閉経の前後5年を「更年期」といい、さまざまな不調が起こりやすい時期です。隙間時間でできるセルフケアを知っておくと心強いもの。そこで、更年期に詳しい産婦人科医の高尾美穂先生に、毎日できるセルフケアとして骨盤底筋を鍛える「ながらエクササイズ」を教わりました。

「6割が不調」を感じる更年期に取り入れたいセルフケア

 

女性の健康と美の守り神である女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減ってくるのが、更年期。

「だれもが更年期になるとつらい症状を抱えるわけではありません。じつは約4割の人は目立った症状もなく過ごせます。しかし、約3割の人が病院での治療を必要とするほどつらい症状がある“更年期障害”に。そして残り3割の人は、病院で治療をするほどではないけれどなにかしら心身の不調を訴えるようになります」(高尾美穂先生)

●更年期に多い「尿漏れ」は、骨盤底筋群の衰えにあり!

更年期症状は、ホットフラッシュやイライラ、落ち込みなど多岐にわたります。なかでも人知れず悩む症状が「尿漏れ」です。これは「骨盤底筋」の衰えが原因で起こります。

骨盤底筋とは、骨盤の下にハンモックのように広がる筋肉のこと。いくつかの筋肉の集合体のため「骨盤底筋群」とも呼ばれます。骨盤底筋は、骨盤内に収まる子宮を始め、膀胱や直腸などのさまざまな内臓を下支えするほかに、もうひとつ大切な役割があります。

それが「排泄のコントロール」です。骨盤底筋が正しく機能することで、尿道をキュッと締めておくことができるのですが、更年期になると加齢に加え、女性ホルモンの減少により筋肉量が低下。その結果、骨盤底筋が弱り、尿漏れなどのトラブルが起こりやすくなります。

とりわけ出産経験のある人は、出産の際に骨盤底筋がダメージを受けているため、骨盤底筋が衰えやすいのです。

骨盤底筋群を鍛える「カエル脚エクササイズ」

骨盤底筋は体の深層部にある「インナーマッスル」のため、意識して鍛えにくい筋肉。ですが「連動する筋肉」を動かすことで、間接的に鍛えることができます。

なかでも意識したいのが、内ももの「内転筋」と、お尻の「大臀筋」です。

カエルのように脚をパカっと開くエクササイズで、骨盤底筋に効率よくアプローチしていくエクササイズをお伝えします。

●カエル足エクササイズのやり方

(1) カエルのように脚をパカッと開く

かかとをつけ、つま先を外に向けて立ちます。その姿勢から、ひざを外側にパカッと開き、つま先と同じ方向に曲げていきましょう。脚の間を「ひし形」に開く、カエルの脚のイメージです。

 

(2) 脚を閉じ、かかとをつけ、つま先立ちに

次に内ももをギューッと引き寄せながら、ひざを伸ばして体を引き上げます。同時にかかとを床から離してつま先立ちになり、お尻をキュッと引き締めましょう。(1)〜(2)を繰り返します。

「ながらエクササイズ」なので回数に決まりはありませんが、1回5セットを目標に、こまめに実践してみましょう。

 

●内ももに力を入れるのが、効かせるコツ

コツは内ももに力を入れること。

「体を引き上げたとき、かかとが離れやすくなりますが、かかとが離れてしまうのは内ももの力が抜けて締まったサイン。骨盤底筋に効かせるためにも、しっかり内ももに力を入れましょう。また、つま先立ちになったとき、体がグラつき倒れやすくなるので、体幹を意識して。こうすると、おなかをコルセットのようにぐるりと囲む『腹横筋』も同時に鍛えることができます」(高尾美穂先生)

道具いらずで、思い立ったときにできるのがいいところ! 信号待ちをしている間、料理中に電子レンジを待つ間など、隙間時間をみつけて実践してみましょう。

尿漏れ対策だけでなく、腹横筋を鍛えられるので姿勢もよくなり、ぽっこりおなかも目立たなくなりますよ。

 

更年期症状は「症状のデパート」呼ばれるほど多岐にわたり、その感じ方にも個人差があるもの。ネガティブに捉えがちな時期ですが、ほかの人の体験談を含め、更年期との「向き合い方」を知っておくだけでも心が軽くなり、不安が和らぎますよ。ぜひ参考にして下さいね。