額縁に飾られた懲役太郎さんと「懲役太郎チャンネル」を運営する俺太郎さん

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カフェの激戦地、愛知県名古屋市にオープンしたあるカフェがSNS上を中心に話題となっている。その名も「任侠(にんきょう)カフェ」だ。

内装はドラマで見るような「危険な組」の事務所のようで、黒い椅子や机が並び、壁には「任侠道」と揮毫(きごう)した半紙が飾られている。来店すると、「若い衆」(キャスト)が客を「組員」として世話を焼く。まさに「任侠」の世界感を再現した独特なカフェである。

「事務所」の隅には、囚人服に坊主頭の強面(こわもて)な男性のイラストが額縁に飾られている。彼こそが、任侠カフェをプロデュースした懲役太郎さんだ。

J-CASTニュースは、任侠カフェの開店経緯や見どころを取材した。

カタギの人たちの想像する組事務所は何か?という観点から考えた

懲役太郎さんは2018年7月に「バーチャルユーチューバー」としてデビューした動画配信者だ。

出所が近づいたため篤志面接委員(社会復帰の手助けをするボランティア)から許可をもらい、職業訓練との一環で配信している――との設定で、ユーチューブチャンネル「懲役太郎チャンネル」で活動している。

チャンネルを運営する俺太郎さんは取材に対し、「ユーチューブチャンネルからのファンの交流の場があれば...と思いついたのが任侠カフェです」と話す。

そこで2020年2月から3月の間、クラウドファンディングで開店資金を募り、838人から約1000万円を集めた。新型コロナウイルス感染症が拡大した影響で延期したものの、「支援していただいたファンの方々の気持ちを裏切ってはいけない」という思いから21年5月10日、ようやくオープンできたという。

任侠カフェのこだわりについて、俺太郎さんはこう話す。

「まずは、あくまでもファンタジーであることを念頭に置きました。任侠カフェは実際の組事務所に寄せるよりも、カタギの人たちの想像する組事務所は何か?という観点から考えています。こだわりとしましては、実際の事務所ではローテーブルが多いのですが、飲食がしにくいし、机が高いとイメージが損なう。それを解決する為に机の足を3.5センチ切断してバランスを調整するなど、細部にこだわって空間を演出しています」

ドリンクとスイーツはセットで「893円」

カフェのメニューも、意匠を凝らしたものを提供している。俺太郎さんによれば「鉄管ビール」が想定以上に人気だという。

「冗談のようですが、任侠カフェでは鉄管ビールという名前でただの水道水を販売しています。これは、刑務所では囚人たちが水をビールと思って飲むという風習があるということから作られたものですが、そういったエンタメという要素も必要と考えメニューを考案しました。実際、かなり売れていてびっくりしている事でもあります...」

ドリンク類は500円から提供しているが、鉄管ビールは700円(税込)と強きの価格設定をしている。

このほか、売上が受刑者の更生や社会復帰支援に役立てられる「マザーハウスのマリアコーヒー」や、プロのパティシエが作る本格的なスイーツも取り扱っている。ちなみに、ドリンクとスイーツはセットで頼むと「893円」だ。

また、任侠カフェには更衣室も用意されており、見た目から「任侠」の世界に浸ることも可能だ。

「おすすめの服装は、やはり任侠系の服やアウトロー系の衣装です。もちろん、他のコスプレなども似合うかと思います。任侠カフェには更衣室がありますので、気軽に来てくださると嬉しいです」

衣装の貸し出しも有料で行っている。

「必要な心構えは特にはありません...!」

SNS上では5月中旬ごろから、こうしたユニークなコンセプトに注目が集まっている。ツイッターには「有り金全部持って行かれる雰囲気なのに健全」「とても楽しい!!!」といった書き込みが寄せられた。

俺太郎さんは反響について「純粋に嬉しい」という。しかし現在は緊急事態宣言下であるために「むずがゆい思いもあります」と複雑な心境を吐露しつつ、「多くの方に来ていただきたいです」と話す。

ちなみに来店するのに特別な心構えがいるか尋ねたところ、「必要な心構えは特にはありません...!スタッフは皆、優しい人たちが多いので安心してきてください。怖くないですよ!」と強調した。今後、要望の多かった貸し切り営業も可能にしていきたいと意気込んでいる。

「任侠カフェは若い衆であるキャストが、組員であるお客様の世話をするという世界観で接客をしています。主役はお客様ですので、是非、あなたがこの空間でしたいことを実現してみるという楽しみ方をおすすめいたします!」

(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)