北欧からの輸入専門家という経験を元に、北欧流ワークライフデザイナーとして活動している芳子ビューエルさん。ビューエルさんが取り入れている北欧の習慣や、60歳以降のリタイアについてお聞きしました。


未使用だけでなく“使ったもの”もプレゼントする北欧の風習

北欧では、古いものでも「価値がある」と思われるものは捨てません。自分でラッピングをして人にプレゼントをする風習も。家具は、布の張り替えなど様々な再生加工をして大切に継承されます。

【写真】ローストビーフをつくるビューエルさんと娘さん

●使わないものは次のオーナーにバトンタッチ

芳子さんがまだこの風習をよく理解していない頃、一緒に働いていた方が引っ越しの際に突然、古い手彫りのフルーツ皿をプレゼントしてくれたそうです。相手は約25年前に一緒に輸入住宅の仕事をしていたアメリカ出身の方でした。北欧についての造詣が深く、出身国は違うものの仲がよかったそうです。

お皿は80年前につくられたそうで、見るからに中古品。実際その方もセミアンティークとして購入したそうです。
「未使用ではなく、“使ったもの”をあげるなんて日本ではなかなか考えられませんよね」と芳子さんは当時を振り返ります。
面食らったものの「芳子に使ってほしい」という熱量に押され受け取りました。今でも、そのフルーツ皿は大事に使っています。

●日本で使わなくなったものをあげるときの注意

その後、芳子さん自身もこの考えを取り入れるようになりました。
「ただし日本で行う場合は、必ず相手にもらってくれるかを確認することが大事」と芳子さんは忠告します。

たとえば最近では、過去に大きな契約がとれたときのバッグを会社の若い子に渡し、とても喜んでもらえました。
渡す前にまず確認したところ、「芳子さんが仕事でうまくいったときに使用したバッグなら、ゲン担ぎになりそうだからぜひほしい」と言ってくれたそうです。

このようにものを捨てない習慣が、北欧にはたくさんあります。
野菜や果物の種は、乾燥させれば来年植えるための種になります。

飽きてしまった家具やカーテンなどは、専門の職人さんに依頼して再生してもらったり、自分で染め直したりすれば新しい気持ちで使えますよね。


●リタイアへの考え方。90歳でも雇用される時代に

また、リタイアに関する考え方も違います。北欧では若いうちに高い税金を納めるため福祉が充実しており、老後への不安が少ないと言われています。一方で多様性を認める社会なので、働きたい人は働き続けることも。

フィンランドでは現在、マンパワーが不足しているために、看護師や医者など特殊技術を持っている65歳以上の方々に仕事に戻りましょうと呼びかけ、戻った人々には特別な税法を適応しています。まだまだアクティブに動ける人にとって、自分自身が役立つ存在であることは重要だと思います。

また今回私はデンマークに来ていますが、みなさんエルダセンと呼ばれるセンターに登録していて、そこでは新しいPCの使い方からホームヘルパーの要請まで、多岐に渡った支援を老人同士でしているそうです。できるだけ長く自分らしい生活を送ることが重要という考えです。

日本では一般的に60歳、65歳でリタイアを考える人が多いです。日本で働く芳子さんも、一時はリタイアに向けた計画を立てようとしたそうです。

しかしそもそも起業家の芳子さんは、生涯現役の道を選択することにしたと言います。
「それにリタイアをするために事業を減らしていくことを考えたら、とても耐えられなかったの」

「リタイアしたのち、毎日ジムに通って幸せに暮らす人ももちろんいます。でも私には合わないだろう、と今も思います。それに、今はマクドナルドが90才の人を雇用する時代よ」と芳子さん。

北欧流の考え方、ぜひ暮らしの参考にしてみてくださいね。