いつ起こるかわからない、両親の介護や死。突然、その両方を体験した約1年間の思いをつづった書籍、『父がひとりで死んでいた』(日経BP刊)が話題となっています。今回は、著者の如月サラさんに体験して感じたことや、これからについてお話しをお伺いしました。

「ひとりで老いて死ぬこと」は、だれにでも起こりうる

 

如月さんが中古で購入したマンション<写真>

親の介護や死を経験したことで、自分自身が「ひとりで老いて死ぬこと」についても考えるようになったというエッセイストの如月サラさん。厚生労働省の調査によると、日本の全世帯のうち約半分に65歳以上の人がおり、そのうち65歳以上のひとり暮らし世帯は約3割にのぼるそう。ひとり暮らしの人は独身者に限らず、家族と離れて暮らす人や、パートナーと死に別れた人も含まれています。だれもが孤独死の可能性を抱えている今、どんな準備や心構えをしておけばよいのでしょうか。

「最近では、生前に契約しておけば、死後の手続きや遺品整理、葬儀の手配をしてくれるNPO法人などもあります。ただし、毎年年会費や手数料がかかるなど、トータルの費用がはっきり明記されていない場合もあるため、しっかりリサーチした上で慎重に検討を。最近では自治体の支援サービスも充実しつつあり、たとえば東京都の外郭団体である東京都防災・建築まちづくりセンターの『あんしん居住制度』では、葬儀の実施や残った家財の片づけを提供しています。そして、資産や保険、クレジットカード、携帯電話…など、自分に関する情報を一覧でまとめておくことも重要。信頼できる人に、その情報のありかを伝えておくことで、残された人になるべく迷惑をかけたくない…という不安を軽減できます」

●認知症の母の介護は、思い残しがないよう精一杯やっている

 

現在は、東京に住みながら母の遠距離介護を続けている如月さんですが、これには、父をひとりで死なせてしまったことへの反省も生かされていると話します。

「父のときは、あんなに早く亡くなると思っていなかったので、きちんと話すこともできなかった。母のときは思い残しがないようにと、離れていてもできることを精一杯やっています。母の部屋にスマートスピーカーを置いて毎日話しかけているのもそのひとつ。アルバムを見られるようになってからは、面会のたびに持って行っています。『このときのこと覚えてる?』『この人は誰?』と聞くと、ちゃんと思い出すんですよね。過去を回想するのは、認知症になった人の心を軽くするための方法としても効果があるそうです」

 

どれだけのことをしても、別れには心残りがあるもの。それでも、親が健在なうちにできる限りコミュニケーションを取ることで、悔いを減らすことはできるのではないでしょうか。

「親子の距離感はそれぞれですが、やっぱり面と向かって感謝の気持ちを伝えるのは照れくさい。私も父に対する後悔はありますが、じゃあ今、生きていたとして、きちんと気持ちを伝えられるか…というと、自信がありません。
それに、延命治療やお金のことなど、子どもからは聞きづらいこともたくさんありますよね。でも、アルバムを見ながら思い出話をしたり、旅行や食事に誘ったり…と、一緒に過ごす時間を増やしていけば、親の側も自然と『これを伝えておかなきゃ』という気持ちになってくれるのではないでしょうか」