レノボの16インチのノートPC「ThinkPad X1 Extreme Gen 4」は、ThinkPadファンにとっての「Macbook Pro」だ。画面サイズが大きくて、パワフルで写真や動画の編集に向く。まさにクリエイター好みのマシンと言える。

「第4世代の「ThinkPad X1 Extreme」は、クリエイター好みの性能をもつノートPCへと進化した:製品レヴュー」の写真・リンク付きの記事はこちら

確かに安くはないが、それだけの価値はある。ThinkPad X1 Extremeを選べば、払った額より多くのことを得られるだろう。

ThinkPad X1 Extremeが4代目となったことによる最大の変更点は、新しい16インチのディスプレイでアスペクト比が16:10になったことだ。旧モデルのアスペクト比は16:9なのでわずかな差に見えるが、実際のところ画面スペースが少し上下方向に広がると非常に使いやすい。ノートPCにとって完璧なアスペクト比だと言える。

また、画面解像度が4Kのモデルも用意されているので、デルの人気モデル「XPS 15」と比較しやすい。

ThinkPadらしい要素

ThinkPadのファンなら、デルと比較するまでもない。このノートPCは、ThinkPadの特徴といえる要素をすべて備えているのだ。

艶消しの黒一色の地味なデザインを乱す要素は、蓋に付けられた「X1」という赤い小さなラベルと、キーボードの「G」「H」「B」の間にある赤いトラックポイントだけである。ThinkPadのキーボードは以前のものとは違う(「ThinkPad X220」とは異なる)が、それでもかなり使いやすい。キーストロークは1.8mmで、最近のPCのキーとほぼ同等の重さを感じる。

だが、ThinkPadファン以外の人にとっては、デルがXPS 15に有機ELディスプレイを採用したことが気に入るかもしれない。有機ELディスプレイだけで画質がかなりよくなるので、レノボが搭載できなかったことは残念だ。しかし、3種類あるIPS液晶ディスプレイ(そのうちひとつは4K画質)は、有機ELに近い画質を実現している。

ポートの数は、明らかにデルよりも多い。左側にはUSB-CのThunderbolt 4ポートがふたつと、HDMI 2.1ポート(120Hzの外部モニターに対応)、ヘッドフォンジャック、AC電源ポートがある。右側にはUSB-Aポートがふたつと、フルサイズのSDカードスロットが用意されている。

すべてのノートPCはフルサイズのSDカードスロットを搭載すべきだと、どのカメラマンも言っていた。実際のところ、最後にテストしたフルサイズのSDカードスロット付きノートPCがどれだったのか思い出せないくらいなので、搭載し続けているレノボは称賛に値する(アップルもそうだが、こうした状況の原因の一端は同社にある)。

高性能グラフィックカードの威力

ディスプレイが有機ELではない点は残念だが、テストしたモデルの画面(解像度2,560×1,600)は申し分ない。色域の対応状況も素晴らしく、sRGBのカヴァー率は100%、より色域の広いDCI-P3も83.5%をカヴァーしている。後者については、デルのXPS 15の有機ELと比べて0.5%低いだけだ。また、パネルの輝度は400ニトで十分に明るい。

レノボもデルも、同じ第11世代のインテル製プロセッサーを搭載しており、「Core i7」と「Core i9」のどちらも選べる。パフォーマンスにはわずかな違いがあったが、その差は非常に小さく、日常的な使用で気付くようなものではなかった。ベンチマークの数値で比べると、デルがわずかに優れていた程度である。

しかし、今回テストしたCore i7モデルは、グラフィックカードが「GeForce RTX 3060」、RAM容量が16GB、ストレージのSSDは512GBとなっている。ThinkPad X1 Extremeが本当の意味で傑出している点は、グラフィックカードをRTX 3080にアップグレードできるところだ。これで動画編集に関しては最もパワフルなWindowsノートPCになる。巨大なデルの「XPS 17」でさえ、上限は「GeForce RTX 3060」なのだ。

そして、1,080pの高性能ウェブカメラと、キーボードの両側にあるふたつのスピーカーで、ThinkPad X1 Extremeの優れた機能は完成する。スピーカーは、これまでに試したノートPCのなかで最高水準と言えるだろう。音は明瞭で澄んでおり、低音の量は絶妙でひずみがない。

ただし、これらすべてに代償がつきまとう。バッテリー駆動時間がそれほど長くないのだ。ウェブの閲覧や文書の編集だけなら、ほぼ1日分の仕事をこなせるだろう(今回のテストでは約7.5時間)。だが、動画の編集やレンダリングを始めたとたんに、この数字はまったく意味をなさなくなる。

これはどのノートPCにも当てはまることなので、欠点だと非難しているわけではない。それでも記憶にとどめておくべきことではある。外出先で使うなら、ACアダプターを持参したほうがいい。

PHOTOGRAPH BY LENOVO

価格だけがネック

編集部のある人物(あえて匿名にする)が、こんな気の利いたことを言っていた。マイクロソフトのノートPC「Surface Laptop Studio」は、クリエイターと話をしたことがない人によって開発されたクリエイター向けマシンだ、と言うのだ。

この意見に100%同意するわけではないが、「ノートPCでデジタルアートをつくる人」と話をしたメーカーがどこなのかは、誰の目にも明らかだろう。そう、レノボである。実際にThinkPad X1 Extremeでは、プロのフォトグラファーである友人が不満に思っていたことすべてが解決されている。

ThinkPad X1 Extremeは4K画質のディスプレイで、そこそこのバッテリー駆動時間を備えた。それに動画を観るだけでなく、編集やレンダリングもできる性能をもっている。しかもグラフィックカードに、NVIDIAのGeForce RTX 3080を選べる。フルサイズのSDカードスロットや、外部ディスプレイに接続できるHDMI 2.1ポートもだ。

このノートPCで個人的に最も不満に思うことは、レノボのすべてのノートPCに共通する難点でもある。とてつもなく定価が高いことだ。

上位モデルの小売価格は米国で4,500ドル以上(日本では「プレミアム」が直販価格で52万1,400円)もする。だが、レノボは常に特売と思われる価格(約2,600ドル、日本では「プレミアム」が約36万6,608円)で販売している。この価格でもノートPCとしてはかなり高額だが、Windowsで動画編集に十分な性能を求めているなら、ThinkPad X1 Extremeはいい選択だろう。

◎「WIRED」な点
16インチのノートPCにハイエンドなグラフィックカードを搭載。使いやすいキーボード。ThinkPadのトラックポイントとトラックパッドも健在。反射防止が施された非常に見やすいディスプレイ。最上位構成では動画編集に十分な性能を発揮する。入出力ポートが豊富。フルサイズのSDカードスロットを搭載。

△「TIRED」な点
価格が高いこと。バッテリーのもちはそこそこ。有機ELディスプレイを選べない。

※『WIRED』によるPCの関連記事はこちら。ガジェットのレヴュー記事はこちら。