カリスマ保育士てぃ先生が教える、子ども同士のトラブルでの親がすべきこと
もしもわが子がお友達に意地悪をしたら? 子ども同士のトラブルに、どこまで親は入ってもいい? 等々、古今東西、育児の悩みは尽きません。今回、ESSEonlineの読者が悩みがちな、子ども同士のトラブルについて、専門家にQ&A形式で答えてもらいました。答えてくれたのは、パパ・ママ世代に大きな反響を呼んでいる『カリスマ保育士てぃ先生の子育て○×図鑑』(ダイヤモンド社刊)の著者である、保育士のてぃ先生です。
子ども同士のトラブル。親はどこまで出ていってもいい? てぃ先生が答えます
まずは、子どもが加害者側になったとき、問題行動を起こしたときの親の姿勢について。強く叱っていいのか、どう叱ると響くのか、どこまでフォローすべきか。てぃ先生の答えは――?
●周囲の目が気になり、必要以上に子どもを叱り飛ばしてしまいます…
Q:「公園でわが子が他のお友達のオモチャを奪って泣かせたとき、ママ友や周囲の視線を気にして、必要以上に厳しく叱り飛ばしてしまいます。これって子どもに悪影響でしょうか?」
てぃ先生の回答
「子ども自身が冷静に親の話を聞ける状態なら叱ってもいいと思いますが、泣いていたり興奮していたりしている状態では、そこで叱っても子どもは受け止めきれないと思います。
ひとまず親御さんが相手のお子さんに謝って、あとで冷静になったときに子どもに叱った方が、響くでしょう。
まわりの目が気になるかもしれませんが、目の前で叱っても次にまた同じことをするよりは、今は親が謝り、あとで子どもが冷静になったときに響く伝え方をして問題行動を減らした方が、結果、周囲の目も気になりにくいのではないでしょうか」(てぃ先生)
ではどのような言い方が“響く”のでしょうか?
「このケースに限らず言えることですが、子どもには、『走っちゃダメ』『お友達のおもちゃを取っちゃダメ』といった“よくない行動”を伝えるよりは、『歩こうね』『お友達のおもちゃが気になるなら“貸して”と言おうね』などと“正しい行動”を伝えた方が本人は行動しやすいものです。大人でもそうですよね?」
●子どもがお友達に意地悪をした!親が100%フォローすべき?
Q:「うちの5歳児が、お友達の家に遊びに行った際にお友達に意地悪をしたと聞きました。うちでは天使のように優しくて素直な子なのに…。信じられない思いですが、ここはやはり相手の親御さんに謝り、そのお子さんに再び仲良くしてもらうよう、親の私が100%フォローすべきでしょうか」(42歳・主婦)
てぃ先生の回答
「まず、子どもの二面性は認めてもいいと思います。子どもは『裏の面があるわけない』と幻想を持つ人もいますが、大人だって、外では真面目できっちりしているけれど家ではだらしない人もいるでしょう。あるいは、家の中では温和だけど外では厳しい上司の顔を見せる人もいます。それと同じように、子どもにも家の中と外の姿が違ってもいいと思います。
ただ、子どもが自分自身の行動によって外で不利益をもたらしたら?
『こうしたことでお友達に嫌われた』『もう家に上がれなくなった』といった事実を子どもに知ってもらってもいいでしょう。むしろ、子ども自身がその事実を痛感すべきだと思います。
仮に、ここで親が相手のお子さんとの仲裁までしてしまうと、子どもはデメリットを痛感しないとわからないこともありますよね」
●加害者側の子どもとうまく距離を取る方法は?
では立場が変わり、わが子が被害者側で、加害者であるお友達とまだなお遊びたがっていたら? そしてそのことを、親御さんが好ましく思わない場合、無理に引き離してもよいのでしょうか。
「子どもにとってはその友達が大好きなんですね。その気持ちは尊重しつつ、他に目を向けることに力を注ぐといいでしょう。具体的には、他にもっとおもしろい遊びを見つけるのです。
特に就学前の子どもに言えることですが、子どもは“お友達”を選んでいるように見えて、“遊び”を選んでいることの方が多い。たとえば公園に行き、砂場で初対面の子どもたちを一緒に水を使って“水路”をつくり始めた。それはその子と遊びたいというより、“水路”づくりが楽しそうだから飛び込んでいくんです。
ここから言えることは、友達を増やそう、別のお友達とかかわらせようと仕向けるよりは、遊びから子どもの人間性が広がるように、新しい公園に連れていくとか、新しい遊びの提案をしてみる方が、有効だということ。もしかしたら子ども本人も、そのお友達と遊びたがっているように見えて、その子とやっている遊び自体が楽しいと感じているだけかもしれません。大人でも、新しい趣味や習い事から人間関係が広がることがありますよね。それと同じです」
●子どもの問題行動、どうしたら止められますか?
Q:「わが家には、上が4歳、下が2歳の姉妹がいます。上の子は度注意しても下の子の髪の毛を引っ張って泣かせます。私の言い方が悪いのでしょうか。子どもに響く伝え方があれば教えてください」(29歳・主婦)
てぃ先生の回答
「長年保育士をしている経験上、年齢にもよりますが、基本的に2歳頃を超えると、やっていいことといけないことの線引きが徐々に引けるようになり、3歳、4歳、5歳と徐々に大きくなるにつれ、線引きがより明確になって守れるようになります。その上で、やってはいけないことわかっていながらやっている場合、伝え方の問題ではなく、そもそも子どもが自分に対して目を集めたい、構ってほしいという動機の方が大きいように思います。
質問者さんのケースのように、何度言っても妹さんの髪の毛を引っ張る場合、やってはいけないとわかった上で、その行為をすると親が自分に構ってくれるという無意識の期待からやっている可能性もあります。つまり、『どうしたら妹の髪の毛を引っ張らないようになるか』ではなく、『なぜ妹の髪の毛を引っ張るのか』という視点で考えてはいかがでしょうか。子どもからしたら、お絵描きした絵をほめてもらうときは、少し離れた場所で洗い物をしながら答えてくれる。だけど妹の髪の毛を引っ張って泣かしたら、洗い物の手を止めて自分のところにすっ飛んでくる。しかも、ほめている時間より叱る時間の方が長いと、いいことをするより悪いことをした方が長く自分に構ってくれる…。そうなると、何回言われても正しい行動をしない方が子どもにとっては正解のルートになるのではないでしょうか。
その場合、悪いところばかり目を向けて叱るより、いいことを言葉にして、ほめる時間を増やした方が、効果は感じられるかもしれません。あるいは、たとえば絵本を1冊読んだら子どもの気持ちが満たされたということもあります」
意外にも、子どもとスキンシップを十分に取った後は、素直に言うことを聞いてくれるという声もよく聞かれます。
このほか、『カリスマ保育士てぃ先生の子育て○×図鑑』(ダイヤモンド社)には先生からのお役立ちアドバイスが満載。子育てに行き詰ったときのお助けになること間違いなしです!