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日本の企業では簡単には社員を解雇できない。そのため、どんな人を社員として迎えるかが非常に重要だ。では、採用試験で会社のお荷物になりそうな人物をどのように見分ければいいのだろうか。この記事では3つの視点を紹介する。

■1.「無知の知」を知らない人

古代ギリシャの哲学者であるソクラテスは「無知の知」を唱えたことで知られる。無知の知とは、自分に知らないことがあることを自覚するということで、「不知の自覚」などとも呼ばれることもある。

例えば、あなたが経営者であるとき「自分に知らないことがある」ことを自覚している人物と、そのことを自覚していない人物がいるとしたら、どちらの人物を採用するべきだろうか。当然、前者であると言える。

無知の知に気付いている人は、自分が無知であることを謙虚に受け止め、さまざまなことを学習・吸収しようとする。モチベーションが高い状態で知識や技術の習得に取り組むなら早い成長につながり、採用した企業で戦力として働いてくれるようになるまで、それほど時間が掛からないはずだ。

一方、無知の知に気付いていない人はどうだろうか。自分に不足している知識や能力があると自覚していない人は、新しいことを自ら学ぼうとしないことが多い。同じ部署の先輩がノウハウなどを伝えても、謙虚に耳を傾けようとはしないかもしれない。

つまり、無知の知を知らない人は、会社のお荷物社員となってしまう可能性が高い。

● ●どうやって見分ければいい?

無知の知を自覚しているかどうかは、採用面接で「気になるニュース」や「いま学んでいること」などを聞いてみるといい。無知の知を自覚しており、なおかつモチベーションが高い人であれば、自分の知らないことを学ぼうと、何らかのアクションを起こしているはずだ。

■2.「自分事」と思わない人

「仕事は仕事」と割り切ることは非常に重要であり、プライベートな時間まで仕事に拘束される必要はない。賃金が発生していない時間なのだから、それは当たり前だ。しかし、就業時間中、与えられた職務を「自分事」と思って取り組めない人は、会社にとってやや困る。

与えられた仕事を「他人事」だと思って取り組む人は、その仕事に対する責任感が希薄になる。そして「ミスしても誰かがフォローしてくれるだろう」という気持ちが、その人の成果物の質を大きく下げる。これではその本人の生産性には期待が持てず、周りにも悪影響を与える。

ただし、自分事と思って仕事をしてもらえるかどうかは、会社の雰囲気や上司の動機付けにも大きく左右される。従業員の会社へのロイヤリティ(忠誠心)が高く、かつやりがいを感じられる仕事を与えれば、自然と自分事ととらえて仕事に臨んでもらいやすい。

つまり、自分事と思えない状態で仕事に取り組んでいるとみられる社員がいる場合、経営者は上司や組織に問題がないかも確認する必要がある。

● ●どうやって見分ければいい?

採用試験の面接で、その人が仕事を自分事と思ってこなしてくれるかどうか見極めるのは、非常に難しい。ただし、過去のエピソードから推測することはできる。例えば、大学の研究プロジェクトやサークルなどでどのような役割を担い、どうその役割を完遂したのかを聞くのが一つの方法だ。

■3.「腐ったミカン」な人

TBS系テレビドラマ「3年B組金八先生」(1979〜2011年)で武田鉄矢演じる金八先生は、「腐ったミカン」理論を展開した。同じ箱の中に腐ったミカンがあると、ほかのミカンも腐らせてしまう、という理論だ。

実は英語で、この理論と似たことわざがある。「The rotten apple injures its neighbor」、直訳すると「腐ったリンゴは隣のリンゴを腐らす」となる。会社に置き換えてみると、お荷物の社員が1人いると、隣の社員もお荷物の社員になってしまうという意味になる。

何が言いたいかというと、もちろん、その本人が腐っていないことは重要なのだが、他人も巻き込んで腐らせてしまう人は、会社にとってさらにマイナスな人物ということだ。そういう人が一派を組むと、業務の円滑な進行に大きな影響が出てくる。

● ●どうやって見分ければいい?

「腐ったミカン」のような人物を採用面接で見分けることは難しい。ただし、パフォーマンスが落ちている部署において各担当者に丁寧にヒアリングをすると、そのような人物を見つけることはできる。見つけられれば、本人と面談をしたり、別の部署に異動させたりすることで、ほかのミカン(社員)が腐ることを回避できる。

■「企業は人なり」、最初のステップでのつまずきに注意

経営の神様と言われる松下幸之助は、「企業は人なり」という名言を遺した。企業は従業員によって、良い方向にも悪い方向にも進む、という意味だ。

松下幸之助の言葉からも、誰を社員として迎えるかは非常に重要であることを再認識できる。従業員を選ぶ最初のステップでつまずかないよう、経営者もしくは人事担当者は、この記事で紹介した3つの視点をしっかり持って、採用面接などに臨んでほしい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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