連日のようにオリンピックのメダルに注目が集まっているが、それを入れるケースも、いま話題になっている。

2021年7月27日、次のようなツイートが投稿された。

投稿者の山本 啓さんは、京都を拠点に活動するインストゥルメンタルバンド「NABOWA(ナボワ)」のヴァイオリン奏者だ。「今回のオリンピックのメダルケース作ったの妹の旦那さんがいる会社なんすよ!」というコメントが添えられている。

どうやら北海道の「山上木工」という会社が制作したらしい。

「去年5000個位納品して今やっと選手の手にわたり始めてると思うと勝手に嬉しい!」とコメントは続く。

このツイートには、28000件を超える「いいね」が付けられ、今も拡散している(7月30日昼現在)。

ツイッターには、絶賛の声が寄せられている。

「初めて見ました。すごいですね」
「品があってとっても素敵です、欲しいなぁ」
「色といい木目といい素晴らしくカッコよい」
「カッコいい やっぱり日本の職人さんは凄いです」
「素敵なケースですね♪ 携わる方が心を込めて作られたケースに収まるメダル。 メダルケースも一緒に表彰式に登場させて欲しいです! ケースがあること知らなかったから...」
「かっこいい このケースだけでも購入できないかな 五輪ロゴはなくてもいいから めちゃくちゃかっこいいやん」

Jタウンネット記者は、このメダルケースを制作した山上木工(北海道網走郡津別町)に、電話取材した。

タモ材は不屈の精神、藍色は勝利を表す

山上木工は1950年創業の家具メーカー。自社ブランド家具「ISU-WORKS」の製造販売や、OEM家具製造、木材の特殊加工を行うサービスを提供している。Jタウンネット記者の取材に応じたのは、山上木工の三代目・山上裕一朗専務だった。

「メダルケースの素材は北海道産のタモ材を使用しています。
タモは硬質で弾力性に富むため、野球のバットに使用されるアオダモが知られていますが、その近縁種であるヤチダモも家具や装飾材の材料としてよく利用されています。
タモはその硬さから不屈の精神を表現しています」(山上裕一朗専務)

タモ材に塗られた藍色は、古来より用いられてきた伝統色で、勝利を表す色だという。

「藍色の奥に、タモ材の一つ一つ異なる個性豊かな杢目(もくめ)が浮かび上がり、オリンピック・パラリンピックの多様性を象徴しています」(山上裕一朗専務)

メダルケースの特徴の一つは、表面からは見えないが、隠れた部分に磁石を配置し、効果的に使用していることだという。

「円形のフタと本体が、磁石によって、繋がった輪のように開いて、そのままメダルをディスプレイすることが可能です」(山上裕一朗専務)

磁石をどこに配置すれば良いか、ふたを何度もスライドさせ、テストを繰り返し、最適な場所を探ったという。「磁石の位置は、コンマ○ミリの精度で、ギリギリの設計でした」と山上専務は語った。

長年、家具づくりで磨いてきたスキルが、ここに集約されたのかもしれない。

メダルケースのデザインは、プロダクトデザイナーの吉田真也氏(SHINYA YOSHIDA DESIGN)だ。