また、女性ホルモン低下に伴う将来的な病気(脂質異常、動脈硬化、骨粗鬆症など)を防ぎたい人にも。

・効き目

効き目が早いのが特徴。ホットフラッシュなら1〜2か月で約9割の人が改善。メンタルの不調、関節痛は約3か月もするとラクに。

・治療法

急激に減っていく女性ホルモンをほんの少し補うことで、更年期における急激な女性ホルモンの減少による波をゆるやかにします。

・費用感

更年期症状の治療のため、保険適用になります。1か月1000〜2000円程度

・期間・注意

閉経前か閉経直後が始めるタイミング。乳がん既往者など、投与ができない人もいます。

●ホルモン補充療法の種類

・飲み薬

錠剤である飲み薬は、飲み慣れている人が多く取り入れやすい。ただし、飲み忘れることも。また、胃腸や肝臓が弱い人には向きません。

・はり薬(パッチ)

下腹部にシールのようにはるだけで、皮膚から薬剤が吸収されます。飲み忘れがなく、胃腸や肝臓への影響を少なくしたい人にも。

・塗り薬(ジェル)

ジェル(クリーム)を両腕の手首から肩に塗ることで、皮膚から薬剤が吸収されます。胃腸や肝臓への影響を少なくしたい人向き。

・腟座薬(腟剤)

外陰部から腟の症状が強い場合に選択されるのが、薬剤を挿入する方法。腟炎、膣萎縮の予防や、外陰部の乾燥、性交痛の緩和にも効果的。

●漢方治療に向いている人は?

イライラやうつ状態といったメンタルの不調、倦怠(けんたい)感、頭痛などの不定愁訴に強いのが漢方薬。東洋医学における「気・血・水」の巡りをよくし、体調を全体的に底上げします。

・効き目

薬用効果が複数配合されており、1つの薬でさまざまな症状に効果が。ただし、効き目は穏やかで、継続での服用が求められます。

・治療法

空腹時に服用。婦人科で処方してもらえます。ドラッグストアでも購入可能ですが、自分の体質や症状に合う漢方薬の見きわめが必要。

・費用感

保険適用で、1か月1000〜2000円程度。市販薬だと、やや割高になる場合がほとんど。

・期間

最低でも、8〜12週間ほど続けないと実感が得られないことが多い。

●おもに処方される漢方薬

・加味逍遙散(カミショウヨウサン)

血の巡りをよくして体を温めるほか、上半身の熱を冷ましてのぼせを抑制。イライラ、落ち込みなどメンタル的な症状にも効果的。

・当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

血行をよくして、冷えや貧血を改善する効果が。体力がなくて疲れやすい、めまい、頭痛、動悸がある人にもおすすめです。

・桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

血の流れを整え、のぼせ、肩こり、頭痛、めまい、足の冷えを改善。体力はあるけど、のぼせやすく、赤ら顔でがっちり体型の人向き。