川上麻衣子さんが女優人生42年で感じること。「執念」と「偶然」に助けられて
女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。 一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さんが、猫のこと、50代の暮らしのこと、食のこと、出生地でもあるスウェーデンのこと(フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと)などを写真と文章でつづります。第13回は、先日運営するスウェーデン雑貨店と保護猫の譲渡会などを行うサロンの引っ越しを無事に終えて、感じた「人や偶然との縁」についてつづります。『笑点』でご活躍のあの師匠との遭遇も…!
芸能界デビュー42周年。助けられてきたのは「人」と「偶然」の縁<川上麻衣子の猫とフィーカ>
日本には四季があることを、朝が来るたびに感じる季節の到来です。新しいことを始めるにもうれしい季節。私の近辺も新しいことに溢れていて、2022年は猛ダッシュで駆け抜けている印象です。
芸能界にデビューしてから42年(!)、この42年を思い起こしてみても、これほど忙しいのは学校と仕事の両立に追われていた10代以来な気がします。
女優業も、ようやくコロナ以前のペースに徐々に戻りつつあり、舞台公演やイベントの仕事も復活してきました。そこに加えて、猫にまつわる仕事や、6年目に入った店舗の移転などなど、毎日が目まぐるしく過ぎていきます。どの仕事もワクワクドキドキなのですが、体力の衰えだけは身にしみます。
●56歳での大規模な引っ越し作業。同世代の仲間の協力に感謝
店舗移転のための引越し作業は、とりわけ堪えましたが、これも筋力トレーニングだと気持ちを奮い立たせてってがんばっています。そしてこんなときに、本当に有り難く感じるのは、仲間たちの存在です。
皆一様に、ともに年齢を重ねてきた友人たちですから、かなりきつい労働であったにも関わらず、寡黙に淡々と作業を手伝ってくれたおかげで、僅か3日間で、店舗とサロンの2か所を1か所に移転させるという大がかりな移転をこなすことができました。「仲間」そして「人」の力をしみじみと感じました。
●多くの経営者が口々に答える「成功の秘訣」
以前経営者の方々にインタビューをするという仕事をしていた際に、毎回最後に伺う「成功の秘訣は?」に対する答えは、どの経営者の方も口をそろえて「『人』です」の一言でした。
最初は漠然と、聞いていましたが、10年以上続けたインタビューでしたから、1000人近くの方々の殆どが同じ答えに辿りつくことで、そこに核心があることを教えられました。
そのときには、不思議と思える答えの一致ではありましたが、自分も経営者の端くれとして仕事をしてみると、「人」のつながりによって今の自分があることが、とてもよくわかるようになりました。
遡ってみれば、女優という仕事に行き着いたこと自体が、「人」とのつながりであり、偶然の積み重ねでした。そうなのです。私にとっては「人」と「偶然」。この二つの言葉がとても重要だということが、今更ながら骨身にしみています。
執念と偶然の力が女優業の道を開くきっかけに
「念じれば花開く」
若い頃から、この言葉が好きで、なにかやりたいことを見つけたときには、とことん思い詰める傾向がありました。
「女優になりたい…」そんな突拍子もない願いも、若さゆえ本気で、徹底的に思い詰めて、その結果たくさんの偶然を手に入れたと、自負しています。
家族、親戚一同を辿っても演劇や、芸能に関連した仕事をしている人はなく、なんの手がかりもない環境でしたが、得意の思い込み作戦のおかげで、偶然にも祖母の家の向かいに暮らしていた脚本家の畑嶺明先生とのご縁ができました。
その先生とは、当時「俺たちの旅」シリーズや「太陽にほえろ」後には中山美穂さん主演の「毎度お騒がせします」を書かれた大先生です! 畑嶺先生との出逢いがなければ、今の私はなかったことは間違いありません。
当時まだ中学生だった私ですが、これが最初に自らの執念で掴んだ「偶然」と記憶しています。このことをきっかけに、42年間たくさんの「偶然」が出逢いを運んで来てくれて、人とのつながりができました。
●本当はたくさんある「偶然」を取りこぼさないように生きていきたい
確率論で考えたら、「偶然、あの日、あのときに数年ぶりにあの人とあの場所で会わなければ…」などという現象はあり得ないはずです。でも人生は、そんな『偶然』で溢れています。
本当はもっともっとたくさんの偶然が身の回りに起きているのかもしれませんが、自分の精神状態が荒れていると、その大切な「偶然」を見つけられず、出逢いを逃している可能性があります。
●「たまたま」が重なって、笑点のあの師匠に遭遇!
先日も、新店舗の移転作業中、たまたま天気も良かったので、早朝から新店舗の掃除に訪れたら、なにやら年配のおじさまがシャッター越しの店舗をのぞいておられました。
興味を持っていただけるうれしさから、おはようございます! とお声がけしてみると、なんと、三遊亭好楽師匠! たまたま、仕事に行く途中に寄って下さったそうで、偶然がうまくかみ合わさって、早朝の束の間、お話しすることができました!
こんなことが起きると、疲れも一気に吹き飛びます。人生50年も過ぎてみると、過去の懐かしいことを辿りつつ、ちょっと視点を変えれば、たくさんの偶然が隠されていることに気づくはずです。還暦前にちょっと一呼吸入れて、仲間に感謝!
自分の生きてきた道に塗り絵をする様に、過去の偶然を探しながら、彩りを加えてみるのも、すてきではありませんか? そしてこれからまだまだ、起きるであろう「偶然が導く出逢い」を大切にしていきたいなと、感じる季節です。