老若男女が楽しめる『映画 えんとつ町のプペル』がクロージングフィルムに。
 - (C) 西野亮廣/「映画えんとつ町のプペル」製作委員会

写真拡大

 オランダで6月2日〜6日に開催される第50回ロッテルダム国際映画祭のラインナップが18日に発表され、クロージングフィルムにお笑いコンビ・キングコングの西野亮廣製作総指揮・原作・脚本の『映画 えんとつ町のプペル』が選ばれた。また映画際の50回の歴史を代表する作品として、深作欣二監督『バトル・ロワイアル』(2000)がジム・ジャームッシュ監督『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991)などと共に上映される。

 同映画祭は例年1月下旬頃に行われているが、今年はコロナ禍の影響で2回に分けて実施。2月1日〜7日はコンペティション部門を中心にオンラインで。50回の記念大会は改めて6月にリアル開催で祝う計画だった。残念ながらコロナが収束に向かっていない現在、オンラインとのハイブリット型になりそうだが、節目の年を、映画祭を支えてくれた市民と共に祝いたいという思いは変わらず。

 そこで『鉄コン筋クリート』(2006)や『海獣の子供』(2019)で世界が注目するアニメ制作会社STUDIO4℃の最新作であり、老若男女が楽しめる『映画 えんとつ町のプペル』に白羽の矢が立ったという。

 映画祭ディレクターのヴァーニャ・カルジャルシックは「西野亮廣の絵本を原作に、廣田裕介監督が見事に映画化した本作は、想像力に富み、心を打つストーリーテリングの最高のお手本と言えるでしょう。目を見張るほど美しくカラフルなアニメーションを通して、観客は多彩で熱狂的な哲学的の旅へと導かれます。魅力的なキャラクターたちが織りなす希望に満ちた物語は、あらゆる世代の観客を楽しませてくれることでしょう」と選出した理由を語った。

 同映画祭は実験映画やピンク映画など、多彩なジャンルから先鋭的で独自の映像表現に挑んだ作品を上映してきたが、今回はさらに映画が歩んできた歴史をも網羅したセレクションとなっている。それがシネマ・リゲインド部門で、日本からのセレクションもバラエティーに富む。アニメ黎明期を構築した政岡憲三監督の実写映画『海の宮殿』(1927)から、コロナ禍にリモートで制作された岩井俊二監督『8日で死んだ怪獣の12日の物語 −劇場版−』(2020)まで。

 さらに映像作家・佐々木友輔が、今や県内に映画館が3館しかない鳥取県で映画文化をさまざまな形で根付かせてきた人たちを追った3部作のドキュメンタリー映画『映画愛の現在 第I部/壁の向こうで』(2020)まであり、映画界の現実とこれからをも考えさせられるラインナップとなっており、プログラミングに定評のある同映画祭らしい充実した内容となっている。

 また過去の上映作の中から映画祭を代表する4作をクラシックスとして特集する。上映作は『ピアノ・レッスン』(1993)でカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したジェーン・カンピオン監督の長編デビュー作『スウィーティー』(1989)、ジム・ジャームッシュ監督『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991)、ナンニ・モレッティ監督『親愛なる日記』(1993)、深作欣二監督『バトル・ロワイアル』の4作。

 同映画祭では2000年に深作監督特集を組んでおり、深作監督も現地に赴いている。なかなか日本のプログラムピクチャーを撮っていた監督は海外で評価されにくいが、三池崇史監督や北野武監督以前に、彼らを上回るぶっ飛んだバイオレンス映画を作っていた鬼才監督の存在を世界に知らしめるきっかけとなった。

 深作監督以外にも、河瀬直美監督、ホン・サンス監督、クリストファー・ノーラン監督など同映画祭で発掘されたのをきっかけに世界に羽ばたいた監督は多い。オンライン版で改めて同映画祭に祝福を贈るとともに、コロナ禍で危機に立たされている国際映画祭の意義を改めて考えたい。(取材・文:中山治美)

【ハーバー部門】
池田暁監督『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』(2020)
廣田裕介監督『映画 えんとつ町のプペル』(2020)
原一男監督『水俣曼荼羅』(2020)

【シネマ・リゲインド部門】
政岡憲三監督『海の宮殿』(1927)
山中貞雄監督『丹下左膳餘話 百萬兩の壺[4Kデジタル復元・最長版]』(1935)
田名網敬一監督『黒猫』(1972)
岩井俊二監督『8日で死んだ怪獣の12日の物語 −劇場版−』(2020)
佐藤周監督『橘アヤコは見られたい』(2020)
佐々木友輔監督『映画愛の現在 第I部/壁の向こうで』(2020)

【クラシックス】
深作欣二監督『バトル・ロワイアル』(2000)

第50回ロッテルダム国際映画祭は6月2日〜6日に開催