リビングに知らない子がいる。高校野球にハマる。そんな53歳のGW<古泉智浩の養子縁組やってみた92>
53歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した小1の長男・うーちゃん、里子の4歳の長女・ぽん子ちゃんという家族5人で暮らしています。今回は、古泉さん一家の体力的にも懐的にも厳しくないゴールデンウィークの過ごし方についてのお話です。
53歳のGWは、体も懐もつらくない方法で乗りきる<古泉智浩の養子縁組やってみた92>
元気な子どもが2人いると、ゴールデンウィークや年末年始を体力的にどうやり過ごすかというのが、大変な問題です。なんとか土曜保育をお願いして最大でも3連休にしてもらいました。僕はもう53歳なので子どもと一日一緒に過ごすと体がもちません。仕事をしている方がずっとラクですが、仕事に逃げてばかりいると、80歳近い母が弱ってしまうし、40代のママも参ります。半日くらいは僕が担当しなければなりません。
●気づくとリビングに知らない子が2人…
幸い小2の養子であるうーちゃんは一人で神社に行くとお友達がいて遊んでくれます。僕が2階にいると友達を連れてうちに来て1階で騒いでいます。覗きに行くとリビングで見知らぬ男の子が2人だけいて、オモチャで遊んでいます。うーちゃんより小さい男の子です。
どうしたのかと聞くと、みんな外に遊びに行ったと言います。仕方ないので動物クッキーを出して食べさせて、しばらくしたら外に出ていきました。なにも言ってないのに食べ終えたあとの食器を流しに運んでくれてとてもいい子でした。
1人は、うーちゃんとよく遊ぶ3年生の女の子の弟で、1年生でした。それにしてもうちの子がいないのに、よその子がいるというのはとても変な感じです。
●腕が痛いけれどぽん子ちゃんの三半規管の強化のためにがんばります
そういうわけで、うーちゃんはときどき裏の駐車場や神社でボール遊びをつき合えば大丈夫です。問題は4歳の里子のぽん子ちゃんで、お兄ちゃんと一緒に遊んでいればいいのだけど、すぐに飽きて公園に連れて行けと言います。公園に行くとブランコをしたがり、ずっと背中を押さないといけないので大変です。
今、僕はうーちゃんとのボール投げを熱心にやりすぎて右腕を痛めていて、際限なく押し続けているのが本当につらい。一度やり始めると、15分か20分くらい精一杯の高さでブランコに乗り続けます。そんなに乗り続けて酔わないのか心配ですが、あれくらいブランコに乗っていたら、しかも毎日、三半規管が強化されて船酔いなどにすごく強くなっているのではないでしょうか。
僕は船酔いがひどくて船に乗りたくないし、3Dゲームも大嫌いで、絶対に宇宙にも行きたくありません。遊園地のコーヒーカップに乗ったら一日が終わります。これから未来を担う若い人たちは三半規管の強化が必須ではないかと思います。そう思うと右腕が痛くてもぽん子ちゃんのブランコは押し続ける必要があります。
●らせん状の巨大な滑り台は、ぽん子ちゃんが勝手に滑り続けてくれる
ブランコはずっと押してないといけないのですが、大きな公園に行くとすごい滑り台があって、ぽんこちゃんは放っておくとぐるぐるぐるぐる際限なく滑り続けます。
うちから1.5kmくらいの距離にある巨大な公園は4月に遊具をリニューアルして、いちばんの目玉は、滑る場所が4か所くらいある複合的な滑り台です。その中でもいちばん高いパイプの滑り台はらせん状になっていて、下に到着するまで3回転くらいします。
しかも、そこに上るためには梯子を上るか、ロープ渡りをしないとたどり着けないため、最初ぽん子ちゃんはできませんでした。梯子をちょっと上ろうとしたけど諦めていたのですが、ここで諦めたらまたブランコを押さなければならなりません。
「大丈夫だよ、がんばれば絶対登れるよ」
そう言って励ましてお尻を押して上らせました。1回成功すると途端に平気になって、無限ループで上って滑ってを繰り返しました。そこは梯子やロープ渡りができない子には不可能なので、すいていて順番待ちがありません。
僕も一度、パイプの滑り台を滑ってみたら、らせんが狭くて体が曲がったまま回転して、カーブがきつくて三半規管にダメージがありました。目が回ってしばらく座り込んでいたので、2度目はなくていいです。
暇つぶし的に高校野球の試合に行ったらハマった!
天気さえよければ、ぽん子ちゃんは公園に連れて行くとずっと遊んでいてくれます。しかし、公園ばかりというわけにはいかず、行事的なことも必要です。僕のスマホは、グーグルが僕の関心事にフォーカスした記事をずらっと並べてくれています。それを見ていたら、野球グッズの検索からの情報でしょうか、県の高校野球大会が開催されいてるとの記事がありました。長男のうーちゃんは野球が好きなので、誘ってみると行くと言います。
うちから車で30分の距離の球場で、よく甲子園大会に出場する有名高校の試合があり、家族全員で行くことにしました。入場は大人600円で、子どもは無料でした。全席自由で、けっこうお客さんが入っているのに、見渡すとバックネット裏の最前列が空いてます。すでに試合は始まっていて、いいのかなと思ったけど座ってみました。
●白熱する試合に親子で大盛り上がり!
すると、ピッチャーの投げる球の速さや、バットに球が当たる感じの迫力が凄くて、変化球もなんとなく見えました。その試合は甲子園で準優勝したこともある私立高校と、名もなき公立高校が対戦していました。僕は公立出身ですので、公立高校を応援していたら、私立高校は大人みたいな体格の高校生が何人もいて、公立高校は中学生みたいな体形の男子が何人もいます。
私立高校がボコボコに打ちまくって1回で10点取りました。10点差がつくとコールドゲームなのですが、5回までは試合が続きます。公立高校の守備が崩壊し、1つのアウトを取るまでが大変で、地獄のような時間が続きました。非力なピッチャーが歯を食いしばって投げ続ける様子に心打たれて、アウトを1つ取るたびに渾身の力を込めて拍手しました。
僕が彼の立場なら自らマウンドを降りてベンチに戻り、監督やだれかがなにを言ってもドアをあけて通路を通って球場の外に出ていると思います。そして自販機でコーラを買って一気飲みします。彼はそんなことをせず、表情にも出さず淡々とボールを投げ続けました。
ところが、うーちゃんは僕とは反対に名門の私立高校を素直に応援して、まるでウルトラマンが怪獣を一方的に退治することに興奮するような感じで私立高校の活躍に声援します。近くには公立高校のママさんがいて、冷や冷やしました。
●高校野球観戦はコスパも抜群のレジャー
そんな感じで僕は公立高校に肩入れして興奮し、うーちゃんは私立高校の活躍に興奮し、ママは野球のルールすらあまりよく知らないまま見ていたのに若い子ががんばっている様子がとてもおもしろかったそうです。
ぽん子ちゃんはすぐに飽きておばあちゃんと球場の外にお散歩に行きました。公立の野球場の近くには大きな公園が併設されていて、工夫を凝らした安全な巨大滑り台があります。そこでぽん子ちゃんは無限に遊んで、帰ろうとするといやがります。
ゴールデンウィークに商業施設に行くといくらお金があってもたりません。野球が600円で公園は無料で、半日くらい余裕でつぶせます。それに味をしめて連休中に3回も行ってしまいました。毎回最前列か2列目くらいに座れます。
子ども以上に僕とママがすっかり高校野球に魅了されてしまい、連休が終わってからも平日の試合にこっそり通っています。