※この記事は2019年03月25日にBLOGOSで公開されたものです

日本年金機構は今月25日、Twitter上で差別的な発言をしたとして世田谷事務所所長の男性を事実上の更迭処分としたことを明らかにした。男性からこれまで複数回にわたり差別的な書き込みを受けた香山リカ氏が胸中を語った。【取材:石川奈津美】

日本年金機構によると、24日早朝、機構のリスク管理を担当する部署に男性から「Twitterで不適切な発信をした」と報告があった。男性の投稿内容には特定の国に対するヘイトや人種差別的な発言が含まれていたという。

機構は翌日25日午前、男性を人事部付とする人事異動を発令。事実上の更迭とした。今後、男性に具体的な書き込み内容の確認などを行うという。当該のツイートは現在すでに削除されており、男性はTwitter上でも謝罪した。

精神科医の香山リカ氏は、半年~1年ほど前から複数回にわたり男性からTwitter上で差別的な書き込みを受けていたという。

香山氏は「彼からは『在日のお前の名前は○○だ』と事実とは異なる名前で返信されたり、ヘイトデモに抗議している私の写真を差別発言とともに貼り付けられたりしていました」

「悲しいことですが、それ自体はある種、ネットでいま溢れているような罵詈雑言なのであまり気に留めていませんでした。ただ、今回は年金機構という権限を持ち、個人情報を保管する立場の責任者がこうした考えを持っていたことが明らかになり、衝撃を受けました」と話す。

精神科医として、これまで数多くの患者の障害年金申請にも携わってきた香山氏。「現在千代田区と新宿区の医療機関で仕事をしています。そこにはもちろん、世田谷区在住の患者さんたちもいらっしゃいますし、障害年金の診断書を作成することもあります。彼は度々、私の医師名(本名)をツイートしていました。今となってみれば『知っているぞ』というメッセージだったのではないかと、つい思ってしまいます」

「彼が診断書で私の名前を見たときに、『こいつだ』と思っただけで済んだのか、患者さんは不当な目にあわなかったのかという疑問も、ただの憶測ですが考えずにはいられません。また、世田谷区にはたくさん在日のドクターもいます。彼らが診断書を作成することもあるでしょうから、それを本当に平等に扱えていたのかと思ってしまいます」と話す。

今後、香山氏は他の医師らと連携し、患者のこれまでの診断書の中で申請の不受理や継続の不自然な打ち切りなど疑問が残るような判断がなかったかを確認し、不明な点があった場合は機構に問い合わせを行うという。

今回、年金機構は事態の発覚から1日で事務所長の更迭処分という迅速な対応をみせた。

香山氏は、「機構が『現在、事実関係を調査中』ではなく、まず更迭処分としたことは、『ヘイトは問題だ』という認識の表れだと思いますし、非常に評価しています。ヘイトという言葉の認知の広がりとともに、ヘイト発言をすると今回のように社会的制裁を受けたり、ひいては日本そのものの評判を落としかねないということがもっと世の中に浸透する社会になっていってほしいと思います」と話した。