ゲーム配信プラットフォーム・Steamを運営するValveが2022年2月16日に、修理器具などの販売を手がけるiFixitと提携して、自社製品携帯ゲーム機「Steam Deck」の交換部品を提供すると発表しました。

Steam :: Steam Deck Deposit :: Steam Deck:交換部品

https://steamcommunity.com/games/1675180/announcements/detail/4347665658888576969

Steam Deck Teardown: Everything Valve Said Not to Do! | iFixit News

https://www.ifixit.com/News/57101/steam-deck-teardown

Valveは2月16日に公式ブログを更新し、「iFixitが『Steam Deck』とVRヘッドセット『Valve Index』の交換部品の正規販売店の1つとなることを発表いたします」と述べて、iFixitを通じてSteam Deckの修理用パーツを販売することを明かしました。詳細については調整中のため、後日改めて公開する予定とのこと。

この発表と同日に、iFixitが発売前のSteam Deckを分解した動画を公開しました。Valveも2021年10月に分解動画を公開していますが、iFixitはValveが「やらないで」と言っているところまで分解しているとのこと。

Steam Deck Teardown: Everything Valve Said Not to Do! - YouTube

Steam Deckを分解するにあたり、iFixitはまずX線装置を手がけるCreative Electronに依頼して、Steam Deckの内部を撮影してみました。



分解開始。まず、プラスドライバーでSteam Deckの背面にあるネジを8本外します。



次に、本体前面と背面の隙間に青いプラスチッククリップを挿入します。



Steam Deckの背面カバーを外すことができました。接着剤や特殊なネジが使われていない点についてiFixitは「シンプルそのものです」と評しています。



ただし、Valveは一度でも分解してしまうと落下ダメージに弱くなってしまうと警告しているとのこと。



iFixitは、以前Valveが分解した試作品と今回分解した製品版のSteam Deckとの違いについて、「パーツにラベルが付けられている点はありがたいですね」と指摘しました。



続いてiFixitが注目したのは、それぞれに3つあるネジを外すだけでアナログスティックを取り外すことが可能だという点です。



アナログスティックで思い出されるのが、Nintendo SwitchのJoy-Conスティックが勝手に入力されてしまう「Joy-Conドリフト」です。同様の問題はソニーやMicrosoftのゲーム機でも発生しており、解決するには基本的にアナログスティックを交換するしかありません。そのため、アナログスティックを簡単に着脱できるのは大きなポイントです。



前述の通り、交換部品の詳細について調整中とされていますが、Valveはアナログスティックの販売も検討中とのことです。



アナログスティックには赤く目立つワイヤーがあります。これは、親指がスティックに触れているかどうかを感知する静電容量式タッチセンサーが内蔵されていることを示しています。



続いて、ストレージを固定しているネジを外してから……



SSDを保護しているシールドを外します。



すると、フルモジュラー式のM.2 2230 SSDが出てきました。これについて、iFixitは「盛大な拍手を送りたいと思います。なぜなら、このようにネジ1本で交換可能ストレージは、MacBook Proにさえ搭載されていないものだからです。Valveから送られてきたのは512GBと最大の容量を持つ構成の製品ですが、64GBの下位モデルにもM.2規格が採用されています」と評価しました。



なお、Steam DeckにはmicroSDカードスロットもあるため、ストレージの拡張だけなら分解しなくても行えます。



アナログスティックとストレージの交換までは、Valveが想定している自己修理の内容でした。続けて、iFixitはさらにケーブルやネジを外して、Valveが推奨していないところまで分解していきます。



すると、蛇行した形状のバネに支えられているハプティクス装置が現れました。これは、スピーカーのように振動してバイブレーション機能を提供するための部品とのこと。



前述のX線写真で見ると以下の部分です。



Steam Deckの排熱を担っているのは、内部から本体の天面に伸びる銅製のヒートパイプと……



クーリングファンです。



ヒートパイプとファンを外すと、CPUやメモリが搭載されたマザーボードが取り外せるようになります。なお、Steam Deckのスペックは公式サイトで、チップの型番といった詳細はiFixitのページで公開されています。



続いてバッテリーです。やろうと思えばSteam Deckのバッテリーの交換も不可能ではありませんが、iFixitですら手こずったとのことなので、一般ユーザーには難しいようです。



iFixitは「熱暴走を防ぐために事前にバッテリーを25%以下に消耗させた上で、熱を加えて接着剤を柔らかくしてから、底面からこじ開けるようにして剥がすのがベストです。接着剤を剥がすのにはイソプロピルアルコールを使うのをお勧めしますが、バッテリーを収めているマグネシウムフレームには穴が開いているので、バッテリーの下にあるディスプレイを汚してしまわないよう注意してください」とアドバイスしました。



手順の都合でディスプレイが最後になりましたが、パネルは外側から取り外せるので全部分解してからでなくてもいいとこと。やり方は、まず枠の部分を少し温めて……



吸盤で引っ張りつつベゼルの下の接着剤を剥がしていけば、比較的簡単に取り外せます。



iFixitはSteam Deckを完全に分解して分かった点について、「分解してから元通りに組み立て直すことができたということは、修理可能であることのいい兆候です。特に気に入っているのは、ほとんどの部品が平均的なゲーム機よりモジュール化されていて、基本的な修理ならプラスドライバー1本で可能な点です。一方、バッテリーが外すのが大変なのは惜しいところでした。以上から、Steam Deckの修理可能性は10点満点中7点です」とコメントしました。