プロとしての意識が低いドライバーも残念ながら存在……

 時おり、タクシーの関係する大きな交通事故のニュースが報じられるが、北海道警察の交通事故分析資料によると、発生件数と負傷者数自体は減少傾向で推移しているとのこと。そして、タクシー関連で報じられる事故の多くは高齢乗務員が運転していることも多いとされているが、これも北海道警察の資料によると、第一当事者(交通事故における過失が重いひと)の年齢別発生状況では、高齢者(65歳以上)によるものがもっとも多くなっている。

 ただ、国土交通省による“タクシー事業の現状について”では、平成28年3月末、平成29年3月末、平成30年9月末での比較では、60歳以上の乗務員が減少傾向で推移しているだけでなく、直近では全体の半数を下まわっていると分析している。

 高齢者の事故が、より規模の大きなもので目立ってしまうのは、健康起因によるものが多いことがある。乗務中の発作などにより、意識不明になってしまい事故を起こしてしまうというものである。日ごろから健康診断を行ったり、出庫点呼時にはもちろん健康状態は確認しているものの、急な発作はなかなか防げないのが現状ともいえよう。

 事故を起こしやすいひとを“事故惹起者”などとも呼ぶが、この事故惹起者は高齢乗務員ばかりではなく、さまざまな年齢層で存在する。特徴のひとつとしては、乗務員経験が浅いなかで、一生懸命稼ごうとするあまり事故を起こしてしまうケースが立つ。また事故のほかにも、このような乗務員は利用客からのクレームも目立つケースがある。

二種免許取得時の「実地試験免除」も事故の原因

 いまどきは、タクシー乗務に必要な二種免許は実地試験免除なので、一種免許と同じく教習所へ通えば短期間で取得することができる。二種免許の教習を請け負う教習所はタクシー事業者がオーナーだったりすることもあり、短期間で二種免許を取得させ乗務してもらおうとするので、二種と一種の違いなどが十分理解できないまま現場デビューしてしまうひとも多い。

 二種と一種の違いは、危険予測範囲を一種より広く持つこと。そして、乗客を乗せていることを意識して安全運転を心がけることなどがある。ただ、基本的な運転方法は一種とは変わらないので、違いがわかないまま現場デビューしてしまうと、事故だけでなく、「急ブレーキばかり」などと、乗客からのクレームも多くなったりするのである。

 タクシー乗務員のほとんどは異業種からの転職組がほとんどとなる。生活のためと割り込んで乗務員となったものの、前職のころのノリをいつまでも引っ張っているひとは、稼ぎがいまひとつなのに加え、事故やクレームが目立ってしまうという話もある。

 前職のころの思い出をスッパリと切り捨て、いかにタクシー乗務員としての技量を高めることに集中できるかが、事故やクレームを減らしていくともいわれている。

 ちなみに、トヨタJPNタクシーが登場して間もないころ、トヨタセーフティセンスを過信する乗務員による、追突事故が多発したという話を聞いたことがある。「自動ブレーキがついているのに止まらなかった」ということらしい。デバイスがついているだけでは、事故防止効果は薄くなってしまう。どのようなデバイスなのかを説明し、どのように使いこなしていくかをしっかり認識してもらわないと“宝の持ち腐れ”になってしまうのである。

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