痛くない乳がん検査(無痛MRI乳がん検診)「ドゥイブス法」の当日の流れと注意点は? 医師が解説

写真拡大 (全6枚)

乳がんを的確に発見する検査として、現在、注目を集めているのがドゥイブス法。痛みがなく、検査着を着たまま行えるのが特徴です。いったい、どのような流れで検査を行うのでしょうか。検診マンモグラフィ読影認定医師であるSeeds Clinic 新宿三丁目院長の石田先生にMedical DOC編集部が話を聞きました。

乳がんはどんな病気? 乳がん検診のマンモグラフィ検査は痛いって本当?

編集部

乳がん検査のひとつ「マンモグラフィ検査」は痛いと聞くのですが、本当ですか?

石田先生

痛みを感じる、感じないは個人差が大きく、一概には言えません。ただし、一般的にマンモグラフィ検査を受ける女性の多くが、なんらかの痛みを感じるのは本当です。

編集部

なぜ、マンモグラフィ検査は痛いのですか?

石田先生

なぜなら、マンモグラフィ検査は透明の板で乳房を圧迫して、できるだけ薄い状態にして撮影を行うからです。乳房は乳腺、脂肪、血管などさまざまな組織でできています。そのまま撮影すると組織が重なり合って正確に診断することができないので、できるだけ薄くし、重なり合わないようにして撮影するのです。

編集部

マンモグラフィ検査では、何が発見できるのですか?

石田先生

マンモグラフィはX線を使って、乳腺内にできた小さなしこりや乳腺の乱れ、乳腺のなかにカルシウムが沈着して作られた石灰化を見つけます。なぜなら、それらは乳がんが原因となって発生する場合があるからです。

編集部

マンモグラフィ検査のほかには、どのような検査があるのですか?

石田先生

超音波検査(エコー検査)があります。そのほか、近年では無痛の乳がん検査として、「無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス法)」という検査が注目を集めています。

痛くない乳がん検診「無痛MRI乳がん検診」のドゥイブス法とは? 検査時間や放射線など気になる点を医師に質問

編集部

無痛MRI乳がん検診とはどのような検査ですか?

石田先生

「ドゥイブス法」ともよばれ、簡単にいうと、高性能のMRIを使って行う検査です。MRIとは強力な磁力を使って行う検査で、特定の周波数の電波を照射して、臓器や血管を撮影します。無痛MRI乳がん検診は従来のMRIを改良し、より乳がんを見つけやすくしたものです。

編集部

具体的にはどのようにして検査が行われるのですか?

石田先生

来院者は、専用の台の上にうつ伏せの状態で横たわっていただくだけです。検査着を着たまま検査することができますし、マンモグラフィのように、乳房を挟むことがないので痛みを感じることがありません。

編集部

放射能を被ばくするリスクはないのですか?

石田先生

レントゲン検査と違って、X線を使わないため被ばくのリスクはありません。検査時間も15分程度と短時間で終わるので、安心して受けていただけます。

編集部

検査の精度はどれくらいですか?

石田先生

一般に、がんを発見する確率はマンモグラフィの5倍程度とされています。特に無痛MRI乳がん検診は日本人に適した検査法といわれています。

編集部

日本人に適しているのはなぜですか?

石田先生

なぜなら無痛MRI乳がん検診は、画像のコントラストが強くて乳がんを見つけやすいからです。日本人女性には、乳腺組織がよく発達した「高濃度乳房」が多いのですが、マンモグラフィの場合、無痛MRI乳がん検診に比べて画像のコントラストが強くないため、乳腺とがんの区別がつきにくいという弱点があります。しかし、無痛MRI乳がん検診の場合、画像のコントラストがくっきりしているので、乳腺の影響を受けにくく、がんを見つけやすくなるのです。

痛くない乳がん検診「無痛MRI乳がん検診」は何歳から? 妊娠中や授乳中、生理中は受けられる?

編集部

無痛MRI乳がん検診は何歳から受けられるのですか?

石田先生

特に年齢の指定はありません。日本では40歳から2年に1回、問診とマンモグラフィが推奨されています。しかし現在では、20~30代の若年層にも乳がんの患者さんが増えていることから、若い方にも積極的に受けていただきたいと思います。

編集部

妊娠中や授乳中でも受けられるのでしょうか?

石田先生

妊娠中や授乳中は乳腺が発達するため、がんの発見確率が低下してしまいますが、受けられないということはありません。ただし、無痛MRI乳がん検診は非常に強力な磁気を用いるため、妊娠初期だと胎児に影響が及んでしまうこともあります。医療機関や医師によって考え方は異なりますが、当院の場合、妊娠16週以降の女性に限り、無痛MRI乳がん検診をお受けしています。また、当院では磁気の強度が異なる2種類の検査機器をご用意しており、妊娠中の方には磁気が弱めの検査機器を使用するようにしています。

編集部

生理前や生理中の女性は受けられるのでしょうか?

石田先生

生理前には乳房が張り、乳腺の水分が多くなるため、できれば生理開始から3~21日に受けることを推奨します。

編集部

検査はどのように行われるのですか?

石田先生

まず問診票に記載していただき、検査着に着替えていただきます。それからMRI室へ移動して台に横たわっていただきます。15分程度で検査は終了。後日、専門医が読影します。

編集部

どれくらいの回数、検査を受ければ良いでしょうか?

石田先生

一般的に、2年に1度受けることをおすすめしています。しかし、乳がんは遺伝的な要素も強いので、たとえばお母さんや姉妹など「身近な血縁関係で乳がんにかかった人がいる」という場合は、1年に1度受けるようにしましょう。放射線による被ばくの心配がないので、何回でも安心して受けていただけます。

編集部

最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあれば。

石田先生

現在、日本において、乳がん検診の受診率は非常に低く、5割に達していません。欧米諸国では7~8割の女性が受診をしているにもかかわらず、日本でなぜ乳がん検診の受診率が低いのかといえば「マンモグラフィは痛い」「検査が恥ずかしい」という女性が多いからだと思います。しかし、無痛MRI乳がん検診なら、検査着のまま検査を受けることができますし、マンモグラフィのように乳房を挟まれることがないので痛みも感じません。特に、若い女性は乳腺が発達しているので、乳腺の影響を受けにくく的確にがんを見つけやすい無痛MRI乳がん検診はとてもおすすめです。「乳がんは心配だけど、検査を受けたくない」という方や、「これまで乳がん検診を受けたことがない」という方など、多くの方に安心して受けていただきたいと思います。

編集部まとめ

乳がんは、初期のうちに発見して適切に治療すれば、ほぼ完治できるがんです。進行率が上がるほど生存率が下がるため、早期発見のためにもぜひ、乳がん検診を受けましょう。マンモグラフィは痛いから嫌だ」「恥ずかしい」という人にとって、無痛MRI乳がん検診は非常におすすめの選択肢だと思います。

近くの乳腺外科を探す