俳優・大泉洋さんを主人公として"当て書き"した、塩田武士さん原作の小説『騙し絵の牙』が映画化され、3月26日に全国公開となりました。4月12日放送の『つボイノリオの聞けば聞くほど』では、塩田さんと出身地と出身大学が同じ小高直子アナウンサーが、この映画の魅力について熱く語りました。

流れ者編集長・大泉洋

舞台は、出版不況でがけっぷちに立たされている、創業100年を超える老舗の大手出版社・薫風社。

そのカリスマ性で会社を支えてきた薫風者創業一族の大御所社長が、犬の散歩中に倒れて急逝したところから映画が始まります。

次期社長を巡る権力争いと共に、不採算部門を整理することになり、いくつかの雑誌が廃刊の危機に見舞われました。

その中のひとつが『月刊トリニティ』。

この編集部に新たに「流れ者編集長」としてやってきたのが、大泉洋さん演じる速水輝です。
 

マンネリ雑誌をブレイクに導く

『トリニティ』は、7年前に鳴り物入りで創刊したカルチャー雑誌。

しかし、グルメ・旅行・映画のローテーションで新鮮味のないマンネリ雑誌になり下がっていました。

速水編集長はあの手この手の策略を仕掛け『トリニティ』を一新、ブレイクさせることで廃刊の危機を脱しようとはかります。

『トリニティ』編集部と対立するのは、会社の看板雑誌である純文学雑誌『小説薫風』。

会社の後釜を狙う役員たちの代理戦争も絡み、「さあ何が起こるか」というところがざっくりとした内容です。
 

出版不況を乗り切るアイデア

小高いわく、この映画のおもしろいポイントのひとつは「出版社や書店が、出版不況をどういう風に乗り切れば良いのか」という部分。

大泉さん演じる速水の他、登場人物それぞれが出版不況を乗り切るために、いろいろな考え方やアプローチをするというところです。

実家が街の本屋さんで小さい頃から本好きな熱血新人編集者・高野 恵(松岡茉優さん)

社内闘争から社長になった男・東松龍司(佐藤浩市さん)

東松のライバルの常務・宮藤和生(佐野四郎さん)

看板雑誌『小説薫風』のできる女編集長・江波百合子(木村佳乃さん)

これらの登場人物たちが、出版不況を乗り切るさまざまなアイデアを出していきます。

ラストシーンでは、「この出版不況はこうやって乗り切ればいい!」という答えがひとつだけ出ます。

「それについていろいろと考えるおもしろさがある」と小高。
 

登場人物のイメージがどんどん変わる

もうひとつ小高が注目したのは、タイトル『騙し絵の牙』。

騙し絵とは、目の錯覚などを利用して、見る人に不思議な感覚を与える絵のこと。

最初に見たものが、ひっくりかえると全く別のものになるというところがポイントです。

小高いわく「この映画でも、登場人物のありとあらゆる人が、最初のイメージから途中でがらっがらっがらっと全然違う印象の人になっていくおもしろさがある」んだそう。

歴史小説の大御所作家・二階堂大作(國村隼さん)

無名の天才新人であり美青年の若者作家・矢代聖(宮沢氷魚さん)

雑誌の表紙を飾る人気ファッションモデル・城島咲(池田エライザ)

ポスターの地味なところに載っているクセモノ俳優など、さまざまなキャラクターのイメージや役割が、騙し絵のようにどんどん変わってくるといいます。

「だから『騙し絵の牙』なのかな。意外な展開がとってもおもしろいです!」と小高。
 

「牙」の二重三重の意味

小高によると、「明るいキャラクターとして知られる大泉洋さんを、“あてがき”したという売り文句も騙し絵的」。

かなり驚きの展開が待ち受けているといいます。

さらに「牙」という言葉も、生き馬の目を抜く社内闘争の「牙」だけでなく、二重三重の意味合いが含まれてくるんだとか。

本好きな人にとっては、「これ絶対あの雑誌のことだ」「これ、あの本のこと言ってるな」「この作家ってあの人のイメージかな」といったパロディ探しも楽しめるそうです。

「塩田さんの作品としてはライトに、でも考えさせられる内容がたくさん詰め込まれている映画です」と、おすすめする小高でした。

『騙し絵の牙』、全国の映画館で絶賛上映中です。
(minto)
 

つボイノリオの聞けば聞くほど
2021年04月12日11時09分〜抜粋(Radikoタイムフリー)