【勉強】子どもの「国語力」が低下している!? 改善のために“読書以外”でもできること

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我が子の文章能力が低く、なかなか読書習慣も身に付かない。そう悩むパパやママは多いはず。

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文章能力や国語力というものは、塾のテストのように定量的に目に見えるものではありません。ゆえに、自分たちが子どもの頃と我が子を比べて「何かが違う」と漠然とした危機感を抱えてしまっていませんか?

今回は、ベネッセ文章表現教室を運営する東京個別指導学院、STEAM事業部 部長の西山利彦さんにお話を伺いました。

これまで19年間、子どもたちの教育に携わり続けてきた西山さんが語る、子どもたちの変化、文章能力や伝える力を育む重要性とは何なのでしょうか。

子どもの国語力、なぜ低下?

--西山さん、本日はよろしくお願いします!

早速なのですが、よく我が子に関して「国語ができない」「本を読まない」と嘆く親の姿をよく目にします。長らく教育の現場で子どもたちの様子を目の当たりにしている西山さんとしては、そういった子どもたちの変化というものは実際に感じていますか?

西山利彦さん(以下、西山)「私たちが実際に何年も子どもたちを見続けた中での感覚でいうと、そういった変化は感じますね。

特に行動として顕著なのが、多くの保護者の方が気にされている『本を読まない』という部分に関してです。

以前は、授業の休み時間に本を読んでいる子が多く見受けられました。最近では、子どもたちの多くがスマートフォンを触っているな、という印象です。

文章表現教室はどの教室にも本棚があり、たくさんの絵本や書籍が並んでいるので、もっと手に取って読んでほしいなと思うのですが(笑)」

--やはりそのような読書量の減少が、子どもの国語力や文章能力の低下に繋がっていると思いますか?

西山「いえ、必ずしもそうとは思わないですね。実際、読書量の多い子が必ずしも国語力や文章能力が高いかというと、そうではありません。

これは私の個人的な見解になりますが、テクノロジーの発達により、欲しい情報がよりわかりやすい状態で簡易に手に入るようになったことが、原因の一つではないかと思います。

私は、『国語力や文章能力=情報に対して思考し、自分の考えを立ち上げてアウトプットできる力』だと考えています。

欲しい情報が望んだ状態やタイミングで手に入るというのは良い側面もありますが、情報に対して思考したり精査したりする習慣が身に付かないと、自分自身の意見を組み立てることも、それを言葉として発することも難しくなってしまいます」

国語力や文章能力が低下するとどんな弊害がある?

--西山さんがおっしゃっているような“国語力や文章能力(思考して自分の考えをアウトプットする力)”が低下している子どもが増えている実感はありますか?

西山「いえ、数が増えているというよりは、そういったことが苦手な子どもの苦手度合いが深まっている、という印象ですね。

国語や表現することが苦手な子は、内気であるとかそういったことではなく、自分の言葉で伝える、表現するということが上手にできていないだけという感じです」

--国語力や文章能力の低下は、子どもにとってどんなデメリットがあるのでしょうか?

西山「国語力や文章能力が養われていないことは、コミュニケーションに大きく影響します。

私は先ほど話した、思考する力、自分の考えをアウトプットする力に加えて、相手の意見を聞き取る力、質問や相手の言葉に対して意見を言う力もまた、国語力や文章能力に該当すると考えています。

文章能力と聞くと、どうしても読み書きすることに対する能力という印象が強いのですが、実は国語力や文章能力はコミュニケーション能力だと考えています。

国語力や文章能力を磨かないと、コミュニケーション能力を高めることが難しくなることが多いです。自分自身の考えや意見を言うことも難しくなりますし、人との会話の中で齟齬も発生しやすくなってしまいます」

子どもの国語力を伸ばすためにベネッセ文章表現教室がやっていること

読み書きの能力だけではなく、伝える力も育むベネッセ文章表現教室

--しかし、国語力はコミュニケーション能力となると、それを実際に育む方法がなかなか思い浮かびません。ベネッセ文章表現教室ではどのように子どもの国語力の成長にアプローチしているのでしょうか?

西山「はい、文章表現教室では『考える力、書く力、伝える力』の3つにそれぞれアプローチする工程があります。

特に他の教室にはない特徴としては『伝える力』という部分ではないでしょうか。

先に話した通り、国語力は読み書きに関する能力と捉えられがちなので、文章に落とし込む力という部分までは多くの人が想像する工程だと思うのですが、文章表現教室では必ず一人一人またはグループごとでの発表の時間があります。

大人でいうところの“プレゼンテーション”に近いですね。

自分の思考を相手に伝わるように話す、相手の話を読み取り気づきを得るという2つのポイントを意識的に授業の中に取り入れています。

ただ、この授業を成功させるための大前提として、ある大切なことを子どもたちには教えています」

--つまり、子どもたちの国語力を伸ばすための大前提、ということですね。

西山「はい、いわゆる教室のグランドルールですね。『できるところまでがんばって考える』『他の子の意見を頭ごなしに否定しない』などのルールを設けています。

このルールは、子どもたちにとってよりわかりやすく自分の中に落とし込みやすい言葉で表現した“おきて”という形で存在していて、授業の最初に必ず皆で復唱するようにしています。

これは、自分自身の意見を形成するために考え抜く経験をするためと、『ここではどんな意見であれ否定されない』という、子どもの心理的安全性を確保するためです。

せっかく考え抜いた意見をからかわれたりすると、なかなか自分の考えを発しづらくなってしまいますよね。ゆえに、文章表現教室では、先生も子どもの意見を頭ごなしに否定することは絶対にしません」

--心理的安全性という言葉は、昨今よく耳にしますね。

西山「はい、心理的安全性は子どもたちの中に“軸”を作るための土台として非常に重要なものです。

こんなふうに考えていい、発言していいという安心感が子どもの中に思考していく上での軸を形成します。

自分の中に軸があるからこそ、思考することができるし、それを言葉にすることができます。自分の軸があるからこそ、他者との価値観の違いに気が付けるのですよね。

そしてその軸に安心感と自信を持っているからこそ、他者の考えを聞き入れてそれに対する自分の意見を話すこともできると考えます。この自分の軸を育むことが、ベネッセ文章表現教室でとても大切にしていることなんです。

つまり、多様性を許容できるようになる、ということですね。これは現代においては非常に重要な力だと思います」

子どもの国語力を育むために家庭でできること

--ベネッセ文章表現教室は、国語力だけではなく人間力に関わる部分にもアプローチしているように思います。なかなか家庭では真似できないですね……!

西山「ベネッセ文章表現教室はすでに十数年、カリキュラムを時代に合わせて更新しています。たしかに、家庭で全く同じように実践するというのは難易度が高いですね(笑)

ただ、国語力や文章能力が高い子どもには一定の傾向があります」

--そうなのですね。例えば自分で辞書で調べるとか、やはりある程度読書をしている、などでしょうか?

西山「もちろん、ボキャブラリーを増やすという意味では紙の辞書で調べるという行動は効果的ですし、文章表現教室でも子どもたちにはそうさせています。

ただ、先にも話したように、読書量の多い子どもが国語力や文章能力が高いとは限りません。

では、なぜ読書が国語力や文章能力を育むことに良いといわれるかというと、本を読むことはその内容を脳内で想像したり反復したりすることで、自主的な思考に繋がりやすいから、という部分からです。

つまり想像したり、思考を繰り返したりということができるのであれば、読書でなくでも構わないのです」

--具体的にはどのような方法が考えられるでしょうか?

西山「例えば普段の外遊びなどでも思考するという機会が与えられるのであれば、それでも良いと思います。

一番日常でやりやすいのは、普段の親子のコミュニケーションの中で子どもの話を反復して共感し、質問をたくさん投げかけることです。こうすることで、子どもの中には自然に思考するための“問い”が生まれていきます」

--国語力が高い子どもの親や家庭の特徴はまさにそれでしょうか?

西山「はい、そのように感じます。子どもの言うことを否定せず受け止めて、どんな意見でもまずは聞いてあげる、その上で質問を重ねていくことで会話を深めていくというコミュニケーションの取り方をしている保護者や家庭が多い印象です。

よく学校などに、勉強をしている様子はないのになぜか国語はできるという子がいますよね。そういった子は、日常でのコミュニケーションで国語力を磨いているからだと思います」

東京個別指導学院には「やればできるという自信 チャレンジする喜び 夢を持つ事の大切さ」という教育理念があり、この理念を伝えていくことを大切にしているそうです。

その上で「自分の中に軸を持ち、それを発信するだけでなく、他者の発信もしっかりと受け止められる子になって欲しい」西山さんは、子どもたちに対してそう考えているそうです。

そのためには、しがらみなく自分の意見を言えた経験が必要だと西山さんは話します。

その環境は、ベネッセ文章表現教室はもちろん、家庭の中にも作り上げることができます。

多様性が許容され、たった一つのことが正解ではない時代。その最中に生きる子どもたちに最も必要な力の一つが国語力や文章能力なのかもしれません。

【ベネッセ文章表現教室】
「ベネッセ文章表現教室」は東京都、神奈川県、埼玉県に15教室を展開しています。

・東京都(吉祥寺教室、用賀教室、麻布十番教室※、大井町教室※、国立教室※、自由が丘教室※、仙川教室※、成城コルティ教室※、豊洲教室※、広尾教室※)
・神奈川県(たまプラーザ教室、川崎教室※、新百合ヶ丘教室※、戸塚教室※)
・埼玉県(武蔵浦和教室※)
※「東京個別指導学院」内に併設しています

※日本全国からオンラインで授業を受けていただける「ベネッセ文章表現教室オンライン」も開講しています。

【取材協力】

西山 利彦(にしやま・としひこ)
株式会社東京個別指導学院 STEAM事業部長

2003年株式会社東京個別指導学院入社。個別指導教室の教室長やマネージャーを経て、2015年よりベネッセ文章表現教室・ベネッセサイエンス教室を管轄する事業部の事業部長。約19年、教室で生徒・保護者に寄り添ってきた。