史上初の「国際宇宙ステーションで栽培された唐辛子」を使ったタコスを宇宙飛行士が食べる
アメリカ航空宇宙局(NASA)は国際宇宙ステーション(ISS)で唐辛子を栽培するという研究を進めており、史上初の「ISSで栽培された唐辛子を使ったタコス」を宇宙飛行士が実際に食べたことが明らかになっています。
Plant Habitat-04 | NASA
https://www.nasa.gov/content/plant-habitat-04
Astronaut makes zero-g tacos with 1st chile peppers grown in space. They look delicious. | Space
Astronauts eat first-ever chile peppers grown in space
https://thetakeout.com/nasa-hatch-chile-peppers-space-tacos-1847974321
2021年10月29日、ISSで行われている研究や科学に関する情報を発信する公式Twitterアカウントの@ISS_Researchが、「本日、(宇宙飛行士の)マーク・T・ヴァンデ・ヘイが、これまで行われてきたISSでの植物実験の中でも特に困難な実験のひとつである『Plant Habitat-04』の一環として、ISSで初めて唐辛子を収穫したことを光栄に思います」とツイートしました。
Happy pepper picking day aboard the @Space_Station!????️Today @Astro_Sabot gets the honor of harvesting the station’s first crop of chile peppers as a part of the Plant Habitat-04 study, one of the most challenging station plant experiments to date. https://t.co/f1LHkidhFn pic.twitter.com/dim8uHNZbs— ISS Research (@ISS_Research) October 29, 2021
NASAがISSで行っている「Plant Habitat-04」は、宇宙空間で唐辛子を栽培するという実験。今回収穫された唐辛子は、約4カ月にわたり宇宙空間で栽培されたもので、ISSの宇宙飛行士は収穫した唐辛子の一部を食べ、残りを分析のために地球へ送ります。唐辛子の栽培実験は発芽から収穫まで長い時間を要するため、これまでISSで行われてきた植物実験の中でも特に困難なものです。
過去20年以上にわたり、宇宙飛行士は宇宙空間での活動のために定期的な補給任務で配達された生鮮食品および加工食品を食べています。しかし、有人月面着陸ミッションである「アルテミス計画」や有人火星探査に備え、新しい食料源を確保すべく、ISSで植物を栽培するという道を模索しています。
なぜ唐辛子を栽培するのかというと、唐辛子はいくつかの重要な栄養素と特に多くのビタミンCを含んでいるため。また、微小重力下で上手く成長する可能性が高く、丈夫でもあるため宇宙での栽培に適しています。他にも、唐辛子は宇宙飛行士の食事に優れた多様性を追加し、微小重力下でも扱いやすく、調理や複雑な処理も必要しないという点もあります。加えて、唐辛子は微生物の量が少ないため安全に摂取することが可能です。
NASAは宇宙での栽培に適した唐辛子を見つけるために、世界中の20種類以上の品種をテストしています。テストに使用されたのはニューメキシコ州立大学が開発した「Hatch(ハッチ)」と呼ばれる品種群。その中でも「Numex Espanola Improved」という品種改良種が地上で行われた実験で特に良く育ったため、ISSのような管理された環境での栽培に適していると判断されました。
なお、NASAの研究者は「ニューメキシコ州のハッチバレーで栽培された唐辛子がハッチであるため、宇宙で栽培されたハッチは正確にはハッチではありません」と述べています。以下の写真はISSに搭載された植物栽培用機器・APHを使って栽培されたハッチ。
APHには、根を成長させるための焼き粘土と特別に調合された徐放性肥料を入れる「サイエンスキャリア」と呼ばれる装置が48個存在しており、ここに消毒した唐辛子の種を植えています。ちなみに、この植物実験で使用されたサイエンスキャリアは、NASAとSpaceXの貨物補給ミッションでISSに輸送されたものです。APHは大型の電子レンジほどのサイズで、植物の成長と環境を監視するための180を超えるセンサーなどが搭載されています。
NASAの宇宙飛行士であるロバート・シェーン・キンブロー氏が、APHにサイエンスキャリアを設置し、水を追加して2021年7月12日から唐辛子の栽培実験を開始。水やりや照明などの環境条件を制御しながら、地球からも実験の様子を監視しています。ISSの宇宙飛行士たちは地上の研究者と協力して、定期的に唐辛子の状態をチェックし、APH上の植物の残がいを取り除き、唐辛子の間引きも実施しています。唐辛子の栽培実験では花が確実に受粉するように、ファンを使ってそよ風を送りながら花粉の動きを促したそうです。その後、無事唐辛子が実り、10月末に果実の収穫が行われています。
そして2021年10月30日、宇宙飛行士のK・メーガン・マッカーサー氏が自身のTwitterアカウントを更新し、Plant Habitat-04で収穫した唐辛子を使ってタコスを作って食べたことを報告しています。
Friday Feasting! After the harvest, we got to taste red and green chile. Then we filled out surveys (got to have the data! ????). Finally, I made my best space tacos yet: fajita beef, rehydrated tomatoes & artichokes, and HATCH CHILE! https://t.co/pzvS5A6z5u pic.twitter.com/fJ8yLZuhZS— Megan McArthur (@Astro_Megan) October 29, 2021
なお、Plant Habitat-04では11月中に2度目の収穫が行われる予定とのことです。