大資本の撤退、キャバ嬢の出戻り、新規参入…様変わりする歌舞伎町の今 年末は大荒れか - 國友公司
※この記事は2020年11月20日にBLOGOSで公開されたものです
新宿・歌舞伎町の人出が戻ってきた。緊急事態宣言解除以降も、「夜の街」関連の報道の影響を受けながら増減を繰り返していたが、10月から11月に入りだいぶ安定してきた印象だ。しかし、人が増え始めたとはいえこの約半年間の空白によるダメージは大きく、様々な変化が起きている。歌舞伎町は今、違う街へと変わろうとしている。
歌舞伎町のランドマークが次々に閉店
歌舞伎町は、風林会館を起点に区役所通りと交差する「花道通り」で、1丁目と2丁目と大きく2つに分かれている。新宿駅東口を出て靖国通りを渡り、「さくら通り」や「歌舞伎町一番街」のアーケードをくぐった先にある華やかなエリアが1丁目。ここにはチェーンの飲食店が多く集まり、一般の方たちがよくイメージする歌舞伎町だ。
1丁目を抜け、「花道通り」に突き当たる。そこを渡ると、ホストクラブやラブホテル、アフター用のバーなどがひしめく2丁目エリアだ。コロナ禍で一般客が歌舞伎町に立ち寄らず1丁目が閑散としていた時期も、このエリアはホストと客の風俗嬢たちでにぎわっていた。
テナントの解約予告は6カ月前にしなければならないというケースが多いが、6カ月前というと、ちょうど緊急事態宣言が出された5月。1丁目の各店舗は休業に追い込まれていた時期だ。夏あたりから比較的小規模の飲食店はポツポツと潰れ始めていたが、ここにきて大型店舗の閉店が相次いでいる。
2010年4月にオープンしたヤマダ電機「LABI新宿東口館」が10月4日に閉店。閉店の理由については「新宿エリア内の店舗配置の自社競合関係から店舗効率化を図るため」と説明されている。オープン当時に開催されたセレモニーにおいて、ヤマダ電機の代表取締役社長が「新宿の新しいランドマークとして、街作りに貢献できればと思います」とコメントしていたように、このテナントに入る施設次第で街の顔は大きく変わりそうだ。
また、1985年にオープンした「新宿プレイランドカーニバル」が11月29日をもって閉店。その地下エリアにある「メンズサウナこり・こり」も同24日で閉店。このテナントがあるシネシティ広場（旧・コマ劇前広場）の前には、現在東急レクリエーションが複合娯楽施設「新宿TOKYU MILANO」を建設中だ。1丁目の中心ともいえる「TOHOシネマズ新宿」横のこのエリアは様変わりするだろう。
「自粛ももういいんじゃない？」女の子の出戻り目立つ
歌舞伎町をはじめとする「夜の街」は、感染の震源地として今もなお批判の対象となっている。キャバクラやホストクラブへの休業要請、さらには立ち入り検査など、目の敵にされ、休業に追い込まれる店も少なくなかった。都内にある交際クラブで運営側として働く女性はこう話す。
コロナ禍でキャバクラ、クラブ、ラウンジなどの経営はかなり厳しいものとなり、そういった業種からパパ活や交際クラブへと女の子が流れる現象がありました。その影響で、私の業界ではもともと供給過多だった状態にさらに拍車がかかり、価格崩壊が起きてしまいました。
世間の目などもあり、企業に勤めるサラリーマン層の客が著しく減り、キャバクラ、クラブ、ラウンジは休業状態に。それにともない、従業員の女の子たちも業界を離れざるをえなかった。しかし、今になって店側が女の子たちを呼び戻す現象が起きている。繁華街を中心に、キャバクラ、クラブ、ラウンジに女性を紹介しているスカウトマンが教えてくれた。
10月くらいからかな。店側（主にキャバクラ、クラブ、ラウンジ）から女の子の大量発注がスゲー増えてきてる。コロナで女の子の出勤を大幅に減らしたり、そもそも店を閉じたりしているところも多かったから、一時的に女の子の数が全体的に減ったんだよね。でも『自粛ももういいんじゃない？』みたいな雰囲気になってきて夜の街も活気が戻ってきたでしょ。休業要請も時短営業要請も解除されているしね。
年末シーズンの稼ぎ時に向け、店は客が増えると見越して、急ピッチで準備しているという。サラリーマンたちのボーナスカットも予想されるが、それがどう響くのだろうか。
キャッチ業界への新規参入で街が荒れる？
NHKが発表している「街の人出は？ 全国18地点グラフ」を参照すると、11月初旬現在の歌舞伎町の人出は、2月（コロナが本格化する前）から約3割減、緊急事態宣言下の5月に比べると約8倍である。「だいぶ戻ってきたのでは？」とも思うが、風林会館前で長年キャッチをしている男性が厳しい実情を教えてくれた。
人出は戻ってきたけどよ、店には入らずフラフラしている奴ばっかりなんだ。要は金を持っている層が歌舞伎町に来なくなっちまった。俺はもうこの歳（60代と思われる）だからあまり若い子には声かけないからよ、収入はガクッと減っちまったな。若いキャッチたちは稼ぎだしている子もいると思うぜ。
一括りにキャッチといっても、この男性のように声をかける客層が決まっているキャッチもいる。実力の差以上に、稼げるキャッチと稼げないキャッチとで二極化しているようだ。さらに無料案内所で働く男性はこう付け加える。
キャッチ、スカウトなど夜の街で働く男性たちが増えているようです。コロナ禍で職を失ったり、収入が減ったりした人たちが流れてきています。歌舞伎町にある無料案内所もいくつか潰れたのですが、すぐにキャッチ業を営む会社がその空きテナントに無料案内所を開店しています。
キャッチは路上で歩行者に声をかけながら飲食店などに連れて行く行為（条例違反であり、ぼったくりの温床になっている）。無料案内所は自分の店舗（案内所）の中において、店の紹介をするので条例違反には当たらず、合法である。
とりあえず客を案内所に連れて行き、そこで提携している飲食店さらには自分のグループで経営している店などに紹介する手法を取っています。数年前から見られる手法です。条例違反にはなりませんし、客としても“路上のキャッチ”ではないので安心してしまうみたいですね。（同、無料案内所で働く男性）
こういった現状について、前出のスカウトマンは「街が荒れる」と危惧しているようだ。
キャッチ、スカウト業界に新規参入が増えると、いろいろと問題が起こりそうだよね。僕らの業界にはいくつものルールがあるから、それを熟知していない人間が入ってきているということは必ずトラブルが生まれる。歩行者の警戒心も強くなって、警察の目もさらに厳しくなるだろうね。よくない傾向だなー。
6月のはじめに話題となった「歌舞伎町スカウト狩り」も、コロナ禍によってスカウト会社同士の競争が激化し、有力なスカウトマンの引き抜き行為が問題となった末に起きた事件だった。近頃は、元タレントの坂口杏里氏が歌舞伎町で騒ぎまくっているようだが、歌舞伎町は例年以上に混沌とした年末になりそうだ。
