北京オリンピック銅メダルに続いて、3月の世界選手権では金メダルを獲得したフィギュアスケートの坂本花織選手。好調をキープできた理由の一つに、食事をしっかり摂ったことが挙げられるそうです。アスリートにとって食事は大事な要素。とはいえ体重管理も必要とされるなかで、どのようにコントロールをしているのか、お話を伺いました。

坂本花織選手インタビュー。金メダルを支えた「ご飯」のこと

世界選手権金メダルの背景には、どのような体調管理があったのでしょうか?

●五輪後のスタミナ不足は、しっかり食べることで解消

―北京五輪から世界選手権までの間を振り返って、「今までの中で一番きつい時期だった」と話していましたね。

「きつかったですね。五輪の時は、3週間くらい滞在していたのにすごく調子が良くて、結構ノーミスでできることが多かったんです。だから逆に落差がすごくて。ちょっとでも失敗したら集中力が切れるタイプなので、五輪が終わってからの練習は、1個失敗したら雪崩のように崩れ崩れて、という感じでした。頑張りたいという気持ちと実際の調子との差がありすぎて、納得のいく練習が出発の前日しかできなくて、本当にぼろぼろだったんです」

―気持ちと調子にギャップがある期間が長くて、でもそれをなんとかしなきゃいけない。そのために何かしましたか?

「調子の悪さは体力のなさだなって気づいたんです。フリーの後半が持たなくなってしまったので、完全にスタミナ不足だと思って。五輪に向かって(身体を)絞っていて、そのままの体重や体型でいこうと思っていたんですけど、それではちょっと無理だなって。で、一回エネルギーを溜めておこうと思って、ご飯の量を増やしてしっかり食べて動けるようにしました。そしたらだいぶプログラムが最後まで、ミスはするけど持つようにはなりました。ご飯を食べたら調子が戻ったという感じでした(笑)」

―絞る時期、ご飯はどのくらいの量なんですか。

「野菜、肉、ご飯と、バランス良く。ちゃんと食べるんですけど、夜は抜いたり」

 

●シーズン初めから五輪までに5キロ落とした

―これは聞いてもいいでしょうか。北京五輪時に絞った時と、世界選手権とでは、体重はどのくらい差がありましたか?

「大丈夫です。2キロくらい増えました」

―2キロ増えた世界選手権の体重は、通常の数値ですか?

「いや、通常よりもまだ軽いくらいです。シーズン初めから北京五輪までに5キロくらい減らしたので、プラス2キロしてもまだマイナス3キロなので。まだ大丈夫(笑)」

―北京五輪前にマイナス5キロにしたのはなぜですか?

「スタミナとか考えて。重いと、ジャンプにどうしても力が入ってしまうので最後まで持ちにくくなる傾向があって、そのために減らしたり。あと、ちょっと見た目とかですかね」

―今後はどうしますか?

「一瞬、やばいくらい増えました!」

―オフだし、今シーズンがんばったし!

「(笑)。でもやっぱり4回転の練習を本気でやりたいので、もうちょっと絞らないとなって思っています。北京の前は、プログラムの調子もすごく良かったんです。それで練習の後とかに、4回転トウループを3本締めよう(ぎゅっと回し切ってみよう)と先生に言われて練習したんですね。2年前くらいにも4回転の練習をしていたんですけど、その時より全然いいねと先生に言われたので、絞っている時が一番跳びやすい感じがしました。でもこの前(世界選手権後)、練習の時に本当に身体が重くて、中野(園子)先生に『お姉さん、もう身体が重いわよ』って言われて、『そうなんですよ、ほっとしたら、もう体重が増えちゃって』と言ったら、『ほっとする期間も必要やから。ま、明日からがんばろうな』って言われました。なんかちょっと先生も優しかった(笑)」

―緩む時期もないときついですよね。

「きついです(笑)」

●6日分のお弁当をつくりおきして冷凍保存

―坂本選手は自炊されていますが、同じお弁当を複数つくって冷凍しておくと聞きました。すばらしいアイデアですよね。

「そうです。ネットで見たんですけど、これ考えた人天才って思って。同じお弁当箱を買いに行きました(同じサイズのお弁当箱を6つ買って、3種類のお弁当を2つずつつくり冷凍保存。食べたい時にレンジで温めるというスタイル)」

―お料理している時に、こだわっていることはありますか?

「私、白ご飯が大好きなんですけど、炊飯器で炊かないんですよ。鍋で炊いています。もちろん炊飯器だったら1プッシュで最後までできるんですけど、お鍋で炊いたらおこげができるので、ふふふ。それも含めて、手間ひまかけて白ご飯を炊き上げるっていうこだわりがあります。ほんっとうに白ご飯が大好きなんですよ。この間の誕生日プレゼントでも、一人、白米を送ってきた友達がいました(笑)」

―(笑)。

「渋すぎて、突っ込みました。『誰が誕生日プレゼントに白ご飯送ってくるねん』って。でも、すごく嬉しい、感謝」

―おこげが好きなんですか?

「いや、白ご飯自体が大好きなんです。お鍋だと、気持ちふっくら炊けている気がするんですよ。だから、好きなんです!!」

 

●得意料理は卵焼き

―おかずにこだわりは? 卵焼きが得意なんですよね。

「そうですね。小学校4年生の遠足の時に担任の先生から、お弁当の1品を必ず自分でつくってくるように、という宿題を出されて。それが今、得意料理になっているんです。卵焼きって、絶対お弁当に入っているじゃないですか。お母さんに教えてもらって、すごくはまって、そこから朝ご飯ではずっと毎回自分がつくってみんなで食べてきました。今でもお腹すいたら『卵焼き、焼こう』みたいな感じでつくっています」

―甘い派ですか?

「甘くない派です」

―何を入れてますか?

「だしと味の素です」

―卵焼きは、巻くもの? それともちゃちゃっと派?

「巻くものです」

―おー、すごーい、立派です!

「ありがとうございます!!」

―アスリートとして食事で気にしている部分は?

「あまり偏った食事をしないようにとは考えているので、野菜とかタンパク質を摂るようにしています。どうしてもお肉の料理が多くなっちゃうので、魚を摂るように意識しています。フィギュアスケートの選手が一番ビタミンDを摂っていないっていうデータがあるんですね。魚ならビタミンDも摂れるので、鮭とか、キノコ類も取り入れるようになりました」

ビタミンDは骨や筋肉を丈夫に保つのに欠かせない栄養素。五輪の記者会見では「終わったらレバーと砂肝を食べたい」と渋いチョイスが話題になった坂本選手ですが、これらもビタミンが豊富な食品です。

世界選手権金メダルの背景には、こうした地道な体力づくりがあったのですね。