大手 CPG の スタートアップ 買収が加熱:「ニュータイプ」ヘルス・ウェルネスが注目
CPG(消費財)分野の大手ブランドによる、ヘルス・ウェルネス分野のスタートアップを買収する動きが加速している。その狙いは、単にビタミンやサプリメント分野のスタートアップの事業を吸収し、裾野を広げることだけではない。大手ブランドたちは結果として、消費者に対し自らを「健康志向の企業」として認知させようとしている。なお買収対象のスタートアップはさまざまだが、スナックや機能性飲料といった、伝統的なヘルス・ウェルネス商品とは異なるカテゴリーが特に注目されている。
また、2020年秋に電解質ドリンクのリキッドIV(Liquid IV)を買収したユニリーバ(Unilever)も、テキサス州を中心に展開する栄養サプリブランドのオンニット(Onnit)を、非公開金額で買収。さらに2021年に入ると、モンデリーズ(Mondelez)がケトフレンドリーなチョコレートを販売するフー(Hu)を買収している。
機能性飲料やヘルシースナックが盛況
これまで、ユニリーバやネスレなどの大手ブランドによるヘルス・ウェルネス分野のスタートアップ買収といえば、ビタミンサプリなどの定番カテゴリーや、オーガニック食品などのトレンドカテゴリーの企業が主だった。目立った例として挙げられるのが、2017年のユニリーバによる天然香辛料ブランドのサー・ケンジントン(Sir Kensington)の1億4000万ドル(約150億円)での買収だ。さらにさかのぼると、2006年にはペプシコがジュースとスムージーブランドのネイキッドジュース(Naked Juice)を買収している。
ただ一方、現在買収が盛んなのは機能性飲料やヘルシースナックなどの、より健康的かつシンプルな原料を使った健康食品ブランドだ。これは、昨今ヘルス・ウェルネスがさまざまなカテゴリーで重視されるようになった証拠だろう。
ネスレヘルスサイエンスのCEO、グレッグ・ビーハー氏は、バウンティフル買収時の声明で「ビタミンやサプリは当社にとって重要な事業で、成長を牽引してきた」と述べている。「今回の買収は、ブランドとチャネルの両面から、当社の健康および栄養のポートフォリオを補完するものだ」。
コロナ禍に伴う健康意識の向上が背景に
消費者のあいだでヘルス・ウェルネスへの関心が高まっている背景には、いうまでもなくパンデミックの影響がある。マッキンゼー(McKinsey)が2021年4月に行ったアンケートによると、7500名の回答者のうち79%が「健康に関心がある」、42%が「健康を非常に重要視している」と回答している。
消費者からの関心の高まりを受けて、さまざまなスタートアップが健康志向ブランドとしての自らを位置づけるようになっている。実際、健康に優しい成分の使用を謳うようになったカインド(Kind)など、ブランドはさまざまな形で「健康」を前面に押し出している。ほかにもヌーンやリキッドIVは、「ゲータレードなどの人気スポーツドリンクよりも糖分量が少なく、健康に良い」とアピールしている。
アドバイザー、投資家でありフォーカスブランド(Focus Brands)の元CEO、キャット・コール氏は「大企業では一般的に、新ブランドを一から育てるのは難しい」と語る。これは大規模で収益性の高い事業から予算や人材を振り分け、新規に研究開発、および商品の生産をするために、多額のコストが必要になるからだ。「実際に自らブランドを立ち上げ、その正当性を証明するのは難しいだろう」とコール氏。「それよりも魅力的なストーリーを持つ、創業者主導のブランドを買収して成長させるほうが、効率的に顧客獲得ができる」。たとえばヌーンは、多数の運動愛好家をカスタマーとして抱えており、D2Cのロイヤリティプログラムも展開している。
「消費者の健康志向はかつてないほど高まっている。みな新しいタイプの商品には敏感で、すぐに試そうとする」と話すコール氏は、次のように指摘している。「このトレンド自体はパンデミックの前からはじまっていたものだ。一方企業側に関しては、より若いブランドを買収する動きが目立っている」。典型的なのが、モンデリーズが買収した2012年設立のフーだ。一方、ゼネラルミルズ(General Mills)が2014年に買収したアニーズ・オーガニック(Annie’s Organic)は1998年創業で、買収が行われたのは同ブランドが全米展開したあとだ。さらに極端なのは2019年にネスレが買収したビタミンブランドのペルソナ(Persona)だろう。同社の設立は2017年だ(買収額は非公開)。コール氏は「こうした新参ブランドが、市場に浸透するスピードは非常にはやく、それもデータで示されている」と指摘する。
「ハイブリッド」な買収戦略も
一方ケロッグ(Kellogg)をはじめ、ハイブリッドな買収戦略を採用している消費財大手も少なくない。ケロッグは「1894」と称する同社のベンチャー部門を通じ、自社のポートフォリオには含まれないさまざまなブランドのインキュベーションを行っている。それと同時に、2018年にはプロテインバーブランドのRXBAR(アールエックスバー)を6億ドル(約650億円)で買収した。
「コングロマリットによるスタートアップの買収が増えているのは、若く成長の速い企業に対し、自社の研究開発チームの技術力では追いつけないことが明らかになりつつあるため」。こう指摘するのは、ウォータードロップ(waterdrop)の共同創業者でありCEOのマーティン・マレー氏だ。同社は欧州のブランドで、クロスグリやエルダーフラワーなどの成分を含む水溶性タブレットを販売している。「こうした買収は、大企業による長期的な投資であり、健康分野への関心の高さを表している」。
コール氏は「現時点では、大企業による小ブランドの買収が続いているが、これからはバランスのとれたハイブリッドなやり方が求められるようになるのではないか」と指摘し、次のように述べている。「スタートアップの創業者も、統合が進んでいくなかで、自社ブランドが市場のなかでどの程度のポテンシャルを秘めているかを意識していく必要があるだろう」。
[原文:CPG giants are rushing to acquire new types of health and wellness startups]
GABRIELA BARKHO(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)
