未成年の飲酒率「減少傾向」でも相次ぐ事故 アルコールが未成年の体に及ぼす悪影響とは【3月30日「未成年者飲酒禁止法」制定日】 - ふかぼりメメント
※この記事は2021年04月01日にBLOGOSで公開されたものです
1922年3月30日、未成年者飲酒禁止法が制定されました。この法律は、アルコールによる影響から成長途上にある未成年者の心身の健康を守るためにつくられた法律です。
未成年の喫煙・飲酒状況に関する実態調査研究によれば、中高生の飲酒率は年々減りつつあります。しかし、2012年度調査では、中学生で約30%、高校生で約50%が何らかの形で飲酒をした経験があることが明らかになっています(※)。
社会人の大人からすると、お酒はコミュニケーションを円滑にするためのアイテムのひとつと考える人もいるかもしれません。しかし、体が未熟な未成年のうちから飲酒をすると、心身にさまざまな影響があることも忘れてはいけません。
※平成24年度厚生労働科学研究費補助金循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業「未成年の喫煙・飲酒状況に関する実態調査研究」
あとを絶たない未成年飲酒による事故
中高生の飲酒率は減少傾向にあるといっても、飲酒による若者の事故はあとを絶ちません。また、東京消防庁管内では毎年、急性アルコール中毒で1万人以上が救急車で病院に運ばれ、全世代を含む推移でみても増加傾向にあります。
令和元年度は、急性アルコール中毒で病院に運ばれた18212人中、20歳未満が649人いました(※)。ここ1年でも、中学生が塾の自習室で酒盛りをしてそのうち1人が緊急搬送、大学生が合宿中に飲酒運転をし交通事故を起こすなど未成年飲酒に関する報道が散見されます。
特に学生などの未成年者の間では、自分がどれだけ飲めるかがわからないのに無茶な飲み方をしたり、酔いつぶれる者が出ることを前提とした飲み会が開かれていることも珍しくありません。
近頃はコロナ禍ということもあり、大人数での会食も控えるよう政府や自治体から要請が出ているので、大々的な歓送迎会やコンパなどは控えられています。その代わり、個人宅で少人数ならいいだろうという考えのもと、人目につかない場所で未成年飲酒が発生している可能性も考えられます。
卒業、入学シーズンとなり新たな人間関係が生まれるいまの時期は、周りの大人がいつも以上に未成年者にお酒を出さない・飲ませないことを徹底する必要があるでしょう。
※東京消防庁「他人事ではない『急性アルコール中毒』~正しいお酒の飲み方で、楽しい時間を~」
「お酒は20歳になってから」と定められている理由
ところで、未成年者による飲酒はなぜいけないのでしょうか。
国税庁が発行する資料「20歳未満の者がお酒を飲んではいけない5つの理由(令和3年2月)」では、脳の機能低下、肝臓など臓器に障害が起こる可能性、性ホルモン分泌異常、アルコール依存症の懸念、法的根拠が理由として記されています。
未成年者をはじめとする若年層が飲酒をすると、脳が萎縮することで記憶力や判断力、思考力、意欲といった機能が低下しやすく、うつ状態になったりする可能性があるといいいます。
また、未成年はアルコールを分解する酵素の働きが不十分なため、分解しきれなかったアルコール成分が体内のさまざまな臓器にダメージを与えることにもつながります。さらに、性ホルモンの分泌に異常が起きて、男性の場合はED(勃起障害)、女性の場合は月経不順、無月経になる可能性も指摘されています。他にも、未成年のうちから飲酒を繰り返すことでアルコール依存症になりやすいとも言われています。
このように、未成年のアルコール摂取にはさまざまな悪影響が懸念されており、若者の将来を奪う事態につながる可能性も考えられます。
未成年者飲酒禁止法では、大人は未成年飲酒を止める責任があると定められています。祝いの席であっても未成年に飲酒を勧めないといった意識を持つ他、勧められた際の断り方、飲酒の危険性について教えることができるよう、周りの大人も未成年飲酒について理解し配慮することが大切です。(文・大澤 美恵)