東大生も感動!「伝説の"論理思考"講座」を大公開
論理的に考えるには「想像力」が不可欠で、想像力を十分発揮するためには「論理力」が欠かせない――両者はそういう補完関係にあるといいます(撮影:梅谷秀司)
東大生、慶応生、早稲田生を中心に、クチコミのみで募集される「伝説の『論理思考』講座」がある。受講した学生のうち「82%が戦略系コンサルティングファームに内定」という実績は、少しでも内情を知る人からすればまさに「驚異の講座」だ。
その「門外不出の講座」のエッセンスをまとめた書籍『東大ケーススタディ研究会 伝説の「論理思考」講座』が、ついに刊行された。
「東大生といえども、最初は『間違った論理思考』をしている人が大半です。でも、正しい方法を知ってトレーニングすれば、コンサルタントの実務でも十分通用するレベルに到達できます」
そう語るのは、経営コンサルタントとして第一線で活躍する傍ら、本講座を主催してきた、著者の白木湊氏だ。白木氏が所属する「東大ケーススタディ研究会」については、シリーズ35万部を突破したロングセラー『フェルミ推定ノート』『ケース問題ノート』の著者として、ご存じの方も多いだろう。
ここではこれから3回にわたって、白木氏に本講座のエッセンスを紹介してもらう。第1回となる今回は、本講座の「核心」である、「論理思考には”想像力”が不可欠」というテーマを解説する。
自力で「論理的に考えられる」ようになるためには?
世の中には、論理思考の勉強に関するコンテンツがあふれています。たとえば、「フレームワーク」「ロジックツリー」「仮説思考」などの論理思考のツールに関するコンテンツや、「何かしらのテーマに関する問題解決の例」を解説したコンテンツなどです。
しかし、これらのコンテンツで勉強したのにもかかわらず、実際に自力で論理思考を実践すると、「論理的でない」「視野が狭い」「考えが浅い」などの指摘を、他者(上司、先生など)から受けてしまう人も少なくないのではないでしょうか?
私は、経営コンサルティング業界の採用試験でよく使われている「ケース問題」という「論理思考力を評価するための問い」をもとに、多くの学生・新社会人に対して、論理思考の指導を「継続的」かつ「個別」に実施してきました。
さまざまな人への指導・成長の経過を見てみると、論理思考というのは、単に「勉強すればすぐに習得できる」タイプのスキルではありません。実際は、勉強したことが原因で、かえって変な論理思考になってしまう人も少なくありません。
私が指導してきた学生の多くは、「東京大学」「慶応義塾大学」「早稲田大学」などの一流大学の学生ばかりです。しかし、それでも、最初は論理思考をうまく学習できない人が少なくないのが現実です。
ちなみに、私自身も、最初から論理思考をうまく自力で実践できたわけではありません、そもそも、現在でも、「後からミス・見落としに気がつく」ことも少なくないのが現実であり、まだ思考力向上の必要があると認識しています。
それでは、なぜ、うまく論理思考を実践できないのでしょうか。以下、「ケース問題」という”具体的な問い”をもとに、詳細を解説していきます。
【補足:ケース問題とは?】ケース問題とは、「30分程度の短い時間」「情報収集なし」という状況で、「ある程度妥当と想定される解」を導くことが求められる問いです。そして、与えられる問題文は、以下の解説で示すように、とても端的である場合が少なくありません。そのため、解を導く上で必要な「情報・ファクト」や「問いの前提条件」については、「妥当」と思われる内容を、自力で「仮定」する必要があります。以上の特性から、ケース問題は「高い論理思考力が求められる」と言われており、経営コンサルティングファームの面接試験で、よく利用されています。
まずは「ケース問題」であなたの論理思考力をチェック
本記事(第1回)では、ケース問題の中でも、比較的簡単な「フェルミ推定」という問いを解いてみましょう。
(注:「フェルミ推定」とは、「ケース問題」と同様、論理思考力を測るための問いとして、よく利用されている問いです。そのため、本記事では、ケース問題の一種として取り扱います)
問い:日本国内に存在する、携帯電話・スマートフォンの台数を推定してください(以下、携帯電話とスマートフォンを合わせて、”携帯電話”と略して表記します)
さて、まずは「ありがちな回答」を見てみましょう。
1.よく見られる「ありがちな回答」は?
少し論理思考の勉強をした経験のある方の場合、以下のように、ツリー構造で携帯電話の台数を因数分解する方が少なくありません。
「携帯電話の台数」=「人口」×「所有率」×「1人あたり所有数(プライベート所有数 + 会社支給数)」
このように、まずは問いを「構造的」に分解した上で、各項目の検討(数値の推計)を進めていく人が多いです。
しかし、上記の回答には、大きなミスがあります。さて、何をミスしているのか気がつけたでしょうか。
2.「最低限、実施すべき検討」は?
それでは、「何をミスしているのか」を示すために、まずは「最低限、実施すべき検討」を示しておきましょう。
そもそも、携帯電話は、「工場・倉庫」⇒「販売店」⇒「(ユーザーが)毎日利用中」⇒「(使わなくなって)家で保管中 or 下取り・リサイクル」などの、さまざまな場所に存在します。
しかし、先ほどの「ありがちな回答」では、「毎日利用中」の携帯電話しか、計算の対象になっていませんでした。
特に、「家で保管中」の携帯電話の台数に注意が必要です。なぜなら、家の棚の奥などに「過去の数台分」を保管している人も少なくないため、計算した結果、「毎日利用中」と同レベル以上の台数になる可能性があるからです。
つまり、「家で保管中」の台数を見落とすと、推定結果の数値が大幅に小さくなる可能性がある点に注意が必要です。
3.「ありがちな回答」は、何をミスしていたのか
それでは、「ありがちな回答」では、何をミスしていたのでしょうか。
結局のところ、「ありがちな回答」は、「携帯電話が存在する場所を洗い出す」という「大枠の検討」が不十分な状況(補足:「毎日利用中」の項目しか洗い出していない段階)であるにもかかわらず、いきなり「携帯電話の台数の計算」という「個別の詳細な検討」に入ってしまうというミスをしていた点に注意が必要です。
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さて、上記のとおり、「論理的に抜け漏れのない検討を行う」ためには、「個別の詳細な検討」に入る前に、まずは「大枠の検討」の見落としを防ぐことが重要です。
ところで、ここで少し考えていただきたいのですが、先ほどの「最低限、実施すべき検討」の内容は、「論理力」から導かれているのでしょうか。
どんな検討を経て、「論理的な解」を導いているのか
先ほどの「最低限、実施すべき検討」では、あくまで「検討の結果」しか紹介していませんでした。そのため、次は、この検討結果に到達するまでの「途中の検討プロセス」の内容について、解説していきます。
1.検討結果に到達するまでの、「途中の検討プロセス」の内容は?
まずは、問いを読んだ瞬間に、「そもそも、携帯電話って、どこに存在するんだっけ?」といった「疑問」を持つことが重要です。
次に、この疑問をもとに「携帯電話の存在場所」を考えるのですが、その方法は複数パターンが想定されます。
方法の例の1つ目は、「(どんな場所で携帯電話を見たことがあるのか)これまでの人生の経験を思い返してみる」という方法です。最も身近なのは、「現在、カバンやポケットに入れている端末」だと思われますが、それ以外に、どこで携帯電話を見たことがあるのか、過去の経験を思い出しながら洗い出していきます。
方法の例の2つ目は、「自分が使っている携帯電話の立場をイメージしてみる」という方法です。もちろん、現在は手元にあると思いますが、その前後の存在場所を想像してみることで、「今の端末は、”ドコモショップ(販売店)”で買ったものだ」「今の端末を使わなくなったら、”中古で売る”か、とりあえず”家で保管”かな?」といった検討を経て、携帯電話の存在場所を洗い出すことができます。
方法の例の3つ目は、「携帯電話の一生の流れをイメージしてみる」という方法です。これは、先ほどの「最低限、実施すべき検討」で述べた、「工場・倉庫」⇒「販売店」⇒「毎日利用中」⇒「家で保管中 or 下取り・リサイクル」が該当します。
余談ですが、上記で例示した3種類の方法の例は、以下のような、さまざまな活用方法が想定されます(どんな活用方法でも問題ありません)。
・ 3種類の方法の中から、1つの方法だけを活用する
・「方法:例1」⇒「方法:例2」⇒「方法:例3」という流れで、より「論理的な補佐(※意味は後ほど解説予定)」の度合いが強い方法へ、少しずつ検討方法を変えていく
2.「途中の検討プロセス」では、どんな思考方法を活用しているのか?
さて、上記で解説した検討方法を、よく見てください。
いずれも、「論理思考のツール(例:フレームワーク、ツリー構造による構造化)」を活用しているわけではありません。むしろ、「自分が知っている知識・経験を思い返してみる」という形で、「想像力(具体的なイメージ)」を中心とした検討を実施しています。
このように、「論理的な解」へ到達するまでの途中の検討プロセスでは、あくまで「想像力」が重要になってきます。
一方、「論理力」をまったく使っていないわけではありません。
たとえば、「携帯電話の一生をイメージしてみる(方法:例3)」といった形で、「どのように・何に対して、想像力を発揮するのか」を、「論理力が補佐・整理」していると解釈できます。
ただし、「論理力による補佐」を実施するとき、「論理思考ツール(例:フレームワーク、ツリー構造による構造化)」を活用しているわけではない点に、改めて注意してください。あくまで、論理思考ツールのような「汎用的・一般化された手法を適用する」ことではなく、「個別の問いに合わせた形で論理力を発揮する」ことが重要になっていました。
自力で「論理的な解」を導けるようになるためには
さて、上記のケース問題への解説内容を踏まえながら、ここからは、本題の「なぜ自力で論理思考を実践できないのか」について解説していきます。
1.「論理思考のツール」を活用しても、大枠の見落としの回避は困難
まず、論理思考の勉強をした経験がある方が陥りがちなミスは、「論理思考のツール(だけ)に頼って解こうとする」というミスです。
たしかに、論理思考の解説をしているコンテンツには、フレームワークやツリー構造のような「論理思考ツール」の解説をしているものが少なくありません。その結果、「論理的に考えよう」と言われると、ついつい「論理思考ツールを基準として検討を進めよう」としてしまう人が少なくありません。
しかし、これらの論理思考ツールを利用しても、「毎日利用中の携帯電話以外にも、”家の棚の奥”や”メーカーの倉庫”にも、携帯電話が存在する」といった「思考を広げる(大枠の見落としを防ぐ)」方向へ、意識が向くことは稀です。
なぜなら、これらのツールは、「すでに気がついている内容を、わかりやすくまとめる」という機能がメインであり、「見落としに気がつく」ことに関する機能については、せいぜい「”細かい”見落としに気がつく」というレベルが限界だからです。
2.「想像力」を起点としつつも、「論理力で想像力を補佐」していく
そのため、あくまで「想像力」を起点とする必要があります。
しかし、想像力“だけ”に頼ればよいわけではありません。
そもそも、今回の「携帯電話の存在台数」の問いにおいても、大半の方は、(程度の差はあると思いますが)想像力も発揮していたはずです。加えて、「最低限、実施すべき検討」で示した「携帯電話の存在場所」についても、まったく知らない知識ではなかったはずです。
しかし、自力で検討を進めると、「携帯電話の存在場所」の例のように、「言われてみれば知っていた(しかし、自力で洗い出せなかった)」という見落としが発生する人が少なくありません。なぜなら、「想像力”だけ”を何となく発揮」した場合、想像力を発揮する箇所が場当たり的になるため、見落としが多数発生しやすくなるからです。
このようなミスを防ぐためには、想像力“だけ”に頼るのではなく、「何に対して想像力を発揮するのか、論理力で整理・補佐する」ことが重要になります。
そして、この「論理力による補佐」は、フレームワークやツリー構造のような「汎用化・一般化された論理思考ツールの活用」では不十分です。あくまで、「問いに合わせた補佐の方法を、問いごとに自力で(論理的に)考案」する必要があります。
「想像力を論理力で補佐」する具体的な工夫とは?
では、どうすれば、うまく「想像力を論理力で補佐」という思考を、自力で実施できるのでしょうか。
すでに解説したとおり、「問いごとに補佐の方法を考案する」必要がありますが、このような指針だけでは、「よく考えることが重要です」という、抽象的すぎて役に立たないアドバイスにしかなりません。
そのため、次回以降の記事では、上記の「想像力を論理力で補佐」するための方法・工夫を、引き続き具体例(ケース問題)を利用しながら解説していきます。
ところで、本記事の最初で「視野が狭い」「考えが浅い」という指摘で示したとおり、論理的な解は「広く」「深く」の両方を満たすことが重要です。そして、「広く」と「深く」では、少し異なった工夫が有効になります。
そのため、第2回の記事では「広く」、第3回の記事では「深く」について、詳細を解説していきます。
(第2回に続く)
(白木 湊 : 東大ケーススタディ研究会メンバー)