【ネタバレ】マーベルドラマシリーズと『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の繋がり

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ゴールデンウィーク真っただ中に公開となったマーベル映画最新作『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』。フェーズ4の映画シリーズにおいて、物語が大きく動き始めた作品と言えるのではないだろうか。この記事では本作の観点からマーベルドラマシリーズを追ってみる。(※本記事は『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の他、ドラマシリーズのネタバレを含むのでご注意ください)

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』とは?

トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』3部作で監督を務めたサム・ライミがメガホンをとる『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』は、2016年公開の『ドクター・ストレンジ』で初登場を飾り、その後、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)、そして記憶に新しい『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で活躍してきた最強の魔術師ドクター・ストレンジの単独作品2作目となる。

医師時代の同僚で、元恋人のクリスティーン(レイチェル・マクアダムス)の結婚式に参列していたドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)が、異次元からやってきた巨大な怪物ガルガントスと対峙する中、多次元宇宙=マルチバースを移動できる特別な力を持った少女アメリカ・チャベス(ソーチー・ゴメス)を救い、彼女を狙う未知の強敵に立ち向かうために、ワンダ・マキシモフ(エリザベス・オルセン)へと協力を仰ぐのだった…。

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』からみるマーベルドラマ

『ドクター・ストレンジ/MoM』を読み解く上で、カギを握るのはワンダ・マキシモフだ。2021年にディズニープラスオリジナルドラマとして配信された『ワンダヴィジョン』が、とても重要になってくる。

■『ワンダヴィジョン』

『ドクター・ストレンジ/MoM』を観ていて、なぜワンダは強力な“カオス・マジック”を操るスカーレット・ウィッチとなってしまったのか、疑問に思ったファンも多いことだろう。

『ワンダヴィジョン』は、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)フェーズ4の幕開けを飾り、『ドクター・ストレンジ/MoM』の前日譚的な役割を果たし、『アベンジャーズ/エンドゲーム』後にワンダがどのような生活を送っていたのかが描かれている。『ドクター・ストレンジ/MoM』でも語られたように、ワンダはニュージャージー州郊外のウェストビューという街である大きな“事件”を起こしている。

『ワンダヴィジョン』の物語は、その町で幸せな新婚生活を送るワンダとヴィジョン(ポール・ベタニー)の姿が映し出される。まるで往年の大ヒットシットコムを模した心温まる映像が流れる中で、時折織り交ぜられるノイズがかった違和感…。そもそも、サノスの手により破壊されてしまったはずのヴィジョンがなぜ生きているのか? 視聴者はそれらの違和感や疑問を感じながら物語の結末へと向かっていく。

この作品でキーパーソンとなるのが、ワンダのおせっかいな隣人として登場するアグネス。彼女の正体はかつて仲間を殺し、力を吸収したアガサ・ハークネスという魔女だった。アガサは、ワンダを「無から有を創造する力を持つ」スカーレット・ウィッチだと告げる。

スカーレット・ウィッチは、至高の魔術師をも凌駕するパワーを秘めた伝説の魔女だ。ワンダはヴィジョンを失った悲しみから街全体を魔法で包み込み、住民たちを登場人物にしたシットコムのような世界を作り上げるとともに、双子の息子ビリーとトミーも作り出してしまったのだ。この力こそが『ドクター・ストレンジ/MoM』でも言及された“カオス・マジック”。そして、アガサは禁断の書と呼ばれる“ダークホールド”を所持しており、スカーレット・ウィッチつまりはワンダが世界を滅ぼす運命であることを明らかにした。

その後、ワンダとアガサは街全体をも巻き込んだ壮絶なバトルを繰り広げ、ワンダはアガサを打ち砕くことに成功。だが、彼女は人里離れた小屋の中で、たった一人、ダークホールドを研究。『ワンダヴィジョン』はそこで幕を閉じた。

『ドクター・ストレンジ/MoM』劇中に登場する“カオス・マジック”や“ダークホールド”とは一体何なのか? その出所は?といった疑問を解消してくれる作品であるだけにとどまらず、ワンダのことをMCUの世界で“スカーレット・ウィッチ”と初めて呼称し、“至高の魔術師”というワードも飛び交うことから、すでに『ドクター・ストレンジ/MoM』への布石を打っていたと言えるだろう。

また『ワンダヴィジョン』は、ワンダが幼少期に愛したアメリカのシットコムのような映像が繰り広げられ、1話ごとに時代背景が10年経過する。そのため、パロディめいた映像からシットコムの歴史を体感することもでき、そういった点でも楽しみは多い。

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■『ロキ』

続いて、『ドクター・ストレンジ/MoM』のタイトルにもある“マルチバース”というワードについて。MCUにおいて初めてマルチバースについて言及されたのは、奇しくも映画『ドクター・ストレンジ』1作目だった。その時は、至高の魔術師エンシェント・ワンの口から発せられた一言として片づけられたが、より本格的にマルチバースという要素がMCUに加えられた作品が、ドラマシリーズ『ロキ』だ。

そもそも“マルチバース”とは、無数の世界が重なり合って存在する多次元宇宙のこと。重大な選択によって枝分かれした平行世界が存在し、そこにはもう一人の“自分”が存在する。これをMCUの世界では“変異体”と呼ぶ。

『ロキ』の主人公は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』で展開された“タイム泥棒作戦”の影響で生み出された“変異体”のロキ。MCUの世界には“神聖時間軸”というものがあり、それはTVAと呼ばれる組織によって厳重に管理されてきた。だからこそ、これまでマルチバースというものが表面化しなかったわけだが、同作でロキともう一人の変異体であるシルヴィによってある大きな出来事が起きたことから、マルチバース化が進行してしまったのだ。劇中には様々なパターンのロキが登場しており、ロキというイメージの概念を崩されること請け合いである。

このマルチバース化によって、異なる別次元の世界を描くことができるようになったマーベル・スタジオは、『ホワット・イフ…』というアニメシリーズを製作。

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■『ホワット・イフ…?』

同作はMCU内で起きた出来事が、“もしも”別の選択によって成り立っていたら?ということをテーマに物語が展開される。

『ドクター・ストレンジ/MoM』に登場したキャプテン・カーターは、同作の第1話「もしも…キャプテン・カーターがファースト・アベンジャーだったら?」というエピソードが元ネタになっている。『ドクター・ストレンジ/MoM』で印象的だった邪悪な道を歩んでしまったシニスター・ストレンジもまた『ホワット・イフ…?』に登場するドクター・ストレンジを彷彿させる。

その他にも『ドクター・ストレンジ/MoM』には、『X-MEN』からパトリック・スチュワートがチャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX役で、『キャプテン・マーベル』のラシャーナ・リンチがマリア・ランボー/キャプテン・マーベルに扮する他、『ファンタスティック・フォー』の人気キャラクター、リード・リチャーズ/Mr.ファンタスティック役をジョン・クラシンスキーが演じている。(※原作ではワンダの父親はマグニートーという設定。ワンダもミュータントだからこそ、ミュータントを保護しているプロフェッサーXと対峙するシーンは衝撃だ)

そして、1シーズンで打ち切りとなってしまったが、2017年に製作された『インヒューマンズ』よりアンソン・マウント演じるブラック・ボルトが登場していたりと、非常にマーベルドラマと深い関わりを見せている。

なお、別世界に飛び込んでしまったドクター・ストレンジとアメリカ・チャベスが出会うアース838のピザボール屋の店主を演じるのは、サム・ライミ版『スパイダーマン』3作品にカメオ出演していたブルース・キャンベル。サム・ライミとは中学生時代からの幼馴染だという。

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マーベルドラマのこれまでとこれから

そもそもMCUのドラマシリーズと言えば、2013年の『エージェント・オブ・シールド』からスタートした。S.H.I.E.L.D.の捜査官であるフィル・コールソンを主人公に、映画と世界観を共有した革新的なストーリーが展開された。

そこから『エージェント・カーター』、MCUではないが『ランナウェイズ』、『クローク&ダガー』、『ヘルストローム』といったドラマシリーズが誕生。ちなみに前出の『エージェント・オブ・シールド』と『ランナウェイズ』でも『ドクター・ストレンジ/MoM』に登場した“ダークホールド”について言及されている。

Netflixのマーベルドラマシリーズ

さらに、マーベルドラマを語る上で欠かせない作品群がある。それはNetflixで配信されていたドラマシリーズだ。

2015年の『Marvel デアデビル』からスタートしたNetflixによるシリーズは、『アベンジャーズ』(2012)における“ニューヨーク決戦”後の世界を舞台としており、ジェシカ・ジョーンズやルーク・ケイジ、アイアン・フィストといったヒーローたちが一堂に会する『Marvel ディフェンダーズ』という作品も製作された。

『Marvel デアデビル』の主人公デアデビルこと盲目の弁護士マット・マードックは映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に登場し、ファンを驚かせた。また、デアデビルの宿敵だったキングピンことウィルソン・フィスクを演じたヴィンセント・ドノフリオが、ドラマシリーズ『ホークアイ』に出演。さらに、先日『Marvel デアデビル』が新たにディズニープラスでシリーズ化の企画が進行中であることが伝えられ、今後のMCU作品に別のキャラクターが登場する可能性も十分にある。

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マーベルスタジオが製作したドラマシリーズを順番に見ていこう

そして、2021年からはディズニープラスオリジナルという形で、マーベルドラマが一本化。前述の『ワンダヴィジョン』や『ロキ』に加え、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』、『ホークアイ』、最近では『ムーンナイト』が配信。

6月8日(水)からは『ミズ・マーベル』がスタート。同作で主人公ミズ・マーベルことカマラ・カーンを演じるイマン・ヴェラーニは映画『キャプテン・マーベル』の第2弾『ザ・マーベルズ』に出演することも発表されている。『ザ・マーベルズ』には、『ワンダヴィジョン』でモニカ・ランボーを演じたテヨナ・パリスも登場。2022年内では、すでに『シー・ハルク:ザ・アトーニー』の配信開始日も決定済み。

MCUフェーズ4において重要な役割を果たすであろうキャラクターたちが続々と登場する。映画のみならずドラマシリーズも欠かせない。映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』は大ヒット公開中。マーベルドラマシリーズはDisney+(ディズニープラス)にて配信中。

(文/zash)