住宅の間取りを考えるときに、子ども部屋をどこにするかは重要な問題です。一級建築士の石川淳さんは「最近はリビング学習や、リモート授業なども想定しなければならず、必要条件も複雑に変化してきている」と言います。それ以外にも人数が増えたときのことや、巣立ったあとのことも考える必要が。自身が手がけた5つ事例をもとに、子ども部屋の間取りについて解説してくれました。

リビングの横:家族の気配が感じられ巣立ったあとも使える!

1階にミニオフィスをつくった住宅の例です。オフィスと寝室、サニタリーを1階に置き、2階リビングにしています。

家族構成は夫婦と子ども1人の3人暮らし。上の写真のリビングの壁の右の開口の奥は家事コーナー。左側の開口の奥が子ども部屋です。

視線はさえぎられますが、リビングの音や雰囲気はダイレクトに伝わる間取り。家族の気配を常に感じることができる子ども部屋です。壁で仕切られているので、お子さんの持ち物で散らかっていても大丈夫です。

 

パーティション的な壁でLDKと子ども部屋が仕切られています。

 

こちらが子ども部屋の内部です。コンパクトに収めるため、ベッドコーナーをロフト風に造作しています。

子ども部屋は建物の北側につくりました。しかし、リビングの天窓から光が射し込むので、日中は明るく心地よい場所に。

将来受験勉強や今後のリモート授業などで遮音が必要なときは、壁と勾配天井の間にガラスなどをはめ込むことで、完全に個室化することもできます。

また、リビングに直結しているので、お子さんが巣立ったあとは、ライフスタイルに合わせてさまざまな使い方ができる部屋になります。

 

最上階の3階:ダイニング、リビングを通って子ども部屋へ

こちらは3人のお子さんがいるスキップフロアの住宅です。

高さ制限が厳しい旗竿敷地のため1階を半地下式にしました。平面プランも敷地に合わせて最大限ムダなく面積をとりました。

子ども部屋は左の階段を登った先にあります。ちなみに、階段を降りた先はダイニングキッチン。

リビングには学習に使えるように3人座れるカウンター(上写真右)をつくりつけ、子どもたちが自然とリビングへ出てくるような工夫をしています。

 

こちらが断面図です。子どもたちは必ずダイニングキッチンの前を通過して、さらにリビングを通り抜けてから、子ども部屋に行く動線になっています。

 

リビングの一角の壁には、マグネット対応の仕上げに。いちばん下の子どもの絵本やオモチャなどを置くコーナーを設けています。

 

こちらがリビングから階段を上がった、子ども部屋の様子です。子ども3人分の個室をつくることはできなかったので、大きなひと部屋に。ロフトのようなハシゴつきのベッドをつくりつけました。

廊下方向が南のため、子ども部屋と廊下を仕切る引き戸には、光の透過する樹脂素材を採用。

 

 玄関ホール横:大きな戸を取りはずせば廊下と一体になる子ども部屋

こちらは高台に立つ住宅です。設計当時は、夫婦に幼い子どもが1人という3人家族。眺望を生かすために2階にリビングをつくり、1階の玄関ホールに面して子ども部屋を配置しています。

しばらくは子ども部屋として使われることはないので、多目的に使い勝手がいいように、玄関ホールに大きく開くようにプランしました。子どもが小さなうちは趣味室などに使い、中高生から大学生の間は個室化します。将来子どもが巣立ったあとは、また趣味室的な空間に戻すことも可能です。

 

大きな引き違い戸は、取り外せば廊下と一体の大空間になります。

 

子ども部屋から見た玄関ホールの方向です。引き違いのドアのため、部屋の両側に出入り口が設定できます。

設計時お子さんは1人ですが、2人になった場合でもそれぞれの出入り口を確保できます。

 

窓を左右対称に取りつけました。真ん中にパーティションや家具を置けば、2つに割ることも可能です。

スキップフロアで下階:見上げればLDKと適度な距離感が生まれる

この家は周囲を隣家に囲まれていることから2階にリビングのプランに。壁で囲まれたバルコニーをリビング半層上につくり、そこから採光しています。

お子さんは2人。住まい手からのリクエストは、なるべく明るい場所に子ども部屋をつくりたいとのこと。そこで、子ども部屋も、1階ではなく光の届きやすい2階に配置しました。

写真のX型柱の向こう側が半層下がった廊下になっていて、そこに2つの子ども部屋の出入り口があります。

 

子ども部屋の出入り口をリビングダイニングから見える位置に配置しつつ、半層下げたことで、子ども部屋とリビングの距離感をほどよく調整しました。

子ども部屋へは、LDKを見上げる高さの廊下を通って出入り。その際は、LDKにいる家族とのつながりを感じることができます。

 

スキップフロアで上階:思春期の子どもたちをそれとなく把握

こちらの家は「スキップフロアの家にあこがれています」という住まい手の希望を形にした家です。

2人の子どもの部屋は3階に配置。ダイニングを通過して折り返して、階段を登る先に子ども部屋をつくりました。

 

思春期の子どもたちの部屋の行き来を、家族がそれとなく把握できるようになっています。

子ども部屋は最上階で採光条件がよいので、体内時間がズレた中高生が、日光でリセットするのにもぴったり。

 

子ども部屋は少し先のことも考えてプランを!

以上、5つの事例を紹介してきました。子どもが小さい時期は、個室は不要かもしれません。しかし、受験期には個室が必要になります。さらに、子どもが巣立ったあとには、夫婦のための趣味室にするかもしれないですし、親や自身の介護部屋になる可能性も。

家づくりを始めると、こうした課題が明らかになって、具体的に考えをまとめることが必要になるものです。

子ども部屋のあり方に正解はありません。家族それぞれの考え方や、将来家族の構成が変わることも考えながら決めることが重要です。「どんな子ども部屋にしたいか?」「将来どんなふうに使いたいか?」と、少し先を見通しながら検討してみてください。