50代にもなると、ものとの向き合い方に変化が生まれるものです。ライフオーガナイザーの田川瑞枝さんが今、とくに意識しているのが「生前整理」です。たくさんのものによって、将来の自分がわずらわされないように、また、家族の負担が増えないように。今、元気なうちに少しずつ進めていることを紹介します。

判断力がしっかりしているうちに生前整理を

いつまでも若い気持ちでいたい。そう願う筆者ですが、確実に年齢を重ねて、体力的にも老化に向かっています。現在の筆者の両親が数十年後の自分の姿だと仮定してみると、今までどおりの暮らしを続けるのが難しいとわかります。

体力面では、手が上がらない、思いものを持ち上げることが困難であるといった変化があります。加えて、判断力があいまいになってくる、自分でしまった場所を思い出せないなど、思考の面でも難しくなってきます。

ですので、判断力がしっかりとしているうちに生前整理はしたいもの。あと回しは禁物だと感じるようになりました。

 

過去を見直し未来に向けた片づけを

もの(=自分の所有物)には、「値段が高い」などといった情報がひもづいています。ときにはそれが、処分を迷わせる原因になることも多いです。

しかし、そうした情報は、あくまでも過去のもの。今の自分にも当てはまるとは限りません。今回説明していく生前整理は、「未来の自分に必要なものだけに厳選していくこと」を基本とした考え方。未来の自分が困らないように、ものの量を減らしていくのです。つまり、ダウンサイジングを行います。

 

バッグを例に説明していきましょう。重い、大きいなどの理由で使用頻度が低くなったバッグは、これからも使う機会が低いとわかります。

 

そこで、生前整理を。軽くて小さいバッグだけを残します。

10年後、20年後の自分は、どういう人物になっていたいのか。「この服を着ている自分」「バッグを持っている自分」をイメージしながら片づけをすると楽しく作業できます。

そして、10年、20歳分年齢を重ねた自分が今の私に「片づけしておいてくれてありがとう」と感謝されるために、今の私がガンバルというのも悪くありません。

生前整理は仕事の引き継ぎと同じ

片づけをする際、自分のものはどこにあるかわかってはいても、それが、家族にしっかり伝わるかは別問題です。だれが見てもわかるように、ものの場所を伝えておくことがポイントです。

それは、仕事の引き継ぎと同じ。書類を例に説明してみましょう。これはなんの書類なのか、必要な書類はどこに入っているのか、これはとっておいた方がいいのか…。こういったことを伝えます

 

筆者は仕事柄、確定申告の書類を数年分とっているので、年度別にファイルしています。「ここにあるよ」と夫に話しておくことで、いざというときに困りません。

遺族にとっていちばんの困りごとひとつは、故人が趣味にしていたものや大事にしていたものの処分です。

整理収納のサポートを仕事にしている筆者。「遺品整理で母親の着物が大量に残っている」「父親が大切にしていた釣りの道具が残っている」など、クライアントから、故人を思い出す品物の処理に迷われているという声をよく聞きます。

 

自分が残したもので、家族を困らせるのは不本意。そう思う方は多いでしょう。そこでエンディングノートの出番。

残された家族が困らないように、今のうちにどうしてほしいのかなどを、ひと言書き添えておくといいですね。

「エンディングノートを書くこと=死ぬ準備」ではありません。エンディングノートは引き継ぎ書と思って取り組むと、すんなり書くことができるのではないでしょうか。

 

家族みんなのものは、処分を家族におまかせ

家の中には、家族と共有しているものも多くあります。それは、家族に処分をおまかせしましょう。

 

ちなみにわが家の場合、子どもに関係したものは、箱に入れて保管しています。

 

また、子どもたち自身の、幼稚園から大学卒業までの証書類、アルバムなども残っています。自分で必要なら持って行く、要らなければ処分してもらう。その判断は本人に任せることにしました。

子どもたちが自分で決めるのですから、筆者が「どうしよう?」と迷う時間を手放せます。

生前整理は、いわゆる日常の片づけと違い、自分のものだけを見直す作業です。死への準備ととらえがちですが、そうではなく、未来の自分へのプレゼントという感じでワクワクした片づけにしましょう。