男子ツアー恒例のウォーターシャワーでびしょ濡れに(撮影:米山聡明)

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<ANAオープン 最終日◇18日◇札幌ゴルフ倶楽部 輪厚コース(北海道)◇7063ヤード・パー72>
待望の2勝目は劇的な幕切れで舞い込んできた。首位と5打差の3位から出た大槻智春はボギーなしの「66」で回り、トータル19アンダーで石川遼とのプレーオフに進んだ。2打目を先に打った石川は3メートルに乗せたが、大槻の2打目はピンの2〜3メートル奥に着弾し、バックスピンで戻ったボールがそのままカップイン。パットを打たずして今季初、3年ぶりのツアー通算2勝目を手に入れた。
ツアー通算21勝と百戦錬磨の池田勇太が首位。5打離されてスタートした大槻は「勝ちにいける試合ではない」というのが正直な気持ち。それでも前半3つ伸ばして池田との差を3打に縮める。後半に入ると池田が連続ボギーで失速し、前の組で回っていた石川遼がバーディラッシュで単独首位に立つなど、大混戦となった。
ゲームの流れが変わる中でも後半に入って14番までに3つのバーディを奪い、「すごく落ち着いてできていた」と振り返る。「一番緊張した」というのが19アンダーで迎えた17番パー5。2打目のレイアップをミスしてグリーンを狙いにくい位置にボールが止まる。3打目もグリーンをとらえきれずに1.5メートルのパーパットが残ったが、冷静に沈めて優勝戦線に踏みとどまった。
2019年の「関西オープン」でツアー初優勝を遂げた大槻は、2020-21年シーズンの総合的に優れた選手を選出する「メルセデス・ベンツトータルポイントランキング」賞を獲得するなど総合力の高い選手。しかし、2勝目にはなかなか手が届いていなかった。初優勝後は2位が7回。今年だけでも2位が3回と、勝てそうで勝てない試合が続いた。
「なんで勝てないのか。何が足りないのか」。自問自答する日々を過ごした。さらに高みを目指すためにプロになって初めてクラブ契約をしないでシーズンを迎える決断もした。「とりあえず毎週試合があるのでやるしかない。その中でつかめるものがあれば」。ひたすら優勝のチャンスを伺って、ようやく2勝目にたどり着いた。
2勝目を手にしても「勝てた要因は…難しいですね。がむしゃらにやっていたのでわからないです。これから考えて答えが出るのか。勝っても悩みます。それぐらい難しいです、ゴルフは」と勝因はこれから自分の中で探していく。ただ優勝を決めた1打は、「手応えのあるショットだった。いいショットだったのでピンに当たらなかったら(スピンバックで)グリーンを出ていたかも」。ボールの転がるラインが一筋違っていたら結果も違っていたかもしれない。こうしたちょっと運も勝つには必要なようだ。
もともと海外志向のある大槻は、今年8月までに優勝できていれば、欧州ツアーのQTに挑戦するはずだった。「現実的に今年は無理なので、行くなら来年受けたいと思います」。そのための条件が複数年シード。優勝すれば翌年から2年のシードをもらえる。「1番は(5年シードをもらえる)メジャーに勝てるのがいいと思っていましたが、後半戦、(年間)2勝、3勝できれば複数年(シード)が長くなると思うのでそれを狙いつつチャレンジしたい」。欧州ツアー挑戦の足掛かりのためにも、さらに優勝の数を増やしたい。(文・小高拓)
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