東大卒業の落語家・春風亭昇吉さんが、住まい選びで優先することは?
東大出身者初の落語家で、気象予報士や経済番組の司会者などで、幅広く活躍中の春風亭昇吉さん。子どもの頃から今まで、どんな家に住んできたのかインタビューしました。勉強しているときの環境や、東大出身者ならではの気になる点も伺います。
中学1年生の試験の結果で、勉強のスイッチがオンに
大学卒業後、春風亭昇太に弟子入りし、東大出身者初の落語家となった春風亭昇吉さん。落語家としてはもちろん、気象予報士や経済番組の司会者などとして、幅広く活躍中です。
そんな多才な昇吉さんが生まれ育ったのは岡山県。喫茶店を改装した一軒家で育ち、小さい頃から自分専用の子ども部屋があったそう。
遊ぶのはもっぱらその子ども部屋。3人兄弟の長男で、2人の弟とは6歳差、12歳差と年齢が離れています。
「ひとりっ子みたいなもんですよね。お山の大将。弟たちとも年が離れているから一緒に遊べないし、ひとりで遊んでいることが多かったですね」
小学生まではあまり勉強が好きではなく、お笑い番組に夢中になっていたという昇吉さん。ですが、中学生になって大きな転機が訪れます。
「中学生になって初めての定期テストで順位が張り出されたんですよ。田舎の普通の公立中学ですが、たしか130人中11番目という結果。がんばったら1番が取れるんじゃないかって思って、通信教育を始めました」
すると、みるみると成績が上がり、その後はほぼ1番をキープ。塾はほとんど利用せず、基本的に自分の部屋で勉強していたそう。
「高校生になってからは国語だけは全国1番レベルでしたね。国語ばっかり勉強していました。その頃から勉強するのが好きですね」
その後、大学入学を機に上京。大学の寮で4年間を過ごしました。
「完全個室のトイレ&シャワーつきでしたが、部屋にはベッドと小さい勉強机のみ。半畳くらいのスペースにトイレとシャワーが設置されていました(笑)」
今も昔も家選びで、いちばん優先するのはとにかく立地
春風亭昇太に入門後、不動産店で探した下宿でのひとり暮らしをスタート。大きなお屋敷で、外にトイレと風呂があるという変わった家だったそう。
「風呂に入る時間がほかの人と重なると、全然入れない。冬はそもそも風呂に行くまでが寒いから、体が芯まで冷えちゃって。お金はなかったけど自転車に乗って銭湯に行っていましたね」
当時、家選びで重要視したのは、師匠の自宅や稽古場に近いことと家賃の安さ。
「師匠に『おい、今いるか?』って言われたらすぐ行ける距離に住むことが当たり前でした。それを満たしたうえで、とにかく安いところをお願いしますって不動産屋さんに頼んで探してもらいましたね」
その後も引っ越しのたびに優先したのは、寄席が行われる演芸場やレギュラー番組を担当するテレビ局に移動する際、とにかく便利な立地であるということ。
「自宅の内装がどうあるべきか、それがどこに立地するか、どういう時間を過ごすかは人生そのもの。空間と時間はリンクしているから、空間プロデュース=時間プロデュース。できるだけ移動にムダな時間を生じさせない立地というのが、僕の家選びには不可欠な要素です」
念願だった東京の一戸建てに、暮らしてみてわかったこと
上京してから、かれこれ10回程度の引っ越しを経験してきた昇吉さん。
「師匠にどんどん広い家に住めって言われてたんですよ。落語家としてラクをしないよう自分にプレッシャーをかける意味で、家賃を高くしていけと」
また、いつかは東京で広い一軒家に住んでみたいと思っていたそう。そこで、人生初の一戸建てを借りてみることに。「3階建てで部屋数も多い広い家でした。でも実際に住んでみたら、結局一部屋しか使わない(笑)。広い家は冬が寒いし、自分にはまったく必要ないってことがつくづくわかりました」。
また、地下室がある家に住むことが夢だった昇吉さん。地下室でスクリーンに映画を投影して鑑賞したり、落語の稽古をしたり、本を読んだり。
そんな希望を胸に地下室のある家を借りましたが…。「防音機能もあったので思う存分落語の稽古もできるし秘密基地みたいでおもしろいって思っていたんですが、上り下りするのが面倒になっちゃって。地下室に下りるよりも、その上の普通の部屋で稽古したり勉強したりしたほうがいいことがわかったんです」。
結局どちらの家も契約更新を迎えず、引っ越ししたそうです。
自分にとって住みやすいのは、コンパクトでミニマルな部屋
念願だった一戸建て、地下室のある家に住んでみて気づいたのは、昇吉さんにとって重要なのは広さではなく暮らしやすさだということ。「ひとりで住むには8畳くらいあればいい。そこでごはんを食べる、寝る、勉強する。そのひと部屋にトイレと風呂があればいい」。
現在の住まいは立地も希望どおりで、部屋の広さもひとり暮らしにはちょうどいい1DK。
ミニマルな暮らしをするうえで、実践しているのが「1in2out」のルール。たとえば、新しい服を1着買うなら、持っている服を2着処分するという昇吉さん独自のルールで、これは大好きなお酒のストックにも適用中。
「ウイスキーを1本買おうと思うじゃないですか。するとお酒の収納スペースがいっぱいになってしまう。だから2本飲み終わってから、新しく1本買う。人からお酒をいただくこともあるので減りすぎることはないです」
人生を幸せに過ごすには、部屋はどうあるべきか、時間をどう使うべきか、なにを優先すべきか、と考えた結果たどり着いたルールです。
ミニマルな暮らしは時間もムダにしないそう。
「着物はここ、タオルはここ、洗濯物はここ、と全部頭の中で把握できて手が届く範囲で整理しています。だからあれはどこにあったっけ? なんてことも起きないわけです。何度も引っ越しを経験してみて、今の暮らしがいちばん自分に合っていますね」
自分が心地よく過ごせる住まいを満喫中の昇吉さんに、将来どんな暮らしをしてみたいか聞いてみました。
「昔、色紙にサインするとき、柴犬のイラストを描いていたんですけど、柴犬が好きなんです。年を重ねて落語界を引退して悠々自適な余生を過ごすときになったら、岡山に戻って柴犬と暮らしたいかな」