家は内装によってガラリと印象が変わります。予算が厳しくても、シンプルな内装材を使い丁寧に仕上げれば、落ち着いた和の雰囲気にすることも可能。また、アクセントウォールでリズミカルに空間を分けると、場所ごとに気分が切り替わります。百聞は一見に如かず。子どもがのびのび育つ家から、50代のおだやかに暮らす家まで、内装材の使い方でまったく印象が変わった4つの事例を紹介しましょう。

Case1.木の温もりにドイツ漆喰をプラス。リネン戸から優しい光が降り注ぐLDK

Tさんの家 三重県 家族構成/夫50代 妻50代
設計/服部信康(服部信康建築設計事務所)

Tさんの家は、北側に広がる田園風景と自然光を取り込めるように、くの字型にカーブする平屋建て。南北には家庭菜園を楽しむ庭を配置し、LDKにはその庭を眺める窓を設けました。

ワンルームのLDKは、造作のテーブルやカウンターなどでゾーニングしています。

 

床はチーク材の複合フローリング。天井は杉上小節板張りに。本物の漆喰のように見える壁は、フェザーフィールという、大理石の細かな粒子と天然の接着剤を主成分としたもの。別名、ドイツ漆喰ともいい、ローラやハケで、比較的簡単に塗れ、DIYでも人気の商品です。

 

戸の窓には、「ホコリを巻き込みやすいカーテンは好きじゃない」という妻の言葉から生み出された、オリジナルのリネン戸を採用。

 

通気性・保湿性に優れた亜麻のリネンを木製建具ではさみ込み、やわらかな光を取り込みます。

「夫妻の暮らしに合うように落ち着き感をもたせながら、奥行きを感じさせる空間づくりに配慮しました」と、設計者の服部さん。

庭での家庭菜園が趣味という暮らしに寄り添う、おだやかな空間が生まれました。

 

Case2.シンプルな内装材も丁寧な仕上げで、デザインが引き立つ空間に

Mさんの家 神奈川県
設計/デザインライフ設計室 撮影/水谷綾子

「和」のすがすがしさを感じさせるMさんの家は、コストバランスとデザインの調和を重視してつくられています。

 

LDKを配した2階は、天井にラワン合板を用いて屋根の傾斜を軽やかに演出。床は天然木の表情が楽しめるようにタモ複合フローリングを張り、壁は夫妻の要望で漆喰に。繊細なデザインの障子は、木や漆喰と好相性。内装材の種類を抑えることで、静ひつなデザインが一層引き立つ空間となっています。

 

対する1階は、床・壁・天井をラワン合板で統一。床や壁はオイル塗装するなど、安価な材料を丁寧に扱って、コスト以上の仕上がりに。また、「畳スペースが欲しい」という夫妻の要望で、寝室は本畳より手頃な価格の畳マットを活用しています。

 

造作のゲタ箱も、壁になじむように同じ素材で製作。

 

洗面室のL字型カウンターや収納もラワン合板で造作しました。

Case3.木や珪藻土を用いた心地よい空間を、アクセントウォールでリズミカルに

Yさんの家 千葉県
設計/中村高淑建築設計事務所 撮影/山内拓也

デザイン事務所を主宰するYさん夫妻は、小学生の子どもと夫の母との4人暮らし。夫妻がテレワークできるように、自宅を二世帯住宅に建て替えました。

ワークスペースは2階に配し、仕事を終えるとLDKのある1階に下りて、仕事のオン・オフを切り替えます。職住一体の暮らしに一役買っているのが、空間を彩る内装です。

キッチンは、トーンの異なるグレーの塗り壁で落ち着いた雰囲気。LDKの天井はシナベニヤを市松模様に張ってリズミカルに。床には心地よい触感で表情も豊かなナラやレッドシダーを、壁・天井には珪藻土クロスやペイントを採用しました。

とくに塗り壁では色づかいに気を配り、グレートーンの種類が豊富なイギリスのメーカー「FARROW&BALL」を使っています。キッチンなどの塗り壁は、家族で仕上げた作品です。

 

キッチンのグレーの壁や、正面奥に見えるビルトインガレージの黄色い壁は、家族で塗装し、家づくりのよい思い出に。

 

落ち着いた英国風ブルーグレーのペイントに白い壁と設備機器、木の組み合わせがさわやかな、二世帯共用の洗面脱衣室。2階の床はすべてナラ材を使用。

 

子世帯の寝室に隣接するウォークインクローゼットの壁も、好みの色でアクセントウォールに。

 

Case4.オーク無垢床に構造表しの天井。アイアンの大黒柱が効いているおおらかな空間

Nさんの家 千葉県 家族構成/夫37歳 妻36歳 長男 次男
設計/こぢこぢ一級建築士事務所

30代夫婦が「故郷で、のびのびと子育てしたい」と願って建てた注文住宅事例です。建物は切り妻の大屋根がかかった平屋。

LDKは、床にオーク無垢材を使用し、壁は漆喰仕上げにして、五感に心地よい自然素材でまとめました。フランス製のダイニングテーブルとイスは、いずれもヴィンテージ。

 

南側に広がる庭に向けて、はき出し窓と腰高窓を設置。「庭の向こうに広がる周囲の眺めが、心地よさを生みにくいと感じたため、視線が抜けすぎないよう、大窓ではなくあえてサイズを絞りました」(設計した小嶋良一さん)。

 

構造表しの天井がダイナミックで、ゆったりとしたLDK。ここで兄弟は、思いきり体を動かします。黒いアイアンの大黒柱は、子どもたちの登り棒に。

 

キッチンは、「壁づけ+アイランド型」の作業台の2タイプを造作。レンジフードの存在感を弱めるため、コンロは壁づけ部分に設けました。タイル貼りの壁がモダンな雰囲気です。

子どもが走り回っても気にならない、伸び伸びと育つ、おおらかな空間が生まれました。