東日本台風から２年 「流域治水」住民・企業・行政が一体で
RESCUE暮らしを守るです。台風１６号は１日、関東の南東海上を北上する見込みで栃木県内では風が強まる予報です。
水害が多く発生する時期に入り、それに備えるための新しい考え方「流域治水」をご存知でしょうか。
住民、企業、行政などが協働で河川の流域全体で被害を防ごうというもので、国が去年から推進しています。
栃木県内で進められている取り組みを取材しました。
県内に大きな被害をもたらした２０１５年の関東・東北豪雨や２０１９年の東日本台風。
５０年に一度のレベルと言われる記録的な豪雨災害が全国で毎年のように起きています。
被害が頻発、激甚化する中でこれまでの対策だけでは限界があるとして国が新たに打ち出したのが「流域治水」という考え方です。
「流域治水」とは水があふれることを前提として水を貯める場所の確保や危険な場所に住まないようにするなど、あらゆる対策を講じて被害を軽減しようというものです。
県は減災対策協議会でプロジェクトを策定し、県内を河川ごとに１１の流域に分け、流域ごとに取り組む対策と工程を明記しました。
プロジェクトの柱は「氾濫を防ぐ・減らす」「被害対象を減少させる」「被害の軽減、早期復旧・復興」の３つ。
堤防や貯水池の整備といったこれまでの防災対策に加え、地域単位や家庭でできる対策も盛り込まれ、２４項目の対策のうち５つの項目で取り組み主体に住民が入っています。
栃木県河川課 小野和憲課長；「あらゆる関係者が取組みについて理解、参加意識を持ってもらう」
実際に「流域治水」に取り組んでいる小山市の思川西部土地改良区です。
渡良瀬遊水地に隣接するこの地域は古くから洪水の被害に見舞われることが多く、２０１５年の関東・東北豪雨では地域を流れる与良川の排水機場の容量を超え、１週間以上も水がひかずに広い範囲で浸水被害に見舞われました。
そこで注目したのが流域治水のひとつ「田んぼダム」です。
「田んぼダム」は流域の上流部の田んぼに一時的に水を貯めて排水路や河川へゆっくりと排出することで、下流域での浸水被害を少なくするものです。
思川西部土地改良区 大塚由里子さん：「田んぼに貯たまった雨水が抑制され、少しずつ排出されます」
「田んぼダム」を行うためには「落水桝」と呼ばれる調整板をあぜに設置します。
設置には農家の協力が必要ですが排水管理などは必要ないこともあり、思川西部土地改良区では現在およそ２８０戸の農家が参加し７５６ヘクタールで実施しています。
２０１９年の東日本台風の時には「田んぼダム」が設置されていない地域に比べて被害が少なかったといい、今後、さらに効果を検証していくとしています。
思川西武土地改良区 古河利守理事長：「命も収入も守らなければいけない」
一方、市街地に降った雨を「貯める」という対策もあります。
宇都宮市鶴田町の石川久美子さんです。ガーデニングが趣味の石川さんが花の水やりに使っている水は雨水をタンクに貯めたものです。
石川久美子さん：「屋根に降った雨が雨どいを伝ってタンクに溜まる」
住宅に降った雨をタンクに貯めたり庭にしみ込ませたりすることで、河川や下水道への流出を抑えます。
宇都宮市内では学校や一般家庭に、こうしたタンクが１５００基以上設置されています。
石川久美子さん：「資源の有効活用にもつながっている」
打ち出された取組みのひとつひとつは小さいように思えますが、まとめれば大きな効果が期待されます。
しかし、これらは住民や企業などの協力が必要なものが多く、これまで治水に関わってこなかった人にいかに当事者意識を持ってもらうかが課題といえそうです。
栃木県河川課 小野和憲課長：「おおげさに聞こえるかもしれないが誰でもできること。貯める、逃げるなど参加してもらうことが大切」
