東京五輪では主力として活躍した堂安、久保【写真:Yukihito Taguchi & AP】

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驚異的なV字回復を見せた森保ジャパン「一番は4-3-3へのシステム変更だ」

 森保一監督率いる日本代表は、3月24日に行われたカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選第9節オーストラリア戦で2-0と勝利し、敵地で7大会連続のW杯出場を決めた。

 「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が最終予選のターニングポイントを分析。MF堂安律(PSV)、MF久保建英(マジョルカ)らの出場機会が減る可能性も指摘している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 日本はアジア最終予選初戦でオマーンに0-1と敗れて黒星発進。第2節で中国に1-0と勝利するも、第3節でサウジラビアに0-1と再び敗れ、序盤3試合で2敗を喫して一時グループ4位と苦戦を強いられた。

 金田氏は最終予選の歩みを振り返り、「序盤は厳しい戦いを強いられたなか、森保監督は解任も覚悟しながら腹をくくったのだろう。本当によく乗り越えたと思うし、彼を支えた日本サッカー協会の働きも称賛したい」と称えた。

 日本はホームでの第4節オーストラリア戦で2-1と勝利し、そこから勝利を積み重ねると、敵地オーストラリア戦でも白星を手にしてW杯出場の切符を手にした。6連勝と驚異的なV字回復を見せた森保ジャパンのターニングポイントはどこだったのか。金田氏は「一番は4-3-3へのシステム変更だ」と指摘する。

 第4節のオーストラリア戦、森保監督は継続してきた4-2-3-1システムから4-3-3システムへと変更。中盤にMF守田英正(サンタ・クララ)、MF田中碧(デュッセルドルフ)を抜擢し、負けられない一戦で大胆な一手を打つと、その田中が代表初ゴールを決めて勝利を手繰り寄せた。

「それは単なるシステム変更以上の意味があり、選考基準を思い切って割り切った結果だと考えている。それまでの日本は、ハードワークをベースにしながら、球際で戦えるという強さを求めていた。しかし、あの時(第4節)からボール奪取力も重視した。ハードワーク、球際で戦える強さ、そしてボール奪取力。この3つが揃っているかどうかが選考基準になったと思う」

「鎌田、堂安、久保に足りないところ」に言及

 日本は最終予選3試合を終えて1勝2敗と追い込まれており、当時は森保監督の進退問題も浮上。さらに、ホームでライバルのオーストラリアを迎え撃つなか、指揮官はシステムとスタメンの両方にメスを入れる英断を下し、その決断は奏功した。

 本拠地でオーストラリアを撃破したのを機に4-3-3システムがベースとなり、そこから中盤は守田、田中、MF遠藤航(シュツットガルト)の3人が軸となっていく。金田氏は「早々に2敗目を喫して追い込まれ、起用基準を割り切った結果が、守田、田中、遠藤らの中盤を軸とした、4-3-3システムの採用だったのだろう」と語る。

“割り切った起用基準”について「どちらかと言えば守備力重視とも捉えられる」と言及。アタッカー陣も同様の基準と見ており、MF鎌田大地(フランクフルト)、MF堂安律(PSV)、MF久保建英(マジョルカ)らがあおりを受ける形になったと分析した。

「守備力の部分が鎌田、堂安、久保に足りないところだ。ただし、足りないところを補って余りあるものを見せつければ問題ない。つまり、鎌田のサッカーセンス、堂安の精度の高いキック、久保の創造性あふれるプレーを、森保監督が是が非でも組み込みたいと考えるかどうかだ。圧倒的な長所は短所を補う。もっとも、そうした個の強みを継続的に発揮できず、さらに守備面でも劣るとなれば、今後ずっと出られない可能性もある」

 4-3-3へのシステム変更をきっかけに上昇気流に乗った森保ジャパン。今年11月にカタールで開催されるワールドカップまで約8か月の時間があるなか、メンバー起用基準とポジション争いの両方が見どころとなりそうだ。(FOOTBALL ZONE編集部)