焼き物の里で信楽たぬきと犬の出会い。わが家に幸せを招くもの
ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inu_10kg。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。第48回は、犬と出かけた滋賀県の信楽についてご紹介します。
滋賀県・信楽町へ犬とお出かけ
「犬 これからドライブに行こう」
という私の言葉を合図に犬が飛び跳ねる。どうしてか不思議にも“お出かけ”といったキーワードが犬には伝わる。
父の車に揺られてやってきたのは焼き物の里、滋賀県・信楽町。信楽焼は伝統工芸品にも指定されている。今日は「信楽たぬきを玄関に置きたい」という母の願いを叶えるべく信楽にやってきた。
車で走っていても道沿いに大勢のたぬきが鎮座しているのだ。大たぬき小たぬき…進めども進めどもたぬきたぬき…色んなたぬきと目が合って降りる前からもう楽しい。
母も車窓から外を眺めては「ああいう表情もかわいいなぁ!」と心を踊らせている。
まずは信楽伝統産業会館に到着した。会館内の展示物を見に行った両親と別れ、私と犬は近くをぶらぶらする。6月上旬の曇り空、涼しくてちょうどいい天気。
橋の向こうに信楽駅が見える。流れている川が濁りのない綺麗な水で、たったそれだけでいい町に来たなぁと思った。
信楽駅前に着くと、驚きからたまらず吹き出してしまった。なんですかこの巨大たぬき様。
あっぱれ見事な巨大たぬきという信楽の洗礼を受け、ゲラゲラ笑いながらシャッターを押してしまった。布マスクが付けられているところにも可笑しみがある。
父母と合流しふたたび車に乗ると、続いて陶芸の森に向かった。市街地から高台にある陶芸の森はとても広大で、陶芸専門の美術館や信楽産業展示館という施設などがあり、太陽の広場という芝生広場もあった。
広場の丘は見晴らしがよくて、滋賀の山々を眺望できる。常日頃から山を見ているけれども山の絶景には飽きがこない。空気も綺麗ー!
陶芸の森には銀月舎というカフェがあって、そこでランチセットを頼んだ。天気がいいとレジャーシートを貸し出してくれて、私たちもお借りしたシートをベンチに敷いて、まるでピクニック気分。
信楽焼の羽釜で炊いたおむすび、具沢山のお味噌汁、ぜんぶおいしかった。
私はカネコアヤノさんという音楽家が好きなのだが、このとき偶然にも芝生で銀月舎のおむすびを食べている方がカネコアヤノさんのライブTシャツを着ていらして、なんだか世界の結び目を感じた。
そしてここでも犬はいい感じの棒をくわえて駆け回っていた。滋賀県信楽産のいい感じの棒!
犬の背景にも写っているが広場にはスツールのような陶器の置物が点在している。きっと子どもが色づけしたであろう物も多くカラフルな彩りや自由な発想が眩い。
思わず微笑みがこぼれるような、のどかな時間が流れている。
伝統工芸と自然と生命が渾然一体としていて、私が大切にしたい豊かさがあった。
●信楽陶苑たぬき村へ到着
そして最後に訪れたのが信楽陶苑たぬき村!
当初の目的であった信楽たぬきを求めてワクワクしている母と父が入店していって、私と犬は散歩したり写真撮ったり車で休んだり、和歌山にいるのと変わらないふたりの過ごし方を楽しんだ。
涅槃像みたいに横たわっているたぬきもかわいかったなぁ。
知らぬ間に二人が車に帰ってきていて、たぬきが入っているであろう箱を厳重にトランクに詰める母の横顔は真剣そのものである。「ほっぺたで選びました…」そう母が迎えたたぬきが気になりながら、信楽をあとにした。
昨秋の淡路島へのお出かけもそうだったが、やはり犬とのお出かけを楽しめる現地での滞在時間は3時間ほどになるのだなぁ。犬が疲れてないか気になるし犬の健康より大切なものはないし、まぁ犬もだけど私たち人間側も体力ないのでねちょうどいい。
そうして家に着くと、母を急かしさっそく披露してもらった。
母の決め手にもなったもっちりとした頬とつぶらな瞳がとても愛くるしいたぬきがやってきました。土の素朴さがいいと父と意見が一致したらしい。手前のこれまた縁起物であるフクロウは祖母へのお土産に。
信楽の文化に触れ、自然を犬と堪能できて、心が満たされた旅時間を過ごした。
●inubot回覧板こぼれ話
6月28日(火)18時半を過ぎてもなお明るい夕暮れの河川敷を歩いていた。うだる暑さが続き、朝夕の散歩もサマータイムに切り替わった。
犬がにおいを嗅ぐのを待ちながら白つめ草やクローバーが咲いているところを眺める。なにで見たかも忘れたが水辺に咲くクローバーは四つ葉の確率が高いと知ってから、河原や池のほとりでは四つ葉を探すのが癖になっていた。そうするとおやおやなんだか違和感を覚える一辺が…
「四つ葉やーーー!」
突然歓声を上げる私にびっくりした犬がなんやなんやと寄ってきた。四つ葉のクローバーを発見した! しかも2本! 手前の四つ葉の奥にも四つ葉があった。
「でも2本は欲張りよね1本だけにしよね……」そう犬と話しながら丁重に摘み取った。それから風で折れないよう手の中にそっと閉じ込めて家路に着いた。
この四つ葉は押し花にして犬の写真と一緒に写真立てに入れて玄関に飾った。現在うちの玄関は信楽たぬきと四つ葉のクローバーに守られているのだ、招き犬もいますし。
めでたい写真を添えて、今読んでくれているあなたの夏に幸多からんことを心より祈ります。暑さ厳しき折、くれぐれもお体にお気をつけください。