「レスキュー暮らしを守る」今回は5月13日から施行される改正道路交通法です。75歳以上の高齢者が免許証を更新するときに新たに導入される技能検査について詳しくお伝えします。高齢者による悲惨な事故が後を絶たない中、事故の防止にどれほどの効果があるのか注目が集まっています。

免許の更新を迎えた高齢のドライバーのための高齢者講習の様子です。受講者たちが動体視力の検査のほか、座学と実際の運転を通して指導員から運転に関するアドバイスを受けました。

講習は現在の法律のもとで行われているもので、初心にかえって運転の基本を学んでもらうのが狙い。しかし、指導員が隣にいるという普段と違った環境の中、緊張からか反対車線にはみ出したり、道を間違えたりする人も。

栃木県内では去年1年間で3,939件の交通事故が発生していて、56人の尊い命が犠牲となっています。理不尽に命を奪われる交通事故を減らすことは社会全体の課題で、6日から始まった春の交通安全県民総ぐるみ運動でも歩行者の保護などを重点的に呼びかけています。

安全意識の高まりの背景には近年、特に注目を集めている高齢ドライバーによる交通事故があります。2019年に東京・池袋で幼児と母親が死亡した事故をきっかけに、店舗に車が突っこむなど運転操作の誤りが原因とみられる事故が大きく取り上げられるようになりました。

県内では65歳以上の高齢ドライバーが関係する事故は去年1年間で1,140件発生。全体の3割弱を占めています。さらに亡くなった56人のうち、高齢ドライバーが関係した事故で亡くなったのは合わせて20人。このうち75歳以上の後期高齢者が関係する事故では11人が亡くなっています。

このような中、5月13日に施行されるのが、違反歴のある75歳以上の高齢者が対象の運転技能検査です。改正道路交通法では免許の更新の時点からおよそ3年間さかのぼって信号無視やスピード違反など11種類の違反をした75歳以上のドライバーを対象に運転技能をチェックする検査が義務付けられます。100点満点の減点方式で得点が70点未満の場合、免許を更新できません。

免許センターのコース上に設けられているこちらの段差も改正法施行に向けて新たに作られたもの。アクセルとブレーキの踏み替えをすばやくできるか確認する「段差の乗り上げ」の項目で使われ、前輪が段差を超えてしまうとマイナス20点と大きな減点になります。

栃木県警によりますと、県内で法律施行後に免許の更新を予定している75歳以上の高齢者は4万3,136人。このうち今回の検査を受けることになる一定の違反歴のある人は3,105人います。県警ではこのうち711人が1回目の技能検査で不合格になると試算しています。

今回の法改正は高齢ドライバーによる事故を未然に防ぐのはもちろんのこと違反を犯さなければ検査を受けずに済むことから、いま以上に安全運転への意識が高まるのではないかと期待されています。

しかし、仮に検査に合格したとしても油断は禁物です。今回の法改正について警察では高齢ドライバーへ自分の運転を見直すとともに、家族と一緒に免許の自主返納について考えるきっかけとしてほしいと呼びかけています。

今回の改正法では対象となるのはあくまで違反歴のある75歳以上の高齢者です。今回技能検査が義務付けられる条件として11種類の違反がありますが、これらの違反歴のあるドライバーは、死亡や重傷事故の発生率が通常よりおよそ2倍高まるといわれています。そういう意味では重大事故の防止に一定の効果は期待できそうです。

一方で、車社会の栃木県では日常生活の足として自動車が必要不可欠となっている地域があるのも事実。高齢ドライバーの事故を防ぐことはもちろん大切ですがデマンド交通の充実など高齢者が免許を手放したあとも安心して生活できる環境を行政をはじめ地域が整えていくことも喫緊の課題と言えそうです。