「知恵の輪」酔っていれば解ける説を証明せよ ガッツリ飲んで挑んだ若者の物語
【J子が行く】J-CASTトレンド記者「J子」とその同僚たちが、体を張って「やってみた、食べてみた、行ってみた」をリポートします。
僕、「J太」(じぇいた)は、自力で知恵の輪を解けたことがほとんどない。たまにおもちゃ屋に体験コーナーがあるから挑戦するけど、5分もすると諦めて立ち去ってしまうのだ。
そんな敗北の記憶を消して過ごしていたある日のこと、パズルブランド「はずる」からツイッターで、知恵の輪への挑戦依頼が届いた。これは、見逃すわけにはいかない。
同じ難易度でもパズルとの相性がある
これが、はずるから届いた「要望書」だ。
常識の上をいく発想に驚いたが、お酒を飲んで何かをするのは楽しそう。何より、知恵の輪へのリベンジを果たす絶好の機会だ。早速担当者と連絡をとる。
J太「『酔っていると〜』の方、やらせてください!」担当者「ありがとうございます!思いつきで話したことが、まさか実現するとは思いませんでした」
も、もしかして相手の術中にはまった? 実は「24時間知恵の輪生活」という恐ろしい提案もサラッとあったのだ。「え、24時間生活はやらないんですか?」なんて言われなくてよかったと胸をなで下ろすJ太。
「はずる」は、「外せますか?戻せますか?」をキャッチフレーズとした知恵の輪のようなパズルで、玩具メーカーの「ハナヤマ」が販売している。解答図は同梱されないという仕様と、立体的で複雑な構造をしていることが特徴だ。
J太「同じ難易度設定の知恵の輪を、酔う前・酔った後で1個ずつ解いて、クリアタイムを比べてみます」担当者「『はずる』の難易度は6段階ありますが、実は同じ難易度でもはずるとの相性があるんですよ」J太「というと?」担当者「『これはすぐに解けたのに、こっちは一生解けない』なんていうこともあります。タイムを比較するなら、何個か解いた方がいいでしょう」
アドバイスに従って、クリアタイムを計るにあたり、同じ難易度のパズルを「しらふ」で2つ解き、次に酔った状態でまた同レベルのパズル2つに挑戦することにした。
それにしても、一生解けないって...ねぇ。同じ難易度でそんなことあり得るのかな。
簡単すぎて(ドヤ顔)
まずはちょうどいいレベルを探すため、難易度「3」の「キャストドルチェ」に挑戦。はずるの難しさはいかに、と緊張しながらチャレンジする。
計30回ほどひねっていると、約5分であっさりと外せてしまった。戻すのも1分程度。知恵の輪を一瞬で(当人比)解いてしまった。
J太「ここまで簡単だと、企画倒れになるなあ」
ひとりドヤ顔を決めつつ、先方担当者の「普段ではなかなか解けない難易度でも、酔えば解けるのではないかを検証してほしいんです」という心の叫びを思い出した。そこで1つ上の難易度「4」を選んだ。
その時、J太は涙を浮かべた
1つめは「キャストレフ」。2枚の迷路が重なったパズルだ。両プレートの溝の中には、互いの突起が食い込む。一際穴の大きい「ゴール」まで安直に迷路を進めようとすると、もう片方の突起が溝の壁面に引っかかる。
開始1時間後。
J太「ここまで難しいと、企画倒れになるなあ」
ひとり目に涙を浮かべつつ、編集長が「原稿書けないとは何事ダァーッ」と烈火のごとく怒る姿を思い描いた。レベルが少し上がるだけで、ここまでハードになるとは。迷路が進まない。
気分を変えるため、テレビでプロ野球中継をつけた試合を流し見しながらいじってみる。引っかかっているところで片方の迷路の角度を変えてみると、「おっ?」。手元の感覚に変化が起きた。
そのまま、片方の突起がゴール。これはいけるかもしれないぞ!勢いがついたように続け、ようやく両方の突起が同時にするっと外れてくれた。ここまで1時間29分11秒。
ただ細かい手順を忘れ、戻すのに1時間51分13秒も要した。合計で3時間20分24秒。野球の試合は、とっくに終わっている時間だ。
「外せますか?」に並んで「戻せますか?」も「はずる」のテーマだが、戻す方にもこんなに苦労させられるとは。
次は、流線形の「キャストバロック」。ボディーをひねっていくと、互いのくっつき方が変わっていく。「こうか。いや、こっちか」。繰り返して行くと、1時間24分30秒で外れた。戻す時には10分11秒で、合計タイムは1時間24分41秒。野球の試合なら、7回の攻防あたりか。「キャストレフ」よりは簡単だった。
しらふで2つ解いた。よし、アルコールタイムだ。
アルコール度数9%、500ミリリットルのチューハイ缶を、ゴクゴク飲む。う、うまい!謎解きの疲れと、同じような作業で刺激を求めていた脳に、数日ぶりのアルコール。キンキンに冷えた炭酸が喉元を通ったかと思えば、胃袋がカーッと熱くなり、世界が少し楽しくなる。
しかし、「まだ酔いが足りないかも...」。「予備燃料」として用意していた350ミリリットル缶も飲んだ。あくまでも、きちんと酔った状態で検証するためだ。目的は忘れていない。これで準備はバッチリだ。
突然のインスピレーション
今ならなんでもできる気がしてきた。知恵の輪でも鉄砲でもかかってきなさい!まず挑むは「キャストケーキ」。4分の1をくり抜かれた円柱形の箱の中に、同じ形のピースが3枚入っている。
J太「ふふーん♪酔ったからには今までと違う方法でやってみようかな〜」
さっきまでのように手先でがむしゃらにいじるのではなく、まずは観察をしよう。物事で一番大事なのは観察だってママが昔よく言っていたし。
ふむふむ、外装同様、内部のピースも、4分の1がくり抜かれているな。くりぬき部分を同じ方向に向ければ外れるのかと考え、ガチャリと試すが、そんな簡単じゃないようだ。
「素直じゃないんだから〜」なんてパズルに話しかけるが、答えてはくれない。ただ、なんだか知恵の輪と向き合うのが楽しいし、リラックスしてチャレンジできている。これは、ようやく知恵の輪に慣れてきたから?それともただ酔ってるだけ?。ふと、頭に電流が走り、
J太「あ!これ、この向きでピースの組み合わせを何パターンか試せば解けるんじゃないか」
とひらめいた。「というかこれ思い付いてもネタバレになるから解法書けないじゃん...」と今更気付いたが、試してみよう。カチャカチャとくり抜き部の向きを変えていく。そしてある組み合わせで、
J太「ピースが緩くなった!?」
内部の手応えが明らかに違う。さっきまではきつめに収まっていたが、グラグラとしている。そしてピースを引っ張ると、ミッションコンプリート。仲良しなピースたちはJ太によってバラバラにされました。
タイムはなんと20分53秒。手順は覚えていたので、戻すのも5分25秒で済んだ。合計は26分18秒だ。ひらめいた通りに解けて、酔っぱらいのテンションは最高潮。き、気持ちいい〜!。アルコールのパワーで、J太の隠れた才能が解き放たれたのかも?
知恵の輪の神、再降臨あるか?
「酔っていると逆に解ける」なんてうまい話、あるわけないんじゃ?いいえ、あるんです。不思議とクリアタイムは大幅に早まった。これはもう、次も早く終わらせてシメのラーメンを食べよう。
最後のパズルは「キャストUFO」。中には4枚のピースが球体のように収まっている。これも内部のピースを引っこ抜くタイプかな。解き甲斐がありそう!
そう思っていると、フワフワとした感じがさっきよりも強いことに気付く。チューハイを飲み切って30分ほど経ったからか、酔い具合はピークに達したのかもしれない。
「さっきのようなインスピレーションよ、もう一度湧いてこい!」と念じながら、また観察してみる。...何も降りてこないし解き方は検討もつかない。
UFOに入った球体状のピースは、指で回せる。とりあえず回し続ける。クルクルクルクル...。
J太「ふぁーあ、眠くなってきたなあ」
正直言って、飽きてきてしまった。すでに1時間ぐらい経過している気がする。ベッドに倒れこみ、UFOをいじり続ける。ちょっと目を閉じてみよう。いや、寝ないよ。目を閉じているだけ。ちょっと休んでいるだけ。
気が付くと、J太はベッドの上で眠っていた。目覚めると同時に「キャストUFOはどこ!?」とベッドを探ると、そこには初期状態のままのパズルがあった。
そしてしらふで再挑戦するが、2時間ほどかけても初期から全く次の段階へ進まない。これはもうだめだと、僕はさじを投げた。クリアタイムは測定不能だ。
「一生解けないなんてこともあります」
そんな担当者の声が、脳内でリフレインする。これは一生解けないパズルかも。また知恵の輪と僕の敗北史に新たなページが増えた。
ということで、「知恵の輪苦手な人 酔っていると逆に知恵の輪が解けるようになる説」の結論としては「解けるようになることもある」だ。この記事を書いている間にもキャストUFOをいじっていますが、まだ外れる気配はありません...。