エンゼルス・大谷翔平(左)とヤンキースのアーロン・ジャッジ【写真:ロイター】

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「彼しかできないことをやっている大谷以外の選手にMVPを与えられる?」

 エンゼルスの大谷翔平投手の“投打二刀流”は今季、ますます冴えを見せている。メジャーリーグで実にベーブ・ルース以来という2桁本塁打&2桁勝利の偉業を達成、ここまで打者として26本塁打、投手として10勝を記録している。

 注目を集めるのは、いずれもメジャートップの46本塁打、100打点を誇るヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手とのリーグMVP争いだ。大谷の2年連続受賞はあるのか。MLB公式サイトは記者の大激論を伝えている。

 アリソン・フーター記者は「彼は投打両方をエリートレベルでこなします。そこで問題になるのが、彼にしかできないことをやっているオオタニ以外の選手に、MVPを本当に与えられるだろうかということです。ジャッジは投球をしないので、不利な状況に置かれるのは妥当なことでしょうか?」と問いかけた。

 これにマイク・ペトリエロ記者は「ジャッジは投球するわけではないので、不利になるのも仕方がないかと思う」と答える。ただこの論法だと、大谷が唯一無二の二刀流で活躍し続ける限り、毎年MVPに輝くことになってしまう。フーター氏は「オオタニが両方でいいプレーをするからといって、毎年MVPを彼に与えても本当にいいものでしょうか?」と疑問を呈している。

 アンソニー・カストロビンス記者は大谷の今季について「昨年ほどの打撃成績ではありませんが、投球は昨年よりも格段に上回っています」と指摘。これにフーター氏は自身がMVP選考で重視することとして「この選手を打線から外したら、そのチームがどうなってしまうか」という視点を挙げ「私はMVPは打者に与えられるべきものだと考えています。ジャッジの方が大谷より価値があると思っています。なぜなら彼は勝てるチームにいるからです」と、活躍の結果もたらされるチームの勝利を重視する姿勢を見せている。

「ジャッジが勝っても、大谷を“ぞんざいに”扱うことにはならない」

 また、セイバーメトリクスが発展した現在では、あらゆるプレーが数値化されている。勝利にどれだけ貢献したかという評価さえ、WARという数値となって示されるが、カストロビンス氏は「私は単にWARの順位を基にMVP投票をするのは好きではありません」と前置きしたうえで、米データ会社ファングラフスの提供するWARが大谷の5.9に対してジャッジは7.3に及ぶと紹介。「僅差なわけではない」とジャッジのリードを主張。サラ・ラングス記者も「その議論で言うと、確かにジャッジが有利」とうなずいている。

 ここでの議論の結論は「MVPはジャッジ」だ。カストロビンス氏は「現時点では、ジャッジがMVPを獲るチャンスは99.99%だと私は思っています。彼は明らかにリーグ最高の打撃能力を持つ選手です。彼が球界最高レベルのチームでプレーしているというのも、いい“おまけ”です」とし、ペトリエロ氏も「ジャッジが勝っても、オオタニをぞんざいに扱うことにはならないでしょう」としている。

 また、今季の投高打低の状況下で本塁打を量産していることも、ジャッジに有利に働くとの見方がある。カストロビンス氏は「リーグ全体の本塁打率が2015年以降では最低という状況の中で、今のジャッジの活躍は素晴らしいものがあります」と指摘した。

 最後にフーター氏が「もしシーズンが今日で終わったら、誰にMVP票を与えますか? 私はジャッジです」と呼びかけると、残る3氏もジャッジと断言。ただペトリエロ氏だけが「10月1週目までに、その状況が変わっている可能性もあると見ています」と状況はまだ変わると予測していた。(Full-Count編集部)