豪州との3位決定戦で初の先発を飾った中島。気合い十分だったが、結果を残せず無念の途中交代となった。(C)2022 Asian Football Confederation (AFC)

写真拡大 (全2枚)

 U-23アジアカップの開催地ウズベキスタンで過ごした22日間は、中島大嘉にとって特別な時間だった。

 トレードマークは綺麗に刈り込まれた坊主頭。誰からも愛されるキャラクターで、彼の周りは笑顔が絶えない。代表でプレーした日が浅くとも仲間の輪に入り、前向きな姿勢や言葉でチームに明るい空気をもたらした。

 今大会、快活な中島の人柄は試合中の振る舞いにも表われている。3−0で勝利したタジキスタンとのグループステージ(GS)最終戦で、終了間際に大会初ゴールを奪った際に、斉藤光毅(ロンメル)から坊主頭を何度も撫でられていた場面は、中島の人物像を表わすうえで象徴的なシーンだろう。仲間からの祝福が愛されるキャラクターの全てを物語っており、ベンチスタートが続いていたとしても、笑顔の輪には必ず背番号21がいた。

 今大会中、中島はメディアの前でもネガティブな発言を一切せず、前向きな姿勢を貫いてきた。「今大会は得点王を目指している」という言葉はほぼ毎回聞かれ、上だけを向いて貪欲に取り組んできたのは間違いない。

 実際にプレーでもアグレッシブな姿勢を貫き、途中出場でも全力で走り続けてきた。なりふり構わずボールを追い続け、追いつかないパスに対してもスライディングを厭わない。マイボールにできずとも、即座に切り替えて再び全力疾走を始める姿は印象的だった。
 
 攻撃でも貪欲さは変わらない。ゴール前にボールが上がれば、188センチの高さと跳躍力を生かした高打点のヘッドで相手に競り勝つ。圧倒的な高さに記者席からも思わず「おー!」という声が上がるシーンは何度もあった。プレーひとつで人を惹きつけられるのも魅力だ。

 スケールの大きさやその人柄を見れば、期待せずにはいられない。だからこそ、オーストラリアとの3位決定戦で初めて巡ってきた先発出場の機会では、誰もが中島の活躍を待ち望んでいたはずで、自身もチャンスを生かそうとモチベーションを高めていた。

 しかし――。結果は57分に途中交代。得点は挙げられず、それ以外のプレーでも存在感を示せなかった。得意の空中戦でもオーストラリアのDFに競り負け、何度かあったチャンスもタイミングが合わず、シュートに持ち込ませてもらえない。

 ピッチを去る時には、中島の表情から笑顔が消えていた。交代後、ベンチに座った中島は顔を下げ、自然と涙が込み上げてきたという。他の交代選手と同じく、試合途中で一度ロッカールームに引き上げる際も、小久保玲央ブライアンに付き添われ、心の整理が付かないままタイムアップを迎えた。試合は3−0で日本が勝利した。
 
 初めて背負う日の丸に胸を躍らせ、意気揚々とウズベキスタンの地に乗り込んできた男にとって、これほど悔しい経験はない。試合後の記念写真にもひとりだけ笑顔がなく、ミックスゾーンでもいつもの中島ではなかった。こんな表情の中島を見たのは、高校3年次、高校サッカー選手権の長崎県予選準決勝で敗れた試合以来で、この事実からも悔しさがうかがえる。

「俺はここに何しにきたんやろう」

 試合が終わっても心の整理がつかず、自責の念を抱く。何度も「悔しい」と話し、力不足を噛みしめるように言葉を紡いだ。

 今大会を振り返ってみれば、初めての代表で気負い過ぎたところもあったのだろう。

「チャンスやクロスのシーンでいつもなら待てているのに、気持ちが前に出過ぎて冷静になれていない場面も多かった」

 3位決定戦に限らず、今大会はゴールを決めたいという想いが強すぎるゆえに、自分を見失う場面は多かった。GSのタジキスタン戦。58分に途中出場し、数分後にはゴール前に走り込んでネットを揺らしたが、VARのオンフィールドレビューで判定が覆る。パスを待ち切れず、最終ラインより前で触ってしまったため、オフサイドとなってゴールが取り消された。そうしたプレーからも、気持ちが空回りしていたことがうかがえる。